浮かんじゃった


 ご本人はサラリーマンでなくなったことが非常に誇らしげだった。
 背広が余程窮屈な体型だったからそうなのかもしれない。私は作業着だと思っているしビジネスプロトコルの一つであると思っているのであまり感じなかった。
 結構派手に盛り場をうろうろしては妖しげな案件を持ってきた。確かに外人の日本支社長クラスに渡りをつける方法としては面白いやり方だったかもしれない。
 ただ、この分野は利権が複雑に絡んでいるのと元々食にもつけなかった人たちの雇用の安全弁であったことから口利き屋の利害関係を大切にしてきていたそうだ。
 私も友人が詳しかったので権威付けに同席させられたりしてその一旦を垣間見た。仁義が重んじられた。そうはいっても挨拶と段取りがきっちり出来ていれば何の問題もない様子であった。商慣行といっていいのかどうかわからないが、紹介者の取り分というのがあって、暫く連絡が無かったが人伝に巧い話になっている様子だよと聞いた。なんか私も飛ばされたようで憤慨してほかって置いた。

 ある日を突然電話が鳴った。〇〇島に上がっちゃったんだってさ。
 寒気がした、電話の主に聞いたら、礼儀知らずはそうなるんだよね、こっちも商売上がったりと。
 〇〇分野は今や一部上場会社も業界ぐるみで手掛けているが、当時はそんなもんだった。戦後がまた一つ終わったのかもしれない。バブルの頃だった。私は駆け出しで〇〇も数学的に面白い分野と思っていただけで現場を知らないから結構怖いもの知らずだったような気がする。


© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: