ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Dec 5, 2020
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カテゴリ: 映画、テレビ
「焼け石にみず」(評価 ★★★★★ 満点五つ星)

 ブカレストの音楽酒場「コレクティブ」で2015年に起こった火災事故を機に、政治や医療の現場の腐敗ぶりを暴いたドキュメンタリー。
 現時点で、来年のアカデミー賞の非英語映画部門の最有力っ!と(一部で)宣伝されてたし、期待しまくって鑑賞。
 日本公開は未定みたい。英語版のウィキは https://en.wikipedia.org/wiki/Collective_(2019_film)

 話があちこち展開していってわかりづらかったけど、ぎりぎり許容範囲内。満点五つ星。

 3密音楽会の最中に出火し多数の焼死者が出てしまったことだけで充分に惨事なのだけれど、生き残った人たちもまた(入院して治療を受けてるはずなのに)何日も経ってからばたばた死んでいく。病院内で何が起きているのか調べようと世間がざわついていた矢先、鍵を握る重要人物が謎めいた交通事故で死亡。自殺か他殺かは不明。

 よくもここまで次々とネタが出てくるもんだと逆に感心するけど、それは報道家や政治家が地道に取材したたまもの。
 てか、不正が起きる、そしてそれを隠蔽するのはいつの時代でもどこの国でも起こってること。当局に忖度せずにきちんと暴くことこそが実はかなり難しい。


 映画前半は敏腕報道家カタリンさん、後半は新任の若手官僚ヴラッドさんを密着取材。しつこいぐらいに撮影隊が彼らの仕事場を映しまくる。 
 火災で家族を失った遺族の方々の哀しみも描く。一方で、全身にやけどを負って指や頭髪も失いながらも生き残った女性の健気でたくましい日常も紹介。

 確かに不正、腐敗ぶりには閉口したけど、ぼくはこの映画を観てルーマニアという国にむしろ好印象を持った。ぶっちゃけ、あんまし身近な国ではない。以前、観光で何日か滞在したことがあるぐらい。歴史的にも政治的にもいろいろややこしいお国みたいなのだけれど、今のルーマニアって、映画の中ではふつーに先進国のように見えた。というのも、くたびれた背広のおじさんおじーさんじゃなく、若者や女性がナニゲに大活躍なさってるさまが伺えたから。その点では日本はまだまだなのかも。

 この映画、終わり方が印象的。クリスマス、雪景色、息子を失った父らがお墓まいり。帰りの車中で流れる英語の曲が「Nothing More」(The Alternate Routes)。歌詞が見事にこの状況に合致している。





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最終更新日  Dec 6, 2020 06:42:45 AM
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