ヨカッタ探し

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December 4, 2005
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カテゴリ: 読書ろぐ
荻原浩『明日の記憶』


来年、映画化されるんですよね。
3日の夜から今朝にかけて、一息に読んでしまった。
おかげで今日は昼過ぎに起きました。

若年性アルツハイマーを扱った作品です。
読みながらずっと、頭にあったのは、
人は何によって存在し得るのか??という疑問でした。

「わたし」が「わたし」足り得るのは、
「わたし」が「わたし」の歩いてきた道を、

それとも、「誰か」が「わたし」を覚えているからなのか?
「わたし」の記憶が保てなくなったら、
それはもう、「わたし」ではない存在なのだろうか?

癌などの重篤な病気とはまた少し異なった意味で、
精神の病を人が怖れるのは、「頭が正常に機能しない」ことは、
例えば、体のほかの一部が機能しないことよりも、
はるかに自分の存在を凌駕するものだから、なのかもしれません。

この物語は、アルツハイマー病と診断される主人公が
語り手となっています。
それだけに、
「明日の自分がまだ自分でいられるか?」

主人公は趣味である陶芸を通して、ある意味で、その不安を
乗り越えたようにも思えるラスト。
その傍に寄り添う人の思いを想像すると、静かだけれど、
とても切ないシーンでした…。

物語とは全く関係ないのですが、読んでいて腹立たしかったこと。

挟まれた構成になっています。
徐々に、繰り返しや誤字脱字が多くなる日記を入れることで、
主人公の病の進行を示しているのだと思うのですが…
この本、図書館で借りてきたら、あろうことか、その日記中の誤字脱字を
鉛筆で訂正してあるんですよ!(-_-#)
誰だよ、これやった人ーーー!!
これをただの誤植と思ったんでしょーかっ。
読みが浅いとか、そういうレベルじゃなくて、
図書館の本という公共物に平気で落書きできる神経が信じられない。
残っている字から見ても、大人…それも年配の方じゃないかと、
思うんですよねー。
間違いを指摘してやるぞ、ぐらいの勢いで執拗に訂正が続く…。
本人は落書きした、って意識がないんだろうな。
後の人のために、いいことしたくらいに思ってたりして。
そういう視界の狭さ、自己中心的な考えって、案外、誰もが
陥りがちな罠、のような気がします。
想像してきたら、うすら寒くなってきました…。
わたしにできるのは、鉛筆書きのこの書き込みを消して
何事もなかったように、返却する…くらいしかないのだという現実にも。





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最終更新日  December 4, 2005 03:57:56 PM
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Re:荻原浩『明日の記憶』(12/04)  
TBありがとうございました。

図書館の本にらくがきって許せませんね!!
私の悲しい経験は鼻毛がページいっぱいに貼り付けられてたことです。もう気を失いそうになりましたよ。(ーー;)
(December 4, 2005 11:34:44 PM)

くりむーぶ389さん、悶絶しますね…  
anna2号  さん
こんにちは♪
コメ&TBありがとうございます。

>図書館の本にらくがきって許せませんね!!
>私の悲しい経験は鼻毛がページいっぱいに貼り付けられてたことです。もう気を失いそうになりましたよ。(ーー;)

そ、それはもう…人間として許せません(>_<)
図書館の本じゃなくても、やらないで欲しいです。
もし借りてきて、そんなんだったら、ショックだー!!
(December 5, 2005 11:38:09 AM)

Re:荻原浩『明日の記憶』(12/04)  
123mao  さん
想像していたよりも淡々と読み進めてしまったのですが、ラストでガツンとやられました。焦点を絞られた【本人】に救いがある分、その周りにいる人のことを想像すると…涙が止まりませんでした。
大事な人の存在、自分の存在、がわからなくなるというのは、これ以上ないくらいの大変な恐怖です。

つい最近『私の頭の中の消しゴム』を観たばかり。
【記憶】を保てるのは本当に幸せなんだなぁと。
蓄積する為に精一杯生きたいなぁと思いました。
(December 6, 2005 12:07:22 AM)

123maoさん、確かに…  
anna2号  さん
こんばんは。

>【本人】に救いがある分、その周りにいる人のことを想像すると…涙が止まりませんでした。
>大事な人の存在、自分の存在、がわからなくなるというのは、これ以上ないくらいの大変な恐怖です。

どっちがつらいんでしょうね…
忘れてしまうのと、忘れられてしまうの。
どっちもつらいのは、間違いないですが。
ラストまで、不安と闘う主人公に感情移入してた分、
一気にきてしまいました。

>つい最近『私の頭の中の消しゴム』を観たばかり。
>【記憶】を保てるのは本当に幸せなんだなぁと。

友人が「今年いちばん泣いた映画ーー!ぜひ観て!」と
大絶賛していた作品です。
切なすぎて、観る勇気がないのですが…。
当たり前のように明日も記憶があることを、幸せに思います。 (December 6, 2005 12:49:42 AM)

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