プレリュード

プレリュード

2004年11月30日
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カテゴリ: クラシック音楽
今日のクラシック音楽

1954年11月30日は、大指揮者ウイルヘルム・フルトヴェングラーの命日で、今年は没後50年という年にあたります。 そこで彼の遺した膨大な演奏記録やスタジオ録音などの中から1951年の戦後復興に立ち上がったドイツ国民が、待ちに待った「バイロイト音楽祭」の再開時のオープニングコンサートでのフルトヴェングラー指揮の演奏会ライブ録音盤を採り上げることにしました。

1960年(中学2年生)にクリスマスプレゼントに買ってもらったトスカニーニの52年録音盤のLPが「第9」との初めてのめぐり合いでした。 それを高校2年生まで聴いていたのですが、「第9」そのものへの感動でした。

その後、雑誌「レコード藝術」でフルトヴェングラーのこのバイロイト音楽祭のLP盤を知り、聴きたくてうずうずしていたのですが、当時このLPはトスカニーニのLP1枚に較べて、カートンボックス入り2枚組みで売り出されており4千円でしたので、高嶺の花でした。 高校2年生の修学旅行で親戚や親から貰って旅行の小遣いを遣わずに、念願のこの2枚組みLPを買いました。

演奏を聴いた時の感動は今でも覚えています。 トスカニーニのきびきびした運びと対照的な、遅めのテンポで変幻自在とも表現できるフルトヴェングラーの演奏にすっかり魅せられて、その後彼のほかのレコード(ワーグナー、ブラームス、その他の音楽)を数多く聴くきっかけになったLPでした。

テンポを自在に操り、曲の新しい側面を随分と見せられてきました。 休止符でさえ音楽を物語っているのです。 このバイロイト祭ライブはその典型で、のちに色々な指揮者の演奏を聴いていますが、これほどに強烈なインパクトを与えてくれた演奏は後にも先にもなく、彼の真骨頂の即席性が遺憾なく発揮され、深遠、荘厳さを深く滲ませ、テンポを自在に動かしながら聴かせていく、まさに第9演奏における最高の形で残されている演奏だと思います。 それが一発勝負のライブ録音というところに彼の偉大さ、この録音の貴重さを物語っています。

たった1枚だけ第9の演奏を選べと言われると、躊躇なくこのバイロイト祭ライブ盤を選ぶでしょう。 不滅の演奏、名盤とはこういうものだと思えてならない「人類の遺産」だと思います。

この時の演奏会を客席で聴いていた日本人がいます(フィクションとありますから、そうでないかも知れません)。 雑誌「レコード藝術」の今月号(12月号)にそのことを投稿されています。 雑誌社(音楽の友社)及びご本人に無断で転載致しますことをどうかご容赦下さい。 それほどにこの演奏を的確に表現している言葉だと思います。



バイロイトの祝祭歌劇場は木造。 1800人を収容する格好の大きさだ。 ホワイエは、世界各国かた集まった聴衆でいっぱいだ。 なかに日本人らしき聴衆も何人かいた。

いよいよ開演。 固唾を呑んで見守る私たちの前に、フルトヴェングラーがついに姿を現した。 かつかつと驚くほど高い足音だ。 

拍手の鳴り終わるのを待って、フルトヴェングラーの右手が、ゆらゆらと動くや、交響曲は荘重に始まった。 それは初め、はるか遠くに稲妻の走るかと見えたが、たちまち急接近し、突如として頭上に、巨大な雷鳴が炸裂するかのような衝撃である。 その冒頭からして、これまでいくつも聴いてきた「第9」とはまったく次元が違う。 私たちは一気に、忘我、興奮のるつぼの中に投げ込まれた。

彼の音楽は常に前傾姿勢。 しかもテンポは悠然としているのに、リズムが鮮烈だ。 緊張感が失われることは一瞬たりともない。 そして極大のクレッシェンドと、恐るべき長い間に、私は思わず大声で叫び出したい衝動に駆られた。

そうだ。 これは演奏会であるが、同時に敬虔な信仰の世界だ。 聴衆全てが、目の前に現出される"音の奇跡と啓示"に陶酔しきっているのだ。 いやいやその陶酔は聴衆だけではない。 歌手は歌いながら、自らの名唱に聴き惚れている。 また奏者は演奏しながら、彼ら自身の名演奏に感動しきっているのがはっきりわかる。

そして最後の疾風怒濤のクライマックス。 私たちは立ち上がって、涙を流しながら猛烈な拍手を送った。 ベートーベンは交響曲を9番目まで作っていてくれた。 フルトヴェングラーはよくぞ空前絶後の名演奏を聴かせてくれた。 私たちは永遠に消えることのない幸福感で、胸がいっぱいだった。 万来の拍手はいつまでも止もうとしない。 そうだ、この拍手は、この半世紀、一度たりとも鳴り止んだことがなかった
』          
京都市 某男性 70歳

永遠の名盤 

11/29
(東芝EMI TOCE3725 1951年バイロイト音楽祭ライブ録音)

フルトヴェングラー指揮 バイロイト祝祭管弦楽団・合唱団 エリザベート・シュワルツコップ(ソプラノ)、ハンス・ポップ(テノール)、エリザベー・ヘンゲン(コントラルト)、オットー・エーデルマン(バス)

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最終更新日  2004年11月30日 17時34分39秒
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