ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

May 11, 2007
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 もう長いことバイオリンを弾いてるけれど、僕は未だに調弦が下手くそです。

 まずA線を合わせ、ほかの弦も順に調えていくだけの話なのに、なんかムツカシイ。
 ピアノからA(ラ)の音をもらうとき、単音ではなく和音(レファラとか)を鳴らしてもらうようにしてます。それでも音が合ってるんだか合ってないんだか迷う自分が情けない……。

 アマチュアオケでコンマスをやったことが何度かありますが、やっぱりチューニングは苦手でした。
 オーボエからAをもらって自分がまず合わせます。でもやたらと時間がかかってしまう。やっと音が合ったと思っても、周りの団員から「 ちょっと低いんじゃない? 」と指摘されたり(笑)。

 さらには、知らない人との初顔合わせで室内楽の練習をするときも、最初に調弦する瞬間が最も緊張します。何ごとも初めが肝心。ナめられてはいけないのです。ナニゲを装い、短時間でサクッと完ペキに。大きな音でギコギコ弾いてしまってはいかにも素人まるだし。調弦のしかたでその人の実力が一瞬でわかってしまうのがこの世界。

 ちなみに、ビオラの調弦はバイオリンよりもさらに難しい。僕の場合、腕が短すぎるのか楽器が長すぎるのか、糸巻き(ペグ)に指が届くのが精一杯。調弦どころじゃない(笑)。
 あと、ビオラ(やチェロ)はA線が四本の弦のうち一番端にあるので、五度ずつ隣の弦を合わせていって一番下のC線にたどりつくまでに、音が微妙にずれていく可能性が高く、いざ隣のチェロの人とC線どうし弾き比べてみると全然違ったりすることがあります。(←僕だけ?)



 さて、近年、カルテットなどの演奏会に行くたびに思うこと。
 楽屋で四人がきっちり調弦を済ませてから登場するのがどうやら流行ってるらしい。つまり、舞台に現れて着席するやいなや、いきなり(調弦なしで)曲を弾き始めるのです。これ、すごく舞台映えしてカッコイイ。特に演奏会の一曲めを華々しく始めたいとき。
 確かに、客としては、舞台上であまりに念入りにシコシコと調弦してるのを見るのは興ざめ。ピアニストや声楽家のような一発勝負の人びとが潔く感じられもします。

 教会のミサとかで弾かせていただくこともたまにありますが、すごく気を遣います。
 厳かにかつ淡々と礼拝が進んでいて、私語や物音を立てるのはご法度な雰囲気。賛美歌だのカンタータだのは、 天から降ってきたかのように 劇的に始めたいところ。みんなが息を呑んで心を清めている沈黙の真っ只中で、「 ら~ 」だの「 れ~ 」だのガチャガチャ調弦するのがためらわれる瞬間であります。

 いや、そんなこといちいち気にせず、 神の前でも 正々堂々と調弦すべきでしょうか。


 一方、ミュージカルとかジャズやポップスのライブに行くと、「一体いつチューニングしてんだろ」って思います。曲は突然始まるのです。別に彼らの音は狂ってるわけではないようだし、ちゃんとどっかで音合わせしてるはず。静かにサッと合わせるワザに長けてるのでしょう。

 舞台上でも気兼ねなく丁寧にチューニングできるのはクラシック演奏家の特権なのかもしれません。ショーの一部として正当化されてる感もありますし。





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最終更新日  May 13, 2007 08:05:55 PM
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