ラインの黄金仮面 Weekly

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『ジョコンダ』(ポンキエッリ作曲)


【解説】
 イタリアオペラの巨匠ヴェルディが円熟期を迎えていた頃のイタリアオペラ界は他にもオペラは作られていたが、ヴェルディの作品を凌駕するような作品は現れなかった。それだけヴェルディが偉大だったわけだが、そんな中、唯一その作品群に拮抗していた存在が、この『ジョコンダ』である。当時の作曲技法を駆使して作られた曲の数々と、まさに歌の国イタリアのオペラを感じさせる美しい歌の数々(有名な曲に「自殺!」「空と海」等)と、イタリアオペラの醍醐味を味あわせてくれる。主要歌手6人がいずれも高い歌唱力を要求されるため、日本はおろか、欧米でもなかなか上演の機会に恵まれない作品。作曲家ポンキエッリはこのほかにもオペラを書いているが、世に残ったのはこの作品と、一部宗教曲のみとなった。その代わり(?)マスカーニ、プッチーニといったヴェルディ後にイタリアオペラを支える作曲家達を育てた教育者としての面が高く評価されている。バレエ曲として大変有名な「時の踊り」はこのオペラの挿入曲である。台本はヴェルディの『オテロ』『ファルスタッフ』等を書き、自身も作曲家であるA・ボーイトが、自信のない作品の時に使ったとウワサされるペンネーム、トビア・ゴーリオ名義で書いた。原作は『リゴレット』と同じ、ヴィクトル・ユゴー。
【主な登場人物】
 ジョコンダ:歌姫(といってもトスカのようなプリマドンナ然とした感じではない。)。声種:ソプラノ。太く強い声の要求される役柄。
 チエカ:ジョコンダの母。声種:コントラルト。深く慈愛に満ちた声を要求される。
 エンツォ:ガレー船の船長でジョコンダの恋人。実はヴェネツィアを追われた貴族。声種:テノール。力強くも伸びの良い典型的なイタリアリリックテナーの声が要求される。
 アルヴィーゼ・バドエロ:宗教裁判長。声種:バス。深い声を持った、それでいて高音も歌える声が要求される。
 ラウラ:アルヴィーゼの妻。かつてエンツォの恋人。声種:メゾソプラノ。女性的でありながらも芯の強い声を要求される。
 バルナバ:共和国の密偵。ジョコンダに横恋慕している。声種:バリトン。話の展開の中心となり、力強い声と演技力を要求される。

【あらすじ】
 17世紀ヴェネツィアのサン・マルコ広場、人々が祭を祝っている。ジョコンダは、チエカの手を引いて現れるが、彼女をつけ狙っているバルナバに言い寄られ逃げ出す。バルナバは、腹いせに、ゴンドラ競漕に負けた水夫に、ジョコンダの母親が呪いをかけたためだと耳打ちする。これを聞いた群衆は、チエーカは魔女なのだと騒きだす。ジョコンダを伴って現れたエンツォは、皆を鎮めようとするがどうにもならない。そこにアルヴィーゼが、黒い仮面をつけた妻のラウラとともに現れる。ラウラはチエカのロザリオを見て、信仰に免じて彼女を救うよう夫に願い、聞き届けられる。チエカは、ロザリオをラウラに捧げ、幸運を祈る。ジョコンダが、ラウラの名を尋ねると、その名を聞いたエンツォは激しく狼狽する。密偵バルナバは、エンツォの正体を見破り、ラウラと逃げるなら手助けしようと持ちかける。エンツォは、訝りながらも、今夜船でラウラを待つと告げて去る。バルナバは、妻の不貞をアルヴィーゼに知らせる密告書を作る。ジョコンダは、愛するエンツォの裏切りに唖然とする。
 夜、バルナバの手引きでラウラがやって来る。二人は再会を喜び愛を歌い上げる。二人は逃亡を決意、エンツォが出帆の準備に行ってしまうと、そこにジョコンダが現われ、エンツォを返せと迫る。だが、恋敵であるラウラの首に母の捧げたロザリオを見つけ、彼女が母の恩人であることを知る。ジョコンダは、アルヴィーゼが、妻を追って来たことを知らせ、ラウラを小舟で逃がす。そして、エンツォに、ラウラは後悔して帰ってしまい、船の回りは敵に取り囲まれている、と伝える。エンツォは、船に火を放ち海に飛び込む。
 逃げたラウラだったが、妻の不貞に怒ったアルヴィーゼは、毒薬を渡し、自害するよう言い渡して去る。そこにジョコンダが現れ、仮死状態になる薬を飲ませる。アルヴィーゼは、死んだように倒れているラウラを見て、すでに自害したものと思い込む。アルヴィーゼ主催の舞踏会。たくさんの賓客が美しいバレエ「時の踊り」に見とれている。バルナバがチエカをつれて現われると、ラウラの死を告げる鐘が鳴り響く。同時に、客に紛れ込んでいたエンツォが姿を現わし、かつて領地と恋人を奪ったアルヴィーゼを告発し、宴は騒然となる。ジョコンダはバルナバに、捕まったエンツォを、その後そっと逃がしてくれるなら、自分の身体を与える、と約束する。アルヴィーゼは、皆に妻の死体を披露し、エンツォは彼に切りかかる。騒ぎの中で、バルナバはチエカを捕まえて、その場から立ち去る。
 荒れ果てた屋敷にラウラを運び込んだジョコンダは、密偵バルナバの到着を待つ。運河に水死体が上がった、と叫ぶ水夫の声を聞き、ジョコンダは不安に駆られる。愛と望みを失ったジョコンダは、自殺を決意している。やがて、そこへ、バルナバの計らいで釈放されたエンツォが到着し、ラウラを埋葬した墓に行こうとする。もう一度愛してほしいと嘆願するジョコンダだがその願いは聞き届けられず、ラウラの後を追って死ぬというエンツォに、墓は空だと告げる。エンツォは、ジョコンダが嫉妬から墓を暴いたと思いこみ、彼女を殺そうとする。自殺せずとも、愛する人の手に掛かって死ねることを喜ぶジョコンダ。しかし、その時ラウラが目覚め、事の次第が告げられる。エンツォは、ジョコンダに深く感謝し、ラウラとともに小舟で逃れて行く。やがてバルナバが現れて、彼女に約束を果たすことを迫るが、ジョコンダは身体を捧げると言いながら、胸を刺して果てる。怒ったバルナバは、昨夜、チエカを運河に沈めたと叫ぶが、ジョコンダの死を見届け、狂ったように逃げ去る。
【私とのかかわり】
 私が愛してやまない最も大好きなオペラがこの『ジョコンダ』上野の文化会館資料室のLDをたまたま見て、その美しくも感動的な歌に涙、涙、また涙・・・。すっとこべろんちょな状態になったオペラ。それ以来、CDを買いあさり、いろいろ聞きまくり、そのたびに涙し、心底好きな作品となった。一度『ガレリア座』で私プロデュースでやろうとなったが、難しすぎるという理由で断念。夢絶たれた私はしばらく立ち上がれなかった・・。実現すれば全曲の日本初演だったが、果たせずその直後新星日本交響楽団により演奏会形式で日本初演された。舞台初演はソフィア歌劇場。この両公演を見たが、カットも多く万全の公演とは言えず、いろいろ不満の残る出来だった。
【お勧めCD&映像】
 まず、ライブ録音で音があまりよくない、序曲と「時の踊り」が半分以上カットされている、という非常に悪条件でもあるけれど、G・パタネ指揮のベルリンドイツオペラでの録音が私の愛聴盤。パタネのドライブの効いた指揮、歌い手がドイツ圏歌手中心だが、皆水準以上なのだが、特にジョコンダのL・リザネックとラウラのE・ランドヴァ、この二人の女声の丁々発止のやり取りが実にスリリングで聴き応えがあり、リザネックの息の長い歌唱は胸にぐっと来るものがある。強気な女性の一面に見る切々とした女性としての感情をえぐるような歌唱だ。パタネは後年のハンガリーでの録音と比べても段違いに良い。あと、好きなのはR・ガリデッリ指揮、R・テバルディの盤。ガリデッリのドラマチックな棒さばきがこのオペラを盛り上げるし、テバルディの美声とドラマチックさが見事にマッチした歌唱も聞き入ってしまう。ベルゴンツィのエンツォ、R・メリルのバルナバ等、相手役にも人を得ている。有名な録音で手に入りやすいのはG・ガヴァッツェーニ指揮。A・チェルケッティ、デル・モナコ、シミオナートシェピ、バスティアニーニと綺羅星のごとくスターの揃ったCDが入門編としてもほぼ完璧。ただチェルケッティは当時彗星のごとく現れたドラマチックソプラノだが病気で早々に引退してしまったため、正規の録音が非常に少なく、そういう意味でこのCDは貴重だそうだが、個人的にはあまり好きな歌手ではないし、CDに彼女の声が収まりきれているのかは疑問の余地あり。有名歌手どころでは美声のカバリエを擁したバルトレッティのもの(パヴァロッティ、バルツァ、ギャウロフ等超豪華キャスト!)や最近の録音で、ドミンゴが歌い、今注目のソプラノV・ウルマーナがタイトルロールを歌ったヴィオッティ盤等があるが、歌は良いものの、消極的過ぎる指揮がかなり足を引っ張っている。映像は一本。A・フィッシャー指揮ウィーン国立歌劇場のライブ。入門編としてとてもよい映像。DVDはまだでていないかも・・。E・マルトンの、前述のリザネックにも似た、劇唱、まさに吐露という言葉が相応しいような歌唱には涙。相手役はドミンゴですが、ドミンゴが単調に感じてしまうほど。マルトンはこれを見るまであまり好きな歌手ではなかったが、この映像を見て大好きになった歌手。

 ★ ポンキエルリ:歌劇「ジョコンダ」(全曲)@ガヴァッツェーニ/フィレンツェ五月音楽祭o. &...
 (入門編に最適!)

 ★ 時の踊り/カラヤン,オペラ名曲集
 (時の踊りをカラヤンのゴージャスサウンドで!)

カラス/ポンキエルリ:歌劇「ジョコンダ」
(カラスが得意にしていた役のひとつ。2度録音し、こちらは旧盤です。確かカラスのオペラ初録音ではなかったでしょうか?)

カラス/ポンキエルリ:ジョコンダ
(こちらはカラスの新盤。カラスは衰えを表現でカヴァー。カップチッリ、コソットといった世代交代的な共演者が魅力。指揮は×)

ポンキエッリ:歌劇「ジョコンダ」全曲@バルトレッティ/ナショナルpo.□カバリエ(S)他
(名歌手達の競演で楽しめます。カバリエの美声にフラッ!ただし指揮は×)


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