☆f4♪LOVE アンクミの徒然日記

☆f4♪LOVE アンクミの徒然日記

深き愛






眼を閉じるとあの時の興奮が蘇るようだ 満員の聴衆を魅了したキラの演奏
プロとしての一歩を歩みだしたキラ

わずかな前進だが 心の支えだったピアノが今キラの未来に輝かしい光を与えてくれている


達也や晴美達とお祝いをする計画を立てた零
キラの傍らでピアノを聞きながら 初めてキラにあった日の事を考えていた
あの頃の自分と今の自分 キラにに出会わなかったら今の自分はあっただろうか
いつまでも 暗闇の中を彷徨い続けていただろう

母の悲しい姿をいつまでも忘れられずに 父や母の気持ちさえ解からずに

そんな父が自宅にキラを招いてきた
高級車がキラの自宅に横づけされると中から零の父の秘書が

晴美に見立ててもらった洋服で精いっぱいお洒落したキラ


零の自宅に着くと数名の人が出迎えてくれた
「父さんは?」
「もうお帰りになる頃だと思います その前にお部屋に行かれますか?」
「あぁ~~そうするよ」

長い廊下を進むと ようやく零が「キラ 居間に居るんだけど、俺の部屋に行くかい」

零の声が反響して聞こえる いったいどれだけ広いのだろう
「何度来ても 落ち着かないな~~」ボソボソと呟く

零が時折見せる寂しそうな感情は この大きな家のせいなのかしら
お母さんを小さい時に亡くして 一人で過ごすには大きすぎる家だったのだろう

「零  貴方の部屋ってどんな感じなの?」
この家を出た時から何一つ変わっていない でももともと落ち着けるような場所じゃなかった

零の部屋から随分離れた所に母の部屋がある
それでもドアを開けていると 母のピアノが聞こえてくるのだ

部屋の中にキラを導くと 「インテリアには興味ないから 殺風景だぞ ベッドとソファーに机があるくらいかな」
ソファーにキラを連れて行き そっと座らせると「高校に入った時家を出て一人暮らし始めたから」
その声からは懐かしさが伝わってこない キラはなんて声を掛ければいいのか 言葉が見つからなかった

「零 今でも寂しい?私が居ても寂しい?」
そっと零の額に手を伸ばし触れる
「キラ 今はちっとも寂しくないよ お前が居るから そうだ!母さんの部屋に行ってみるかい?ピアノもあるんだ」
キラの手を取り部屋を出る

あの日 日記を見けてからは来ることもなかった母の部屋

ドアを開け部屋に入る ひんやりとしている
キラをピアノの傍まで連れて行く 優しくピアノに触れるキラ
「キラ 何か弾いてよ~」
「でも お母様の大切なピアノなのに 私なんかが弾いていいのかしら?」
「キラに弾いてもらったらきっと母さんも喜ぶよ あれから誰にも弾いて貰えてないからこのピアノ」

静かにピアノの前に座ると 「何がいい?」
「何でもいいよ キラの弾く曲はどれも好きだから」

静かな部屋にワルツの調べが

眼を閉じじっと聞き入る零
そのやさしい調べは 零をいつしか夢の世界へ

沢山の花が咲き誇るその場所 少し離れたところでキラが
ヒラヒラと舞うチョウチョとまるで戯れているように見える

見上げれば空は抜けるような青空 雲ひとつ見えない
眼を閉じ キラのはしゃぐ声に耳を傾けていると そっと髪に触れる手を感じ 眼を開けると
母の姿が 

『零 愛する人を見つけたのね』
その穏やかな顔 最後に見た母の顔は悲しそうだった
『母さん~~』懐かしい母の顔 
ずっと会いたかった 母が今 目の前に居る

『零 ごめんね 随分寂しい思いをさせてしまって お母さんを許してね でももう大丈夫ね キラさんが居るから』
キラを見る母の目に安堵の表情が現われる
『貴方とお父さんには 随分辛い思いをさせてしまったわ お父さんを恨んだりしないでね みんなお母さんが悪いんだから
どうかお父さんを大切にしてあげてね お母さんの分も そしてキラさんもね』

母の目に大粒の涙が溢れ出す 一筋頬を伝うその涙に 零も堪えきれずに涙が零れおちる
『母さん 会いたかったよ ずっと』手を伸ばし 母に触れようとしたその瞬間 母はスーと消えてしまった

零の名を呼ぶ声にハッと目が覚める そこには心配そうにしているキラが
「零 どうしたの?」

夢だった でも~~ 確かに母の声が 



この先もずっと一緒にキラと居たい いつもキラの笑顔を見ていたい
永遠にこの幸せが続いて欲しい












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