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紀-2
「おい、居るのか」
大きな声で叫んでいたのは、ラーメン屋の矢数さんだった。
「どうかしたんですか」
「良いから入るぞ」
バタンと大きな音がして、扉を開けて矢数さんが部屋の中へ入ってきた。土曜の夕方とはいえ、外はまだ明るかった。
僕は、ベッドで横になっていたんだけれど、矢数さんが部屋に入って来たのでしょうがなく起きあがるった。
「おまえ何やってんだよ。彼女泣いていたぞ」
「彼女って」
「紀ちゃんに決まっているだろ」
「そんな事言ったって」
「彼女のところへ行ってやれよ。明日にはお母さんが出てくるらしいぞ」
「そんな事言ったって」
僕は、彼女が住んでいるところさえ聞いてはいなかった。まして彼女にはこの二月以上も会っていなかったし、彼女が何をしているかさえ知らなかった。
「何してるんだ」
「何処に住んでいるか知らないのに、行けるわけが無いじゃないか」
「おまえ聞いて無かったのか」
一瞬驚いた表情を浮かべたものの、矢数さんはここに来た訳を話し始めた。一週間程前、ふらりと矢数さんのラーメン屋に顔を見せた紀が、思い詰めた表情で、赤ん坊が出来た事、僕が相談に乗ってくれない事、母親に相談したらその事で急に母親が上京してくる事、僕との事を泣きながら話したらしい。
「だって、あいつ俺のところにこの前来たのはもう二月も前の話だし、住所も連絡先も知らない俺にどうしろって言うんだ」
確かに、多少の怒りはあったのかも知れないが、そんな事より一人っきりで紀が悩んでたかと思うとその方が切なすぎた。
「とにかく行ってやれよ。な」
「判った、住所教えてくれよ」
僕は、矢数さんに住所を尋ねると暗くなり始めた道路に走った。
電車に乗り、彼女の住む街に着いたときには日はすでに落ち、彼女の住んでいたアパートへの道のりは暗く遠かった。男子禁制のアパートで、僕は足音を押し殺して彼女の部屋の前に立っち、トントンと扉を叩いた。
「誰」
「俺だよ」
「あきなの」
彼女は扉を開き、僕が入ると後ろ手に扉を閉めた。部屋を見渡すと、そこはまるで女の子らしく可愛らしい部屋ではなく質素な部屋だった。振り返り彼女を見ると彼女は泣いている。僕には彼女を抱きしめてあげる事しか出来なかった。
「明日、母が来るの」
「矢数さんから聞いたよ。俺も一緒に迎えに行くよ」
「ありがとう、あき・・・」
彼女の顔は、再び涙でぐじゃぐじゃになった。
彼女の母を迎えに一緒に行ったのだが、その時の母親の表情はとても驚いていた。それはそうだろう、娘からの連絡を貰って東京に来てみれば、全然相談に乗ってくれないと聞いていた男が、娘と一緒に迎えに来ていたのだから。僕らは彼女の母親の提案で喫茶店でお茶を飲むことになった。
「貴方は、娘と結婚する意思があるんですか」
「いえ、結婚は考えていません。でも一緒に居たいとは考えてます」
余りにも正直すぎる答えだった。当時バイトの収入だけでは月に十万有るか無いかの収入だけでは結婚なんて考えられなかった。僕は正直に言いすぎたのだ。
「それでは娘は連れて帰ります」
その短い一言に、僕は何も口を挟めなかった。そして、呆気なく子供を堕胎する事が決まってしまった。金の無い僕には何も言う事が出来なかった。
その頃の僕の部屋には、一人半の居候が居た。水商売止めたとはいえ頼まれると滅多に嫌とは言えない僕は僕より一つ下のこぶ付の娘を居候させて居た。紀が僕の前から姿を消す前には居候が初まって居たから、当然彼女との面識はあった。その彼女から非合法の堕胎をおこなっている病院の紹介を得るために僕の部屋へ向かい、病院の場所を聞き、明日の約束をして僕らは別れた。
僕には、重苦しい夜だった。何をどうして良いのか判らなかった。ただ苦しかった。
翌朝、僕らは待ち合わせた場所で落ち合い、居候に聞いた病院へと向かった。その道中は、重苦しいものだった。病院へ付き、彼女の経過を診断して貰って居るのを待つ僕の前に一組のカップルが居た。
「帰ったら出来るかな」
「先生が何日かは堕したばっかりじゃ駄目だって言ってたよ」
「そんな事構わないだろ」
楽しそうな顔をしている男女を見ていて僕は、胸が締め付けられる様に感じた。何故、彼等は堕したばかりだというのにあんなに楽しそうに出来るのだろう。こんな想いをするくらいだったら堕すのは止めてしまおう。こんな事を考えて居ると彼女と母親が難しそうな顔をして診察室から出てきた。
「堕すのには四か月に入ってるから無理だって」
母親のその言葉に何処かほっとしている僕がいた。
「けど、人工流産という手段があるからそうしようと思うので、貴方の判子が必要なの。書いてくれるわよね」
「はい」
僕はそうは答えたものの、小声で彼女に堕すの止めないかと尋ねてみたが、彼女はただ首を横に振るばかりだった。
「娘は田舎に連れて帰ります。ですから娘にはもう会わないでください」
母親の言葉に僕は頷き従うしか無かった。
「変える前には行くから」
母親には聞こえないように小さな声で彼女が僕に告げた。
長くて短い一週間だった。僕は彼女が尋ねて来るのをじっと待っていた。居候も夕方には仕事に出かけてしまい一人になった僕は夕食を食べに部屋の前の坂道を登り始めた。足下の視線をふと坂の上に上げた先には彼女が両手に紙袋を抱えて降りてくる姿が見えた。
「来るって言ったでしょ」
僕は彼女の手から荷物を持つと一緒に部屋まで運んだ。言葉はそんなに多くは出なかったと思う。夕食は矢数さんのところで食べたのかな。その辺は曖昧な記憶しか無かったけれど、部屋に戻った後は二人でじっと抱き合って居た。居候がベッドを占領していた為、僕らは押入の中で抱き合っていた。それは何時しかセックスへと変わり、飽きる事無く僕らは何度も交わり続けた。そして気がついた時は、僕の手は彼女のお腹をさすっていた。彼女は泣いていた。
翌朝、東京は晴れていた。
彼女が実家へと戻るために着替えを始めると、居候の息子は不思議そうな顔をして彼女を見ていた。着替えを終えた彼女を送って家を出ようとするとチビが連れてけと言わんばかりに抱きついてくる。それを無理に置いていこうとしたのだが彼女の「カワイソウデショ。」の言葉に見送りに連れて行く事にした。
僕は電車の中でチビを抱きながら、彼女は子供を堕す為に田舎に帰るのに、俺は何をしているんだと自問をしていた。
「何、怖い顔しているの」
「いや別に」
僕には彼女にかけるべき言葉は見つからなかった。二人とも語る言葉を無くした様に黙々と新幹線のホームを目指した。
ホームにはすでに新幹線が到着していた。彼女は時計を気にしながら、何か言いたそうに僕の方を見るのだが、言いたい事が一杯あっても何も言えなかったのは僕も同じだった。新幹線を見てニコニコしているチビを見て笑うのが精一杯だった。そして発車のベルが鳴り響き彼女は乗車口へと立ち、手を振った。チビは手を振るのだけど、僕には手を振ることがまだ出来なかった。扉が閉まり新幹線が動き始めたところで僕はやっと手を振る事が出来た。彼女はまだ手を振り続けていた。
僕の前から彼女が消え、居候もパトロンを見つけ部屋から出ていった。彼女からは何度となく手紙が来ていたが、堕胎の手術の後は僕を憎む言葉が多くなって来ていた。彼女が僕を恨むのは当然の事だろう。僕は彼女に何もしてやれなかったし、何もしなかったのだから。しかし、それも半年余りで途絶えた。僕は再び、水商売に返り咲き、以前はそれほど飲まなかった酒を浴びるように飲むようになった。思えば僕がこうして今のように飲み始めたきっかけはここにあったのかも知れない。
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