☆f4♪LOVE アンクミの徒然日記

☆f4♪LOVE アンクミの徒然日記

新プロジェクト 後編




目の前に居る司を観て つくしも驚いていた

プロジェクトの話は会社で聞いていたが 
まさか 相手の会社が此処とは知らずにいた

「社長 どうして此処に」
「牧野 お前こそ どうして此処に居るんだ~~」

二人の顔を 代わる代わる見て 会長は「知り合いかね」

二人とも 同時に 「はい・・・社長です」
         「はい・・・うちの社員です」

「そうか・・君は道明寺グループに居るのか
  つくしちゃん そろそろ出かけようか」
さっきまでの険しい表情が一変 優しい顔の会長に

まだ つくしは司をじっと見つめていた
会長の言葉に つくしは我に返り
「えっ?あっ! ごめんなさい 今日は以前行った 和也くん達の孤児院に」

この二人 なに言ってんだよ 孤児院って 何の話してるんだ

その時 会長が 司を見て
「そうだ、君も一緒に来たまえ その目で自分が住む世界がどんなものか
見てみるといい」

戸惑っている 司に会長はそう言い つくしの手を引いて 歩き出した

訳もわからず立ちつくす司に会長は
「さあ~ 早くしたまえ 子供達が待っている」

気づけば司は 会長の車の中にいた
つくしは 会長とこれから行く所の話をしている


高層ビルが立ち並ぶ町並みを抜け 景色は緑豊かな 田園地帯へと変わっていった

車は長年風雪にさらされた 一軒の家の前に止まった
田舎の小さな学校を思わせる その建物は あちこち板を打ちつけ
修理したところの目立つ 家だった

車を降りた三人が 玄関に向かおうとしたその時 数人の子供達の声が聞こえてきた

5歳くらいの子から もう少し大きな子まで ぞろぞろとこちらに 歩いてくる
子供達は皆 手に沢山の枝を持っていた
一番小さな子さえ 両手いっぱいに枝を持っている

「わぁ~~ つくしちゃんだ!」 一人の男の子が駆け寄ってきた
その子は 少し小さめの洋服を着ていた 袖も短く ズボンも小さめだった

「こんにちは 和也くん」つくしはその子を両腕に抱きしめて
他の子供達の顔を代わる代わる見ている
どの子も皆 ほっぺたを赤くしている

「先生は中に居るの」
小さな子供の手を引き つくしは中へ
会長も子供達と手を繋ぎ 後に続いて入って行った


外見とは違い中はきちんと整頓され綺麗だった
壁には 子供達が書いたと思う絵が いくつも掛かっていた

一人の女性が タオルで手を拭きながら部屋に 入ってきた
「まぁ~~ つくしちゃんいらっしゃい それに会長さんもいらしてくださったんですか」

子供達は手に持っていた枝を隅の箱の中へと入れていた
「先生 沢山枝が拾えたよ!」
「まぁ~ほんとね 有り難う これで今年の冬も寒くないわね
さぁ~手を洗ってらっしゃい 寒かったでしょ スープを作ったから
皆で食べましょうね」

「は~~い」子供達はそれぞれ 枝を箱の中に入れ終わると 元気良く走って行った

小さなテーブルを囲み 今子供達は 暖かなスープを美味しそうに飲んでいる
その顔はどの子も皆幸せそうだった
目の前のスープと子供達を代わる代わる見ている司に
「社長 どうしたんですか?食べないんですか 美味しいですよ」

「えっ!あっ! これは何ですか?」
先ほどの女性が 「かぼちゃのスープですよ 今年はかぼちゃが沢山取れたので みんな子供達のおかげです」

司の隣にいた子が 司の袖を引っ張りながら
「僕達が作ったんだよ いっぱい取れたから 嬉しかったよ~~」

その子の笑顔は つくしが見せる笑顔に似ていた
優しく ホッとさせる何かが
キラキラ光るその瞳が 司には眩しくさえ思えた

状況をまったく把握していない司は ただ呆然と子供達を見ていた

その時 つくしが「此処の子供達は 可愛そうな子達ばかりなの
和也くんは 1歳の時この孤児院に捨てられていたのよ 他の子供達も
色んな事情で 此処に居るのよ」

今 司は部屋で元気に遊ぶ子供を見ながら つくしの話に耳を傾けていた

横に居る会長でさも さっきの険しい表情とは違い 優しい目で子供達を見ている

「道明寺くん 君に見て欲しいのは 子供達のあの笑顔だよ
君には想像も出来ないだろうね 暖かい家と 沢山の食べ物 綺麗な服
そのどれも持っている君だが  私の目には 君よりもずっとあの子達の方が 幸せに見えるのは どうしてかね」

その言葉に 司は気づかされた 自分の寂しさを
小さい頃から 家に殆ど居なかった 両親
確かに 物質的には満たされていた司だが いつも心の何処かに 寂しさが

「社長 今日 あの子達が拾ってきた枝は 冬用の蒔きにするためなんですよ 此処の経営はとても苦しくて・・暖房費に使えるお金があまりないんです だから 子供達はちゃんと判っていて 自分達からああして 毎日
近くに枝を拾いにいくんです」

「何処か 援助してくれる所はないのか」

「司くん 援助するのはとても簡単な事なんだよ 私もそれを考えた
でも つくしちゃんに教わったんだよ この日本に いったい幾つ
こんな所があるか知っているかね 全てを援助出来るわけがないし
援助なんて言えば 聞こえがいいが それはただ その人の自己満足に過ぎないとね 私はその言葉に気づかされたんだよ  
なら自分が出来る事を
沢山の人を助けられる方法は無いかとね もしもっと 石油が安く手に入れば 子供達が寒い冬を過ごす事も無くなるだろうと」


帰りの車の中でも 司はずっとさっきの子供達の事を考えていた

貧しいという事さえ知らない 自分
権力を振りかざしていた 自分

横にいる 牧野の笑顔
自分は 人に対して あんな風に 優しい笑顔を見せた事があるだろうか

今 司の心に 牧野に対する気持ちが大きく 膨らんでいった事に 気づいた
今まで ずっと 満たされなかった 自分の心を こいつは満たしてくれた

こいつの 側にいたい
いつまでも ずっと~~






© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: