人生朝露

人生朝露

境地とZoneと日本の弓術。


ところがどっこい。
荘子です。

マトリックス。
『MATRIX』と、荘子ですが、かなり脱線します。

参照:当ブログ 荘子と進化論 その48。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/diary/201005010000/

同49。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/diary/201005030000/

D.T.Suzuki
今回は鈴木大拙さんで。

『われらの間に「境涯」とか「境地」とか、「心境」とかいう成語がある。これを英訳しようと思って、ずいぶん考えたり、調べたりした。が、どうも適当の訳語が見つからぬ。ステート・オブ・マインド、またはメンタル・アチチュード、または、ゼネラル・アッフェクチーブ・トーン、またはサイキック・アトモスフィアなどとも思ったが、どうもうまくあてはまらん気がする。つまり、自己と客観界の間になんら隙もできず、したがって軋轢の無い心境、これを「一般世界に対し、自己に対し、日々平和な心持でいること」にみて、差し支えないようだが、それが自分らの「境涯」というところに、函蓋相応するには、まだ多少の隔たりのあるを覚える。これはどこの言葉にでもあるところで、べつに不思議はない。が、東西文化の間には、なにやら根源的に相違しているものがある。』(『東洋「哲学」について』鈴木大拙選集11より。)

1961年の段階の鈴木大拙さんのエッセイからの抜粋なんですが、今、あれを英語ではどう表現するのか・・と思っていたら、意外な人が教えてくれました。

----(以下引用)---------------------------
“世界新”58!遼くん大逆転で記録的V

男子ゴルフツアーの中日クラウンズ最終日は2日、愛知・名古屋ゴルフ倶楽部和合コース(6545ヤード、パー70)で行われ、石川遼(18=パナソニック)が驚異の“世界新”で今季初優勝を飾った。6打差の18位から出て12バーディー、ノーボギーの58をマーク。通算13アンダーとして2位に5打差をつける大逆転劇で、昨年10月のコカ・コーラ東海クラシック以来、通算7勝目を挙げた。58ストロークは国内ツアー最少(ツアー制度施行の73年以降)で、世界の主要ツアーでも最少記録。前半のハーフ28と12バーディーは国内ツアータイ記録、史上最年少&最速での生涯獲得賞金3億円突破と、記録ずくめの優勝となった。
 驚異の18歳がまたしても常識を超えた。硬く狭い砲台グリーン、圧迫感のある林…。屈指の難コース・和合で石川はゴルファーの夢、50台をマークした。6打のビハインドから5打差をつけての圧勝。18歳にして生涯獲得賞金は3億円を超えた。石川自身も「初優勝したマンシング以来の不思議な気持ち。夢の中でプレーをしているような感じだった。未知の世界に一歩踏み入れることができた」と新たなステージへの突入を感じていた。
 この時点で、常識にとらわれる他の選手はまだ高をくくっていた。4組後ろの藤田は7番でボードを見て「優勝争いに加わってくると思ったけど、和合は13番から難しいから」と我慢比べを想定した。しかし、その後半で石川はさらに加速し、14番から3連続バーディー。ホールを重ねるごとにギャラリーは増え、異様なムードが漂った。「これが“ゾーン”というものかと思った。バーディーのたびに落ち着いた」。想像をはるかに超えたチャージに、ついていける者などいなかった。
(中略)
 07年世界ジュニアに出場した際、宮里藍のコーチでもあるピア・ニールソン氏らが唱える「ビジョン54」の本を読み、感銘を受けた。パー72の18ホールすべてでバーディーを取れば届く54の数字を、今では自らのボールに印刷している。究極の目標に、この日はあと4打と近づいた。「どのスポーツでも世界新は感動する。その瞬間を見るだけでも幸せですけど、実際僕ができてうれしい」。これまでも数々の記録を打ち立ててきた。次は一体どんな夢をかなえるのか。無限の可能性を感じさせる「58」だった。(5月3日 スポーツニッポン)
---------------(引用終わり)------

>「初優勝したマンシング以来の不思議な気持ち。夢の中でプレーをしているような感じだった。未知の世界に一歩踏み入れることができた」
>「これが“ゾーン”というものかと思った。バーディーのたびに落ち着いた」

これ、ですね。

Zen Golf
Zen golfにもありますね。

>By combining classic insights and stories from Zen tradition, Zen Golf helps eliminate the mental distractions that routinely cause poor shots and loss of concentration, allowing golfers to feel in “the zone” that professionals have learned to master.

“in the zone"です。達人の境地、無心の境地。「明鏡止水」ですよ。これをまた、わざわざ日本人は英訳して使う羽目になるわけですね。我々は地球何周分のバカなんでしょう。

この“in the zone"のさらに極まった表現が、「アニマトリックス(THE ANIMATRIX)」にはあるんですよ。
アニマトリックス。

http://www.megavideo.com/?v=LXDOS7BI
↑↑ここまでくると悟りに近いですね。↑↑

そういや、こんな本がありました。
ゾーン  相場心理学入門
>恐怖心ゼロ、悩みゼロで、結果は気にせず、淡々と直感的に行動し、反応し、ただその瞬間に「するだけ」の境地、つまり、「ゾーン」に達した者が勝つ投資家になる!さて、その方法とは? 究極の相場心理を伝授する!
>しかし自分自身についてよく知っている投資家はどれだけいるだろうか?(ゾーン 相場心理学入門 マーク・ダグラス著)

確かに言われてみれば荘子っぽいです。まるで使い道が違うけど。

中島敦 名人伝。
>紀昌は根気よく、毛髪の先にぶら下った有吻類・催痒性の小節足動物を見続けた。その虱も何十匹となく取換えられて行く中に、早くも三年の月日が流れた。ある日ふと気が付くと、窓の虱が馬のような大きさに見えていた。占めたと、紀昌は膝を打ち、表へ出る。彼は我が目を疑った。人は高塔であった。馬は山であった。豚は丘のごとく、鶏は城楼と見える。雀躍して家にとって返した紀昌は、再び窓際の虱に立向い、燕角の弧に朔蓬のをつがえてこれを射れば、矢は見事に虱の心の臓を貫いて、しかも虱を繋いだ毛さえ断れぬ。
>奥儀伝授が始まってから十日の後、試みに紀昌が百歩を隔てて柳葉を射るに、既に百発百中である。二十日の後、いっぱいに水を湛えた盃を右肱の上に載せて剛弓を引くに、狙いに狂いの無いのはもとより、杯中の水も微動だにしない。(中島敦 『名人伝』より)


『日本の弓術』 オイゲン・ヘリデル
「弓禅一味」という言葉もありますが、ドイツ人オイゲン・ヘリゲルの『日本の弓術』などの著作で、日本の武道と禅についての関係にも触れています。欧米人の禅や老荘への理解と興味というのは、他の分野に比べて明らかに深いんですよね。日本の方が確実に失っているわけです。

--------(以下引用)---------------------------
 弓道初の国際大会となる第1回世界弓道大会がこのほど、東京・明治神宮内の中央道場で開かれた。国別対抗戦の団体と個人戦が行われ、団体戦には18カ国・地域が出場。日本優位の前評判を覆し、フランスが初代王者の座に就いた。
 海外で弓道は、欧米を中心に人気を集めている。日本滞在中に弓道に触れた外国人や海外勤務の日本人愛好者が普及に努め、4年前に「国際弓道連盟」が設立された。現在、日本を含む17カ国が加盟している。
 (中略)
18歳の時に見た映画「七人の侍」で弓矢に魅せられたというデュポンは「(心技体の)三位一体の追求が弓道にはある」と魅力を話す。ベルタンは空手などの経験があり、「もっと精神力を高めようと思って弓道を始めた」と言う。スタルデールは群馬県太田市に在住していた94年に弓道を始め、「作法は美しい」と話した。
 一方、迎え撃つ立場だった日本は、まさかの予選敗退。全日本弓道連盟の岡崎広志・常務理事は「海外で弓道はスポーツではなく、精神鍛錬として取り入れられている。日本には『手本を見せないといけない』などの邪念があったのではないか。海外勢から逆に弓道を教えられた気がする」と話していた。
 世界大会は4年に1度、開かれる予定。【百留康隆】
-------------------------(引用終わり)---------------

参照:世界弓道:仏が初代王者「七人の侍」に魅せられ(毎日新聞)
http://mainichi.jp/enta/cinema/news/20100511k0000e050058000c.html

クロサワやオヅやキタノが世界で何故愛されているかも分からずに、いきなり誇りだの目先の賞だの雑念ばかり(泣)。

Zhuangzi
「以瓦注者巧、以鈎注者憚、以黄金注者昏。其巧一也、而有所矜。則重外也。凡外重者内拙。」(『荘子』達生第十九)
→弓で賭け事をやるとき、ガラクタを賭けているならば上手く当たり、帯鉤を賭けていると当たりにくくなる。ましてや、黄金を賭けるとなると、周りすら見えなくなっているだろう。技量が同じであっても、賭けたものの価値に気を取られるからだ。外のことに気を取られて内のことが疎かになってしまうのだ。

志村喬 『七人の侍』より。
イマヤ、モッケイタリエズ。

今日はこの辺で。


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