ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

May 29, 2011
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「自粛」

 今日の会合の後半では、ブラームスのクラ5を合わせた。精神的にどっと疲れた。
 クラリネット:スティーブ、第1バイオリン:自分、第2:シャイ、ビオラ:セス、チェロ:ヤッシャ。

 思うに、この曲は世にゴマンとある室内楽曲のなかで最も難しい。特に第2楽章。今まで何度も挑戦してみたけど、必ず崩壊してしまう。
 でもって、崩壊したのはお前のせいだ、あなたのせいよ、と口論が始まる。下手すると落涙、流血にまで発展し、結局は散会せざるをえない、因縁の楽章。

 今日もイヤな予感がしたので、2楽章についてはぼくが先回りして拒否権を行使。この楽章だけは割愛しようとみんなに呼びかけ、合意にこぎつけた。せっかくせっせとさらってきたスティーブはご機嫌斜め。でも互いの友情を維持するためにも必要な措置だったと今でも思う。

 ただでさえ、クラリネット五重奏というのは扱いにくい。

 室内楽って、指揮者がいないぶん、人数が多くなれば多くなるほど難しくなると思われがちだけど、実際はそんなことはない。
 例えば、弦楽五重奏だと第一バイオリンと第一ビオラ(とチェロ)が旋律群を構成し、それ以外が伴奏となることが多いし、弦楽六重奏とか八重奏でも同様で、人数が増えるにつれ、意外に「組分け」が目に見えてはっきりしてくるので、スコアがなくても練習を重ねているうちに勘がつかめる。



 主役がクラリネットだと思ってると、実はファーストが主役だったりなんてのはしょっちゅう。クラが伴奏してるときの弦四人の響かせ具合にも悩む。
 小節ごとに自分の立場がころころ変わって瞬時にわかりにくい。出しゃばっていいものなのか自粛すべきなのか。

 「ブラームス(とベートーベン)の楽曲は、作品番号100番を超えるものには手を出してはいけない。」

 世界ぢゅうのアマチュア音楽家のあいだで語り継がれている魔の掟。
 今日はおそるおそる手をつけてしまったけれども、2楽章を自粛したおかげで、我々五人はとりあえず友人関係を維持したまま笑顔で再会を誓い合うことができた。

 めでたしめでたし(?)。








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最終更新日  Jun 4, 2011 11:56:45 AM
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