紀 健幸さん
> 初めて聞きました。
-----

いつもコメントをいただき感謝致しております。 ただコメントがあまりにも短いので、音楽についてなのか、花についてなのかわからないことが過去にもありました。 恐れ入りますが主語・述語を書いてコメントいただければ幸甚です。 お願い致します。
(2007年05月19日 00時36分36秒)

プレリュード

プレリュード

2007年05月18日
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カテゴリ: クラシック音楽
今日のクラシック音楽 』   マーラー作曲 交響曲第9番ニ長調

今日はグスタフ・マーラー(1860-1911)の命日。  マーラーの作品で最も好きなのは交響曲「大地の歌」。 それに「歌曲集」です。 しかしこれらの曲はすでに日記に書いていますので、今日はまだ書いていない曲で、彼の死と関係ある交響曲第9番を選びました。

マーラーの作品は私にとって「負の世界」を描いたのが多くて、どうにも手放しで好きになれない作曲家の一人で、そうかと言って無視できる人、作品ばかりではありません。 どうも始末に終えない一人であることは事実です。

日記を書くときは、大概3日前くらいからテーマを決めておいて、前日に草稿を完成させておくのですが、今日の記事はそういうわけにはいきません。 そう「負の世界」。つまり「死」と隣り合わせの音楽が多いからです。 音楽を聴いていても交響曲では第5番くらいまでは「肯定的」な主観のある作品なのですが、それ以後の作品は何か人生を否定的に考えた作品という先入観があります。

今日の交響曲第9番も彼の死への恐れが強いでしょうか暗い曲なのですが、聴き終わると不思議な感動に誘われてしまっている音楽です。

この曲は1909年~1910年に書かれており、彼の死の前年に完成しています。 この曲の前の交響曲が「大地の歌」でした。 9番目にあたるシンフォニーですが、かれはわざわざこの「大地の歌」に9番という番号を付けていません。 それは彼の先輩たち(ベートーベン、シューベルト、ブルックナー、ドヴォルザーク)の交響曲が9曲で生涯を閉じており、神経質なマーラーは自分も「大地の歌」で死ぬのではないかという観念にとらわれて、わざわざ番号を付することを嫌って単なる「大地の歌」と呼んだというのは、あまりにも有名なエピソードとして残っています。

この曲を書いた1910ごろはマーラーは非常に多忙な時期でした。 1908年からニューヨーク・メトロポリタン歌劇場の指揮者を務め、同時にヨーロッパでも指揮者として君臨しており、大西洋を挟んでの指揮活動に励んでいました。 彼の一徹な性格が災いしてウイーン国立歌劇場の指揮者を辞任せざるを得ないという時期のあとでした。

体力的に相当な疲れもあったのでしょう。 しかも医師から「心臓病」を宣告されており、悩んでいたのでしょう。 1907年7月には愛娘マリアを亡くす不幸もありました。 精神状態も不安定であったと言われています。自身の病気、家族の不幸が重なり、精神的な疲労が重なる中で書かれた第9番のシンフォニーは、必定「死と向かい合う」姿勢になったのだと思います。



そういう背景で書かれたこの曲は1910年4月1日に完成されています。 1907年以来「死の影」とと共に生きて、それを音楽に表したのがこの第9番です。

しかし曲の完成があっても、初演は彼の死後1年余り経って、直弟子ブルーノ・ワルターによって1912年6月26日にウイーンで初演されています。 マーラーは結局9番目の交響曲となった「大地の歌」を聴いたのみで、この「第9番」の演奏を聴くことなく51歳の生涯を閉じています。

この曲の形式は従来の交響曲形式が逸脱した、マーラー独自の音楽観で貫かれています。 第1楽章と第4楽章には遅いテンポの曲が置かれており、ソナタ形式も自由に拡大されて書かれています。

第1楽章 の序奏ではホルン、ハープ、低弦楽器などでこの楽章の根幹となるリズムが刻まれてのち、ヴァイオリンで美しい旋律がおずおずとした風情で現われます。 これがこの楽章の主題の根幹を成しており、何度も新しい衣装をまとったかのように表れます。 展開部では音量も大きくなりますが、やがて主要旋律が何度も繰り返されて静かにこの楽章を終わります。 全曲中最も長い楽章で、ここだけでカラヤン指揮のベートーベンの交響曲第5番全曲がすっぽりと入ってしまいます。

第2楽章 はレントラー風の舞曲で、3種のレントラー主題をもったスケルツォ形式の音楽です。

第3楽章 は、「ブルレスケ」風のマーラー特有の歪みのある、野性的で、反抗的な、グロテスクな雰囲気の楽章です。 ユーモラスな情感も伝えてはいますが、やはりマーラー特有のゆがみのある音楽が特徴です。

第4楽章 は、ブルーノ・ワルターの言葉によれば「マーラーは心静かに世界に別れを告げている」音楽で、悲哀のこもった流れるような旋律で始まります。 この楽章が白眉で、透明度をいよいよ増して、彼岸のかなたへと旅立っていくような情感のこもった音楽が展開していきます。

この楽章で聴き手は明確にマーラーの意図を知ることができます。 「死の世界」への旅立ちが美しく浄化された感動的な音楽が流れ、ブルーノ・ワルターの「紺碧の大空に溶け込んでゆく雲のように」、やがて静かに曲を閉じていきます。

そしてここに後期ドイツ・ロマン派音楽の幕が閉じられ終焉に向かうのです。

グスタフ・マーラーは1911年の今日(5月18日)、51歳の生涯を閉じています。

愛聴盤 



TOCE13423 1964年録音
(EMI原盤 東芝EMI TOCE13423 1964年録音)

ベルフィルの総意で実現した録音。 「メロウ・サウンド」と呼ばれるバルビローニ特有の温かいサウンドに包まれた稀有なマーラー演奏。 イギリスにWarm Beerという飲み方があります。陶器のビールカップを温めて、冷たいビールを注いで飲むのですが、そのビールの温かい味と同じような、ヒューマンな味の伝説的名演。

(2) ブルーノ・ワルター指揮 コロンビア交響楽団

SRCR2337 1961年録音
(ソニー・クラシカル SRCR2337 1961年録音)

ワルター特有の「歌」にあふれた、テンポを遅くしてじっくりと歌わせた最晩年の名演。



POCG20001 1984年録音
(グラモフォン原盤 ユニヴァーサル・ミュージック 1984年ライブ録音)

徹底したカラヤン美学(オーケストラを磨き上げて、その華麗な技術を塗りたくった)で貫かれたある意味では美しい演奏。

(4) バーンスタイン指揮 ベルリンフィルハーモニー管弦楽団

435378 1979年録音
(グラモフォン 435378 1979年ライブ録音 海外盤)

たった一度のバーンスタインとBPOの演奏。 凄まじい情念が噴き出した生命力豊かな、一期一会の名演。 カラヤンがバーンスタインがBPOを振るのを嫌ったというエピソードが残っているが、この演奏を聴くとベルリンの人たちはいかに大きな宝を逃したがわかる演奏。

(5) ヴァーツラフ・ノイマン指揮 チェコフィルハーモニー

OVCL00268 1995年録音
(EXTON OVCL00268 1995年録音)

ノイマンの遺言。 この曲を録音して2週間後に他界したノイマン畢生の名演。 実に丁寧に曲を掘り起こしており、曲の隅々まで照らしている名演盤


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今日の音楽カレンダー

1897年 初演 デュカス 交響詩「魔法使いの弟子」
1909年 誕生 イサーク・アルベニス(作曲家)
1911年 没  グスタフ・マーラー(作曲家)

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ともの『 今日の一花 』         ヒメツルソバ



5/18撮影地 大阪府堺市緑化センター






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最終更新日  2007年05月18日 02時35分14秒
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Re:マーラー 交響曲第9番/ヒメツルソバ(05/18)  
紀 健幸  さん
 初めて聞きました。 (2007年05月18日 17時06分37秒)

Re:マーラー 交響曲第9番/ヒメツルソバ(05/18)  
たけぽ2001  さん
そういわれてみると、大作曲家の交響曲は9番までというのが多いですね。
この曲は、エピソードを伺うと是非ワルター版を聴きたくなります。
個人的にはワルターの指揮は好みです。
(2007年05月18日 22時58分12秒)

マーラー、私のお気に入りは5番  
今年のアマオケフェスでは、マーラー9番を演奏するそうです。その事についてうちのアマオケメンバーはみんな、「ううmマニアック」との感想でしたので、微妙に有名な曲なのかな。
今度、9番も聞いてみます^^) (2007年05月19日 00時16分56秒)

紀 健幸さん、ありがとうございます  
とも4768  さん

Re[1]:マーラー 交響曲第9番/ヒメツルソバ(05/18)  
とも4768  さん
たけぽ2001さん
>そういわれてみると、大作曲家の交響曲は9番までというのが多いですね。


ベートーベン、シューベルト、ブルックナー、ドヴォルザークと9曲の交響曲を書いて亡くなっているのですね。 不思議ですね。

>この曲は、エピソードを伺うと是非ワルター版を聴きたくなります。
>個人的にはワルターの指揮は好みです。
-----

ワルターの演奏は「歌心」にあふれた演奏で、何を聴いても心が和みます。 単にこの曲の初演者ということだけでなく立派なマーラー演奏を繰り広げており、難解なこの曲を最後まで聴き通せる演奏です。

価格的にはバルビローリ盤が1枚組で1300円というのも魅力です。


(2007年05月19日 00時41分27秒)

きよりん0518さん、ありがとうございます  
とも4768  さん
きよりん0518さん
>マーラー、私のお気に入りは5番

私も第5番が好きですね。 特に「アダージョ」楽章は絶品です。

>今年のアマオケフェスでは、マーラー9番を演奏するそうです。その事についてうちのアマオケメンバーはみんな、「ううmマニアック」との感想でしたので、微妙に有名な曲なのかな。
>今度、9番も聞いてみます^^)
-----

アマオーケストラでこの曲を演奏するとはよほどの自信ですね。 複雑なスコアを整理して演奏することが要求される作品です。 指揮者の力量が問われるますね。 でもこの大曲を演奏仕切ると大変な自信になると思います。 

あのベルリンフィルでもバルビローリとの録音では、まだまあまりマーラー演奏を繰り返し行っていなくて、この録音で大変な自信を得たというエピソードが残っているくらいです。


(2007年05月19日 00時48分25秒)

Re:マーラー 交響曲第9番/ヒメツルソバ(05/18)  
ネネ4780  さん
おはようございます
昨日はゆっくりコメントする時間が無かったので
読み逃げでした・・・
実は昨年買った(ベストクラシック100)というCDがあるのですが
ともさんの日記を読み、この曲は私のCDにあるかしらと探し・・・
あれば日記にかかれていた事を思いながら聴いています
しかし、なにせ抜粋されたもので、時間も短いものですから
聴き入る頃には終っているという・・・
きっとこれを続けていると欲求不満になるのではないかしらと思うのですが・・・ (2007年05月19日 06時52分06秒)

ネネ4780さん、ありがとうございます  
とも4768  さん
ネネ4780さん
>おはようございます

おはようございます。 五月晴れかと思うと雷雨になったり変わりやすい天気に見舞われている大阪です。

>昨日はゆっくりコメントする時間が無かったので
>読み逃げでした・・・
>実は昨年買った(ベストクラシック100)というCDがあるのですが
>ともさんの日記を読み、この曲は私のCDにあるかしらと探し・・・
>あれば日記にかかれていた事を思いながら聴いています


いいことですね。曲への親しみが増えるでしょうね。

>しかし、なにせ抜粋されたもので、時間も短いものですから
>聴き入る頃には終っているという・・・
>きっとこれを続けていると欲求不満になるのではないかしらと思うのですが・・・
-----

いい曲ほどそうだと思います。 お持ちの「ベスト100」はBGMとして聴いていけばいいと思います。 それらに含まれる曲で全曲を聴きたいと思えばDENONのCREST1000シリーズがあります。 すべてのジャンルを名演奏・優秀録音での「売り」で、1000円は魅力です。 2枚組でも1500円です。 こういう廉価盤でそろえられたらどうでしょうか。 インターネットで「DENON CREST 1000」で検索できます。


(2007年05月19日 08時28分04秒)

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