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2007/10/16
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テーマ: ニュース(95833)
カテゴリ: メディア
昨年6月、奈良県田原本町で起きた放火殺人事件( 昨年6月23日の日記 を参照)を扱った「僕はパパを殺すことに決めた」(草薙厚子著、講談社)という本に、事件を起こした高校1年生の少年の供述調書が引用されている問題で、奈良地検が、少年の精神鑑定を行った医師を逮捕してしまいました。
この件については、 一昨日の日記 でも書きましたが、真摯に少年犯罪を考え、不幸な事件が繰り返されないように考えていこうという言論に対する弾圧以外の何ものでもありません。
刑法134条の「正当な理由」となるべき、日本社会の秩序を維持していく上での課題に、真剣に取り組もうという活動を、奈良地検は妨害しようとしているのです。
奈良地検の医師逮捕は、刑法の存在意義、日本社会の秩序維持、また、日本社会そのものに対する重大な挑戦行為であり、お上に逆らう者は処罰するという、まさに戦前の「治安維持法」的行為以外の何ものでもありません。

けさ(2007年10月16日付)の各紙社説(読売社説を除いて)が、医師逮捕を批判しています。
毎日新聞社説は、「言論の自由やジャーナリズム活動に対する威圧と認識されてもやむを得まい。」
朝日新聞社説は、「こうしたプライバシーの保護と表現の自由という二つの価値がぶつかりあう問題には、捜査当局は介入すべきではない。」

と書いています。

朝日社説と日経社説は、草薙厚子さんが、少年の家庭環境に至るまで詳細に情報公開したことを非難していますが、毎日社説は、
 だが、重大な結果を引き起こした少年事件の背景や経緯を明らかにして社会全体で再発防止を目指すことにも妥当性がある。
 それと、秘密を漏らした鑑定医を刑事事件に問い、逮捕することのどちらが、より公益性が高いかは、国民の議論の中で決めていくべきことだ。
 ジャーナリズムの大きな役割は権力の監視であり、社会や組織の不正や不条理を正すことにある。うみを出すためには、内部情報の入手が不可欠だ。内部告発者の保護を定めた公益通報者保護法も、法で認められる通報先に制限こそあれ、こうした公益性を重視して生まれたものだ。
 自動車や電化製品の欠陥や食品の消費期限のごまかしなど、内部情報の発覚が契機となった事案はいくらでもある。
と書いています。

草薙さんは、事件を起こした少年が広汎性発達障害を抱えていて、病的までに攻撃的衝動的な父親から受ける圧迫に耐えかねたのであって、事件の責任を問うことはできない、という主張のようです。
検察側の取り調べに淡々と応じる少年を、検察側は「事件の反省がない」と解釈したようですが、著者は、広汎性発達障害の子どもに見られる、律儀に誠実に答えようとする気持ちがそうさせているのであって、「ここで泣かなければ非情に見える、などという打算は働かない」(前掲書230ページ)ということで、検察官の誤解を生んでいるのだ、としています。
この本は少年を守る立場で書かれているのであって、興味本位にプライバシーを暴き出すような意図は全く感じられません。

また、この本は確かに少年の家族関係を詳細に書いているのですが、だからこそ、この事件の本質が家族関係にあるということがわかるのです。
父親が、離婚時に前妻(少年の実母)との約束を話した後の少年の供述です。
少年の頬を突然、涙が伝った。
声を詰まらせながらも、想いを吐き出すように、少年は言った。
少年 びっくりしたんは、本当のお母さんが自分にもう会わへんと言って約束したこと。
---なんでびっくりしたの
少年 ・・・・・・本当の子どもじゃないかって、愛情がなかったんかなと。
---本当のお母さんは君に対してどう思って暮らしていると君は思ってたの。
少年 会いたいと思ってくれてると思ってました。
(前掲書248ページ)
これが、奈良県田原本町で起きた悲劇の本質です。
草薙さんの執筆意図とは異なりますが、広汎性発達障害ゆえに起きた事件ではないのです。
日本社会が「子どもの権利条約」の第9条を無視して、民法766条( 2月21日の日記

こうした事実が闇に葬られてしまえば、同じような少年事件が何度も繰り返され、日本の社会秩序は維持されないことになってしまいます。
昨年、稚内市でやはり高校1年生が起こした母親殺害事件( 昨年9月9日の日記 を参照)も、私は、家庭環境が原因で起きた事件だと思いますが、事実関係がほとんど明らかにならないので、考えようがありません。
事件の本質が隠蔽されていて、日本社会で誰も考えようがないのですから、同じような不可解な事件が繰り返されてしまいます。
今年8月にも、山口県上関町で、少年が祖父をバットで殴殺してしまいました( 8月23日の日記
この山口県の事件を起こした少年の逃走パターン、逮捕のパターンは、驚くほどに田原本町の事件と酷似しています。
田原本町の事件を、日本社会全体で真剣に考えていれば、山口県の事件を未然に防げた、ということです。

ところが、奈良地検は、社会秩序を守るために少年犯罪の原因を真剣に考えようと言う動きを、弾圧する、という暴挙に出てきたのです。
こうしたことがまかり通るようになれば、富山県で起きた冤罪事件においても、何ゆえに、無実の人間がずさんな捜査で事件の犯人に仕立て上げられ、有罪となり、収監されて服役することになるのか、という点が、全く明らかにできないことになります。
現に、富山の冤罪事件の無罪判決の裁判では、捜査時点の問題追及は全く為されなかったのです。
情報隠蔽の横行を許してしまえば、行政に逆らう人間は全部処罰してしまえ、ということになっても、誰も抵抗できないことになってしまいます。

毎日社説は、
 報道・出版や表現の自由は最大限認められるべきだ。行き過ぎた公権力の行使は、権力の恣意(しい)的な情報規制や監視の強化につながる。公権力がジャーナリズム活動に圧力をかけることがあってはならない。
朝日社説は、
 ジャーナリストにとって「取材源の秘匿」は鉄則である。供述調書の入手先について、筆者は「死んでも言えない」としているが、調書を引用したことで、いともたやすく地検に情報源を割り出されてしまった。これでは取材に協力してくれる人はいなくなる。
 取材源を守れなかったという落ち度があるとはいえ、このまま医師が起訴されていいわけがない。取材協力者もメディアも萎縮(いしゅく)し、報道の自由、ひいては国民の知る権利が脅かされることになりかねないからだ。さらに筆者が「身分なき共犯」で立件されるようなことになれば、その心配はいっそう大きくなる。
日経社説は、
 捜査当局が容疑者の身柄を拘束するのは、原則的には逃亡や証拠隠滅を防ぐためだ。この事件の場合、在宅のまま処分する道もあったのではないか。それをあえて逮捕に踏み切ったことは、今回のようなケースではなくとも取材源からメディアへの情報提供を抑制し、取材活動を制約する弊害をもたらしかねない。
と、結論づけています。

情報開示が必要である、というのは、富山の冤罪事件と逆のパターンもあるからです。
'93年12月14日に神奈川県藤沢市で25歳の女性が被害者となった放火殺人事件が起きました。
'94年2月に被害者の両親は、前の晩、当日朝の状況では被害者が自殺する可能性はない、と、主張して、放火殺人の告発をしましたが、やる気のない警察は充分な捜査を尽くさず、'98年に証拠不十分で不起訴としてしまいました。
両親は、'96年12月に民事訴訟を起こしていましたが、'00年7月に横浜地裁は、放火殺人を認定し、加害者に賠償を命じる判決を出しました。
裁判所は、刑事事件としては証拠不十分で不起訴となっていたのに、民事事件としては放火殺人を認定したのです。
警察はここでやっと再捜査を開始、被害者遺体の再鑑定を行い、首を刺された被害者が動けない状況で、石油をまいて放火するのは不可能だとして、'01年2月に加害者を逮捕、3月に刑事事件として起訴しました。
しかし、6月、横浜地裁は、再鑑定結果の信用性を認定せず、殺人があった可能性は高いが刑事罰に処するだけの証拠に欠ける、として、無罪判決を出したのです。
よく覚えていませんが、このときの裁判長が、被告を有罪としたいのだが、警察の捜査が不十分で有罪判決を出せないのが残念だというようなことを言っていたような記憶があります。
もっとも、この後、検察が上告し、'03年9月27日には、東京高裁で懲役15年の有罪判決が下っています。
横浜地検では、捜査が充分に尽くされたのか、今後検証したい、と言っていましたが、報告書が出ているのでしょうか、その後どうなったのかわかりません。

大相撲の時津風部屋の力士が死亡した事件でも、愛知県警の初動捜査に問題点があったことが指摘されています。
死亡した力士が火葬されてしまっていれば、この問題点も発覚しませんでした。
一般公開せよ、とまでは、言いませんが、たとえ少年事件であっても、恣意的な捜査が行われることのないように、また、同様の事件を防ぐ上での教訓を得るように、捜査上の情報が社会秩序の維持を検討しようとする人間に公開される道を用意するべきです。




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最終更新日  2007/10/16 11:13:13 AM


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