恐山
からからと乾いた音をたて いっせいに回る風車は 亡くした子への母のむせびでしょうか 死んだ人の歳を数えるなと言いますが ここには そろそろ嫁をもらう年齢になったからと 花嫁人形を奉納にくる人がいます 生きている側の魂鎮めでしょうか 硫化水素の白煙と硫黄臭たちこめる山は 小石が積み上げられてはいますが 鬼も霊も見当たりません くわぁ くわぁ 山の陰には餌を求める白鳥たちの鳴き声 カルデラ湖では温泉水と冷水が不思議に混ざり合わず エメラルドブルーの柔らかなグラデーションが 白い砂浜に続きます ここは恐れられる山ではなく 人を慰める自然のたたずまいなのです |