ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Dec 13, 2024
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カテゴリ: 映画、テレビ
「さまよえるオランダ人(たち)」(評価 ★★★★☆ 四つ星)

 子どもが欲しい女性を探しては精子を提供する男ジョナサンさんに関する番組をネットフリックスで鑑賞。全三話、各40分。

 彼は、白人オランダ人、金髪ロン毛、碧い瞳、多言語を操り世界を飛び回る金融系イケメン好青年キャラとして自分(の精子)を売り込み、さらにはご希望の貴女には生で行為もしてさしあげまっせ、とか言っちゃうオラオラ男子。

 彼(の外見)に惹かれた女性/夫婦/婦婦たちは喜んで精子をもらい/買い、妊娠そして出産。可愛い赤ちゃんを育てるのに忙しい日々を過ごすが、実はジョナサンさんが関わって生まれた子どもはほかに何百人もいることが判明。
 それって心理的、倫理的にも抵抗がある。そして表向きの最大の心配ごとは、子どもたち同士(つまり異母兄弟/姉妹)が将来出会い、恋に落ち、子どもが生まれたら、近親関係となってしまうからマズい。
 あと、子どもが実の父親の存在について知ろうとする権利に関する問題もある。父がそうゆう人で、自分には何百人もの兄弟がいると知ったとしたら。

 調査を続けるにつれ、どうやら彼はオランダ(や欧州)のみならず、アフリカや太平洋地域など世界を股に精子を提供し続けているようで、世界ぢゅうでどんどん子どもが産まれていく。
 パニクった「被害者」たち(?)は結集し、国際的な巨大ママ友組織を形成、アメリカの敏腕弁護士らを味方につけ、法的に彼に精子提供をやめさせようとする。
 シリアルキラーならぬシリアルドーナー serial sperm donor(連続精子提供者)として彼のことが報道され世間の注目を浴びたこともあり、裁判に持ち込むことに成功。



 取材を受けるママさんたち、みんな理路整然と語っていてお見事。ただ彼女たちも微妙な立場にいる。つまりジョナサンの外見のおかげで可愛い子どもが産まれたことには感謝しており、当初は彼を父親とする子が国内にあと数人いるのかもしれないな程度の認識でいらっしゃったはず。
 彼の精子で妊娠した女性たちが力を合わせて裁判の準備などをしていくにつれ、みんな家族のように仲良くなっていくくだりは微笑ましくもあり、何とも微妙。

 残念なことにこの番組ではジョナサンさんご本人からは取材を断られたとのこと。
 よって肝心の彼の心情、動機は不明のまま。彼自身そもそも意識高い系ユーチューバーであるから、露出大好き、かまってちゃん。取材の依頼受けたらカメラの前でべらべらしゃべり倒してくれそうなもんだけど。

 初めのうちは軽い気持ちで精子を提供していたのかもしれない。
 実はぼく自身そうなのだけれど「献血ヲタク」の心理に似てなくもない。自身が健康であり、献血できるほど血がきれいなことを誇りに思いつつ、人助けもしているという自己満足、肯定感。回数に応じて特典がもらえることもあり、時間のあるときに何となく献血所に通ってたらいつのまにかそれが定期的な行事となっていき、常習性も帯びてくる。

 彼の場合、女性がつぎつぎと順調に妊娠していくにつれ、世に自分の子孫を広め、世界征服したいという野望が膨らんでいったらしい。そして彼には同業者、相棒がおり、その男と数を競いながらお遊び感覚で精子をばらまいていたという情報もある。
 そのあたりの彼の迷走ぶりを含め、本人の言い分、真相を聞いてみたかった。

 金銭目的だったのかどうかは最後までよくわからなかった。精子のお値段の相場、彼が受け取る具体的な「報酬」金額については調査しきれなかったみたいで。

<おまけ:この番組に出てくる英単語五選>
fertilization 受精
conceive 妊娠する

procreate 子孫を残す
half-brothers, half-sisters 異母(異父)兄弟/姉妹(親の再婚により兄弟になった場合は step brothers。生き別れになった実の兄弟は blood brothers)





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最終更新日  Dec 18, 2024 09:43:03 PM
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