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つい最近、純国産の旅客機YS-11が日本の空から姿を消した。YS-11プロジェクトについては、成功だったのか失敗だったのか、さまざまな議論がある。本書は、関係者へのインタビューを中心に、YS-11プロジェクトについて残すべき事実を整理したものである。
YS-11は、1972年に生産が終了している。それが21世紀になった今日でも日本の空を飛んでおり、1997年のエアーニッポン(ANK)では、YS-11の定時出発率が99.6~99.8%という、ハイテク機でも出せない高効率をたたき出している。それほど機体が優れているかというと、本書を読んで分かったのだが、設計自体はとんでもない代物だったらしい。現場の航空会社のパイロットや整備員が苦労して育て上げてきた機体だというのが真相のようだ。
YS-11の設計者は、戦時中の零戦などを設計した名工ばかりだと聞いていたが、実は、「YS11を設計した主査クラス以下の技術者たちは旅客機など一度も乗ったことがなかった」(129ページ)という。いかにユーザーを無視した設計であったかがわかるエピソードだ。しかも、日の丸プロジェクトであったために、量産によるコスト削減効果がまったく無かったという。結果として、360億円の赤字を出してしまった。
高度経済成長期だったから許されたプロジェクトというわけではない。このような無謀なプロジェクトは、今でもある。「第五世代コンピュータ計画」から昨今の「情報大航海プロジェクト」まで、枚挙にいとまがない。
技術というものは、巨額の国費を投入して開発できるものではない。YS-11プロジェクトの一人が語っているが、「結局、技術の伝承は人から人への伝承」なのである(201ページ)。
日本の空からは姿を消したが、東アジア地域のローカル路線ではYS-11は現役である。願わくば、YS-11の技術の欠片でも、後世に残らんことを。
■メーカーサイト⇒ 講談社 最後の国産旅客機YS-11の悲劇
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