程なくしてママがパートから帰ってきた。
「ただいま」
「ヤバ、もうこんな時間。お米研いでないよ」
夏休み中、ママより早く帰宅した日は、夕飯のお米は私が研いで炊飯器にセットする約束だ。なのに今日は、おっさんと話していてすっかり忘れていた。
「藍香、帰ってるんでしょー」
「はーい、ママ、お帰りー。今、行くからー」
私は焦って立ち上がり、おっさんに向かって言った。
「ちょっと着替えるから、あっち向いてて」
「はいはい。ガキの着替えなんぞ興味ないがな。まぁ、ワシは紳士だし、エチケットはよう心得とる」
おっさんはくるりと背を向けた。私は急いで制服を脱ぐと、素早くTシャツと短パンに着替えた。
「もう、ええか?」
「うん」
「ほな、行こか」
のっそりとおっさんが立ち上がった。
「え、どこに?」
「決まっとるやないか、おかんのとこ行くんやろ?」
「何で? ついて来なくていいし」
「どうせ、お前のおかんにも、ワシは見えへんのやからええやろ」
「そういう問題じゃなくて、何て言うか、付いて来る理由もないわけだから、もう付いて来ないで欲しいの」
おっさんは眉間に皺を寄せて険しい顔をした。
「それはちゃうで。理由がないわけやない。どんなことにも必ず理由があるんや。ただそれが何なのか、今は分からないだけのこっちゃ」
「はい、はい、分かった、分かった。じゃ、ここでその理由考えといて」
私のおざなりな返事におっさんは不服そうではあったけれど、「うーむ」とだけ返事をしてまたベッドに座り込んだ。良かった、ここは素直に言うことを聞いてくれて。
「じゃ、そういうことで」
おっさんがまた何か言い出さないうちに、さっさと部屋を出た。
今日は部活が長引いてさっき帰ってきたばかりだと、ママに嘘の言い訳をして、早速お米を研ぎ、一緒に夕飯の支度を始めた。パパは飲み会で遅くなるというので、そのままママと二人で出来立ての夕飯を食べた。
おっさんのこと、ママに話そうか迷ったけれど、余計な心配をかけたくないので黙っておくことにした。ママにもおっさんが見えればいいけれど、もし見えなかったら私がおかしなこと言い出したとか、変なものが見えているらしいとか、心配するに決まっているもの。
正直、私自身も自分が大丈夫なのか自信はなかった。こうしておっさんから離れてみると、やっぱり私がおかしいのかなと思ったりする。大好きな茄子と豚肉の味噌炒めを食べながらも気はそぞろだった。
「そう言えば、野々口さんとこの翔太君」
ふいにママの口から出たその名前に、ギクッとした。
「今日ね、ウチの店の前通ったんだけど、可愛い女の子と一緒だった。あの子、翔太君の彼女なの?」
「さぁ・・・知らないけど」
彼女だよ、とは言えなかった。ママが翔太に彼女がいることを、翔太のママに告げ口したら困る。翔太のママも知っているならいいけれど、もし知らなかったらバラしたのは私だってことになってしまう。
それも心配だったけれど、その子は彼女だよって、私が言えないのはそれだけではなかった。そう言ってしまえば私もそれを認めたことになってしまうから。
焼きもちなんかじゃない。でも何か面白くない。
「明るい感じの子で、二人とも楽しそうだった」
何気ないママの言葉で、胸の中に真っ黒なもやもやが広がっていく。
「へー、そうなんだ。ご馳走様。お風呂入るね」
できるだけ関心なさそうな顔をして、食卓を後にした。 (続く)
※この作品はフィクションです。登場人物や団体等、実在するものとは一切関係はありません。
都市伝説的なものをヒントにしてはいますが、それらとも関係ありません。
ちなみに私は小さいおっさんなんて見たことないし、実際にいるともいないとも思っていません。
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ご訪問、ありがとうございました^^
映画はDVDレンタルかWOWOW等で週3本くらい観ます
といってもゆったり座って観ることはなくて
ほとんど洗濯物畳みながらとか、食器を洗いながら。
なのでちょっとずつ観ては、続きはまた家事するときにといった感じw
なかなか進みませんwww
映画は好きですが、映画館で観ることはほとんどありません。
だって、映画って何気にお高いんだものw
あっても1年に1~2回くらいかな?
家族や友人がどうしても観たいから行こう!とならないと
家計を預かる主婦としてはなかなかね~ (^^;)
息子と息子の友だちが観たいと言った「宇宙兄弟」に
保護者として付いて行ったのが、映画館で一番最近観たものかなー
月面での「日の出」ならぬ「地球の出」のシーンがきれいだったなー
本当はあの大きなスクリーンで映画観たいです。
でも、映画って何気にお高いんだものww
自分が観たいものは「レンタルになってからでいいやー」ってなる。
そんなことを言ってたら地元にある唯一のシネ・コンの閉館が決定!そこがなくなると車で1~2時間かかるところまで行かなきゃシネ・コンはない! ><;
マジかよー!!!!!
って、思ってたら、閉館したシネ・コンを居抜きで買ってくれるところがあって2か月くらいしたらその会社の経営で再びシネ・コンとして営業することに!
やったーーーーー!!!!!
って、思ったけど・・・そこにもそんなには行かないよなー
だって、映画って何気にお高いんだものwww
それではまた次回、お時間がありましたら、お付き合いくださいね。(*^^)v
連載小説 緑のおっさん 6 October 12, 2013 コメント(6)
連載小説 緑のおっさん 5 October 7, 2013 コメント(7)
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