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☆f4♪LOVE アンクミの徒然日記
蘇る悪夢
それぞれの想いの中 この世にただ一人の人と巡り会い
それぞれが お互いの闇の部分を照らす光となる
しかし 光のあるところには闇も又常に存在する
零とキラ お互いの闇を照らすも その光さえ届かぬ所で キラの闇は ある事をきっかけに 大きくなっていった
コンクールまで後半年と迫ったある日
練習に明け暮れているキラを 久々に零は外に連れ出していた
真夏の暑さがまだまだ続く その日
零とキラは 賑やかな繁華街に居た
あちらこちらから聞こえてくる 楽しそうな声
しっかりと繋がれたキラと零の手
時折 零が回りの様子を キラの耳元に囁く
幸せそうなカップル まるで姉妹のような二人連れの女の子
携帯から目を離そうとしない青年
小さな女の子を連れた若いお母さん
皆 それぞれのスタイルで今日一日を楽しんでいる
「キラ 騒々しすぎるかい? 静かな所の方が良かったかな」
「そんなことないわよ みんな楽しそうね 一人じゃ怖くて歩けないけど 零と一緒だから大丈夫よ」
さっき立ち寄った ショップで買った ショパンのCDを手に
キラが 「このCD 欲しかったのよ 前のは踏んづけちゃって壊しちゃったから 見事に真っ二つになっちゃって」
大事そうにCDの表面を撫ぜるキラ
「お前に 踏まれたんじゃ CDもたまったもんじゃなかったな」少し拗ねた顔で 零を見て 「それは どういう意味かしら?」
ハンデがあるとは思えないキラの笑顔 この笑顔を俺はずっと見ていたい 俺の顔を一生キラが見る事が無くても
俺は 俺の全てを賭けて キラを守り愛するだろう
そんな事を考えている時 零の携帯が鳴り出した
「誰だろう? なんだ達也か・・・達也どうしたんだよ今忙しいんだけどな・・」
人通りの多くなった路に差しかかった時 後ろの方から大声が聞えてくる 三人の若者が何か叫びながら キラ達の方に走ってくる
零もキラもその事に気付いていない
一人がキラの横を走り向け もう一人がキラと零の間を
あっという間の出来事だった キラは突き飛ばされてしまった
キラの叫び声に気付いた零 見ると路に倒れるキラの姿が
手にしていたCDは1メートルも離れた所にある
慌ててキラに駆け寄る零「キラ 大丈夫か?」
ぶっかって来た若者も足を止めていた
「あっ!悪い悪い・・」
手探りで無くしたCDを探すキラを見て若者は
「なんだ あんた目くらかよ!ならもっと端っこでも歩いてなよ
杖持ってさぁ~~あんた彼氏 子守も大変だね~~」
その言葉に零は驚き 「おい!今なんて言った もう一度言って見ろよ」
「零 止めて いいのよ大丈夫だから」キラの言葉も零の耳には入っていなかった
いきなり 若者の襟首を掴むと「彼女に謝れよ!」
先に走り去っていた連れの若者が 気付き駆け寄ってきていた
「おい!何するんだよ その手を離せよ!」
「さっさと キラに謝れ!!」
「ふん、路の真ん中でボーっとしてる方が悪いんだよ 手を離せよ」
次第に零たちを遠巻きに見つめる人垣が出来ていた
零に押さえつけられている仲間を助けようと二人が 殴りかかってきた 不意をつかれ右頬にパンチを受けてしまった
キラと知り合う前は ちょくちょく喧嘩もしていたが
自分から相手を殴ったことは一度も無い零だった
その一発が零の心のタガを外してしまった
その目には以前の冷たい視線が宿っていた
鈍い音が 辺りに響く ドスン ドスン まるでサンドバックにパンチを打ち込む時のようなその音
その音に混じって聞こえる 相手の悲鳴に似た声
「辞めてくれよ~解ったから もう辞めてくれ」
零にとって彼らなど子供みたいなものだった
一人は零の左側でのびているしもう一人も前方に倒れ込んでいる
後の一人は今零が馬乗りになって押さえつけている
「さあ~彼女にちゃんと謝れよ 二度とあんな口聞きませんと」
その様子を耳にしているキラ 壁際にうずくまりガタガタと震えている 『もう 止めて お願いもうぶたないで ごめんなさいだから だからぶたないで』その言葉は殆ど聞き取れないほどの小さな声だった だから回りの人も キラが何を言っているのか誰も聞いていなかった
バシッ!! ドスン!! 零の怒りに満ちた大声
その全てが キラをあの忌まわしい過去へと
突然響きわたるキラの声「いや~~!!もう止めて~!!!」
あまりにも突然の叫び声 振上げていた零の手さえ止まる声
見るとキラが 両手で自分の顔を覆うようにうずくまっている
暫くは 零にも何が起きたのか解らずにいたが
男から離れると 慌ててキラの元に走り寄る
キラの前に膝まづくとその両肩に触れる「キラ・・どうし・・」
零の手がキラに触れたとたん又もキラの悲鳴が辺りに響き渡る
「いやぁ~~!!こないで もうぶたないで ごめんなさい・・ごめんなさい だから・・」
なにをキラはこんなにも怯えてるんだろう?
身体の震えはいっそう酷くなっていた
零はもう一度キラに触れ名を呼んだ「キラ・・」
まるで得体のしれない物がいるようにキラは 零を拒絶し身体を激しく震わせている
顔を覆っていた手が力無く下ろされると その身体が静かに崩れるように道路に横たわってしまった
「キラ!!キラ!!」
深い暗闇 漆黒の闇 その目はほんのわずかな光を求めている
ボンヤリと何かが見える
はっきりと見ようと 目をゴシゴシとこする
その姿が僅かに見え始めると キラは恐怖に襲われた
だんだんとその人物は 自分の方に近づいてくる
逃げようとするが 足がまるで鉛のように重く動かない
どんどん近づいて来るその人影
『違う・・違う・・あの人じゃない あの人はここには居ない筈』目の前に現れたその人物 キラを闇の中へと連れ去った人
この10年何度キラの記憶の中に現れ 苦しめた人物
「キラ・・」
その声を聞いたキラは 恐怖に身を震わせた
自分の名を呼ぶその声 それは紛れも無く 零の声だった
あの時の声は 彼と同じだった 憎しみを含むその声
相手の身体に打ちつける 鈍い拳の音
懇願する声を打ち消す 鋭い声
なぜ?・・零・・貴方もあの人と同じなの
あの人と同じ残酷さを持っていると言うの
冷たい声が 又キラの名を呼ぶ 固く握られた拳が振り上げられたその時 キラは現実の世界へと引き戻された
額に浮かぶ汗 心臓の鼓動が激しくキラの耳に響く
「キラ・・大丈夫??」
母の声 初めて自分が自宅に居る事に気付く
『そうか・・気を失ってしまったんだ』
「キラ・良かった心配したのよ 何があったの??樫野君って方がお前を運んできた時は本当にビックリしたわよ」
零・・・何故だろう??今は彼が怖い
「キラ・・樫野君 お前が気が付くのをずっと待っているのよ 知らせてくるわね」立ち上がりかけた母に「お母さん 今は会いたくないの 帰って貰ってくれる・・」
会えない・・会えばさっきの事が現実になりそうで
「でも・・キラ」
「お願い 今は会いたくない 会いたくないのよ」
娘が 何を怖がっているのか 母には解らなかった
最近のキラは 彼と知り合い明るくなっていた
いったい 二人に何があったのだろう?
部屋を出 彼の所へ行き キラが会いたくないことを告げる
その言葉は零を 驚かせた 何故?会いたくないと?
「何故です 何故会いたくないと キラに会わせて下さい」
キラに会って 直接聞きたかった
「樫野君 今日はこのまま帰って下さる キラがもう少し落ち着くまで」
零は言い知れぬ不安に襲われていた
その不安が 二人のこの先を暗示する事になろうとはまだ気付くはずもなかった
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