人生朝露

人生朝露

仏教と荘子。

荘子です。
しつこく荘子について・・・

の前に、今日は老子について。
老子。
「老荘思想」として、荘子のお師匠さんとも言える老子は、荘子よりも出自のはっきりしない人でして、紀元前5世紀くらいなのかなぁと。孔子と会ったというかいう話もあるし、荘子も老子の言葉を引用しているし・・いろいろ言われておりますがどうも分かりません。一説には荘子が先で、後に架空の人物の書いたものが「老子」というものではないか、という本も読んだ記憶がございます。

さて、老子という人の考えも無為自然です。「老子」という書物も、あるがまま。なすがまま。きゅうりがパパで、僕、元気。一言では言い表せない抽象的、形而上学のお話なんですが、やたらと腑に落ちるというおかしな人です。最終的には「自然に帰り、赤子になれ」みたいなものでして、善悪の判断や貴賎の差や社会的なあらゆる判断から離れて、自然と一体になれということなんでしょうが・・。

分かりやすく老子の考えの一端を表しているのが、ドラゴンボールの主人公で、
アクマイト光線が・・効かない!
悟空は、アクマイト光線を浴びても死なないでしょ?

あんだけ暴力的なのに「悪」ではない。かといって「善」でもない。
ただ、自分の思うことを素直にやっているだけ。自分の心情に過不足が無いだけ。これが、老子の考えの一つの境地だと思います。悟空の最大の技は自然と一体になる「元気玉」でしょ?(そもそも、「元気」という言葉の語源は、道教の「万物の根本から生じる気」で「元気」なんだけど、ほとんどの読者は「元気玉」というのは「元気いっぱいの玉」と思っているでしょうな。鳥山明の作品の根底にある老荘思想をどれだけの人が読み込めているでしょうや?)

で、この老子が中国の宗教「道教」の親玉になっていくわけですが、実は老荘思想というヤツが宗教化していく過程で、インドから「仏教」という新しい教えが入ってきます。道教という中国型の宗教がまだできあがってもいない段階で、仏教が入るわけです。最初は対立して、双方とも弾圧を受けたりするんですが、その途中で「老子化胡経」なるお経ができます。

この「老子化胡経」なるお経。体裁はお経なんですが、実は「老子がインドに渡って説いた教えが仏教である」というもので、まぁ、日本で言うと「青森のキリストの墓」か「義経=ジンギスカン伝説」「竹内文書」みたいなもんなんですが(笑)、老荘思想というのが、仏教と親和性が高かったことの一つの表れでしょう。ちなみに、中国のお坊さんの側も負けじと「孔子と顔回と老子はインド人だった」なんていうお経を書いて対抗したそうです(笑)。この「化胡経」なるお経は唐の時代に大弾圧を受けたようです。そういや、インド人は今でも「モーゼもキリストもムハンマドも、我らがヴィシュヌ神の化身で、ヴィシュヌ神が変身して彼らに教えを説いてやっただけだ。」なんて言うらしいです。

多神教は無敵だ。

さて、再び荘子。

荘子です。

顔回曰「回益矣。」仲尼曰「何謂也?」曰「回忘仁義矣。」曰「可矣、猶未也」他日復見曰「回益矣。」曰「何謂也?」曰「回忘礼楽矣。」曰「可矣,猶未也。」他日復見、曰「回益矣。」曰「何謂也?」曰「回坐忘矣。」仲尼蹴然曰「何謂坐忘?」顔回曰「堕肢體、黜聡明、離形去知、同於大通、此謂坐忘。」仲尼曰「同則無好也、化則無常也。而果其賢乎。丘也請従而後也。」(「荘子」大宗師篇)

→顔回が「お師匠様、私は分かりました」と言った。「何をかね?」と孔子。顔回「仁義を私は忘れたのです」孔子「いいだろう、しかし、まだまだだ」
 後日、再び孔子が顔回に会って「お師匠様、私はは分かりました」と顔回。孔子「何をかね?」顔回「私は礼と音楽を忘れることができたのです」孔子「いいだろう、しかし、まだまだだ」
 また後日「お師匠様、私は分かりました」。孔子「何をかね?」顔回「坐忘というものを知ったのです」
 孔子ははっとして、「坐忘というのは何かね?」顔回曰く「手足を楽にして、知識を空にして、一切の知覚から離れて、大道と同化します。これを坐忘といいます。」
 孔子は、「大道と同じになれば物事の好き嫌いで判断することがなくなる。無常の世界で思い悩むこともなくなる。顔回よ、そなたは賢者だ。私はお前から教えを請わなくてはならなくなった。」

・・・これ、仏教の存在を知るはずのない「荘子」にあるんですけど、明らかに仏教的でしょ?「坐忘」というのは、禅の精神ですな。

驚いたんだけど、同じ大宗師篇には、

『古之真人、其寝不夢、其覚無憂、其食不甘、其息深深。真人之息以踵,衆人之息以喉。屈服者、其隘言若哇。其嗜欲深者、其天機浅。』

→古の真人は、眠っているときに夢を見ず、覚めているときに憂いもない。物を食べても甘いと感じず、呼吸は深々としている。

とあります。これは、無眼耳鼻舌身意、無色声香味触法。じゃないですか?般若心経じゃないですか!

まだまだ、続きます。


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