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科学的応用力の結果を見ると、日本の子どもたちは、現象を科学的に説明したり、問題を科学的に検証したりする力に弱点がある。と書いています。
科学の価値や楽しさを感じられない。理科の授業で意見発表や討論を重視したり、実生活に密接にかかわっていることを解説したりする授業をしてくれる先生が少ない――。学力調査と同時に行われた意識調査では、多くの生徒はこう感じている。
文科省の学校基本調査によると、大学の工学部系の学生が、全学部生に占める割合は10年前より3ポイント近くも低い約17%に減っている。理数離れは深刻だ。
(中略)
前回の調査で明らかになった読解力の低下が、ゆとり教育の見直しにつながった。さらに、理数系の応用力の低下も浮き彫りになった。指導法の改善などを具体的に盛り込んだ新指導要領の作成を急がねばならない。
こうした深みのある学力の不足は、文部科学省による全国学力テストでも明らかになっている。(中略)まず、PISAのテストと文科省が行う全国学力テストとでは、問題の質も目的も違います。
原因は複雑に絡み合っているだろう。一因としては、学習内容を大幅に減らした「ゆとり教育」が挙げられる。「ゆとり」路線そのものはPISAの学力観とも相通じる。ところが実際には学習の軽量化だけが進み、ものごとを突きつめて考える機会が減ったのではないだろうか。
より根深い問題が潜んでいるかもしれない。今回の調査では、科学に対する興味や関心を尋ねた。「科学の本を読むのが好きだ」などと答えた日本の生徒の割合は、OECD平均よりかなり低い。理科の授業で、生徒の発表や観察・実験がおろそかになっていることも分かった。
(中略)「科学の本を読むのが好きだ」などと答えた日本の生徒の割合は、OECD平均よりかなり低い。理科の授業で、生徒の発表や観察・実験がおろそかになっていることも分かった。
「PISA型」の学力だけが学力ではない。しかし、調査に初参加の台湾はいきなり数学的応用力で首位に立ち、他のアジア勢も健闘した。こうした現実を踏まえれば、社会全体でもっと危機感を共有すべきだ。このままでは、世界の中での日本の地位低下にもつながるだろう。
今回の結果からは、日本の子どもの特徴について二つのことがいえる。と言っています。
まず、フィンランドなどの上位の国と比べると、学力の低い層の割合がかなり大きいことだ。この層が全体を引き下げている。これまでも様々な調査で、勉強のできる子とできない子の二極化が深刻な問題と指摘されていたが、底上げの大切さが改めて示されたわけだ。
もうひとつは、科学では、公式をそのままあてはめるような設問には強いが、身の回りのことに疑問を持ち、それを論理的に説明するような力が弱い、ということだ。
併せて実施したアンケートを読むと、その原因は授業のあり方に問題があることがわかる。理科の授業で、身近な疑問に応えるような教え方をしてもらっているかどうか。そう尋ねると、日本は最低レベルだったのだ。
(中略)
自分で問題を設定し、解決方法を考えるという力に弱い。このことは科学の分野に限らないだろう。
(中略)
応用力を育てるには、公式の当てはめ方などを機械的に教えるのではなく、その論理を子どもたちに自ら考えさせる。そんな授業が求められる。
例えば、「30歳くらいでどんな職に」という問いに、科学関連の職業を挙げた生徒は8%という。社会をどう見るか、という点では、毎日社説の立場と、私の立場は異なりますが、今回のPISAテストの結果の原因を日本社会に求めている、と言う点で、毎日新聞の指摘は高く評価できると思います。
(中略)
なぜか。理系の職業や社会的地位は、発展途上国で相対的に恵まれ、子供のあこがれが強いという事情もある。先進国では職業が多様に分化し、選択肢が増えるという側面もある。日本では理系の職種が必ずしも厚遇されていないからという指摘もある。でもそれだけでは日本の子供たちの関心・意欲が「ずば抜けて低い」(文部科学省)調査結果は説明できない。
実は、こうした傾向は理科教育に限らず、既に多くの学校や子供たちの生活の場で指摘されていることだ。経済的な豊かさ、少子化と受験競争の緩和など、さまざまな要因が挙げられる。「生きる力の育成」を強調した「ゆとり教育」も、本来この状況の打開や改善を目指したものだった。
前回のOECD調査で読解力の順位が下がったことで、ゆとり教育批判がにわかに強まり、教科学習を再び増やす学習指導要領の改定決定や、全国学力テスト実施に結びついた。ゆとり教育の手法や成果、OECD調査結果との因果関係について十分な検証が行われないまま、「ゆとりが学力低下の元凶」論が高まった面がある。
今回の結果で、実験を工夫するなど理科教育の改善が進むことは期待したい。しかし、「やる気の薄さ」はこの分野に限ったものではなく、社会全体の問題、これからの日本の幅広い人材育成で避けて通れない問題、ととらえる視点と覚悟が必要ではないだろうか。