森の情景、大好きです。一曲目の森の入り口を弾くと深い森の中に入り込んだ気分になり、不思議な期待に胸が高鳴ります。幼い頃は身近だった森。一歩足を踏み入れると暗くて湿っていて不気味なのですが、小川が流れていて、木の実が落ちていて、花が咲いていて、沢蟹が棲んでいて、とても豊かです。そんな故郷にあった森の情景を思い浮かべながら童心に帰って弾いています。
「懐かしい風景」は桜の木に囲まれた神社でカンけりをして遊んだ風景です。

それにしてもなんとも幻想的な菜の花ですね。
ともさんの作品もまた夢の世界を浮遊させてくれます。
ピリス、アファナシエフ、絶対に聴きたと思います。紹介してくださりありがとうございます。 (2008年01月20日 01時52分44秒)

プレリュード

プレリュード

2008年01月19日
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カテゴリ: クラシック音楽
珈琲ブレイクに一曲 」       シューマン作曲 「森の情景」


19世紀前半は、ピアノに関しては革命のような時代でなかったかと思います。 ピアノが楽器としての機能が完成に近い形になって、ベートーヴェンや多くのピアノの名手たちが現れた時代でもあり、それによってピアノ曲が数多く生み出されていく土壌にもなったようです。 

チェンバロにかわってピアノが家庭内でも弾かれるようになり、家庭的な音楽が楽しまれるようになったことから、サロン風や家庭風の作品も書かれるようになりました。 シューベルトやメンデルスゾーンなどが書いたピアノ小品も当時のそうした傾向を反映したものといえますし、ロベルト・シューマン(1810-1856)によるピアノ曲にも同じことがいえると思いますが、彼の場合はシューベルトやメンデルスゾーンの作品とは少し趣が違うとkろもあります。

シューマンは本屋の息子として生まれ文学に親しむ土壌が出来ていたのか、若い時代から文学に尋常でない興味を抱いていたと言われていますが、最初はピアニストになるつもりでスタートしたのですが無理な練習で指を痛めてしまい、その時点で作曲家に転向するせざるを得なかったと言われています。 20歳前後のことです。

若い時代から文学に親しみ文学青年であったシューマンは、そのピアノ作品にも文学的な雰囲気が色濃く影を落としていて、標題のある小品または小品連曲という形の曲集を書いています。「謝肉祭」や「子供の情景」など、広く知られている有名な作品をはじめどれにも文学的な標題がつけられていますが、そうした標題は聴く人がわかりやすいようにと作曲した後でつけられたということです。

シューマンのピアノ作品は標題のついた小曲を組曲形式としてまとめたところに特徴があり、夢幻的な世界が繰り広げられています。声部が絡み合うようにして書かれている彼のピアノ曲は、ベートーヴェンのロマン的な後期のピアノ曲とは違っていて、そこには既に完全なロマン主義の表れを見ることができます。

「森の情景」もその一つで、ヨーロッパの人たちが「森」に対して抱いていた「畏怖」や「怖れ」、あるいは「幻想的な夢想」を表現しています。 「森」には精霊が住んでいるとか、悪魔が人の入ってくるのを待ち構えて手を伸ばしてくるといった「怖れ」や、霊の住むところだから犯しがたい神聖な場所であるとか、色々な形で「森」と対局するようなところがあったようです。

シューマンは文学に鋭い感覚を示した作曲家でもありました。ゲーテ、シェークスピア、バイロンを読み、性格も文学的で、感受性の鋭い若者であったようです。 感受性が鋭いというよりも一種の精神病的なところを家族から受け継いでいたのかも知れません。 というのは、彼の父は晩年に精神に異常をきたし、姉も同じく精神異常から自殺をしており、後にシューマンも自殺を計って、精神病の治療を受けることになることから、家族のそうした精神の異常な感覚のDNAを受け継いでいたのかも知れません。



この「森の情景」にしても人が散歩を楽しむ世界ではなくて、幻想的な夢想の果てに行きついたシューマン独自の世界が開かれているように感じます。 彼が「森」から受けた印象を感受性鋭く描いた文学的な世界であり、詩的な空間のように感じられます。

曲は連作組曲のように書かれていて、「森の入口」 「待ち伏せる狩人」 「淋しき花々」 「呪われた場所」 「こころよい風景」 「旅籠屋」 「予言の鳥」 「狩の歌」 「別離」の9曲の小品から構成されており、全曲演奏に約30分かかる音楽です。

この曲を聴きながらシューマンの書こうとした「森」を思い浮かべるのではなくて、私がうっそうとした森に入って出会う情景を夢想しながらいつも聴いています。 シューマンが与えてくれた「夢想の世界」を浮遊することも楽しいものです。

愛聴盤 

(1)マリア・ジョアン・ピリス(ピアノ)

437538
(グラモフォンレーベル 437538 1994年録音 海外盤)

ピリスの透明なピアノタッチが森の情景を澄んだ風景のように照らし出した名演としてお薦めできる盤です。


(2)ヴァレリー・アファナシエフ(ピアノ)

COCO70692 1992年録音
(DENON CREST1000シリーズ COCO70692 1992年録音)

2004年に1000円盤として再発売されたディスク。 アファナシエフ特有の遅いテンポで詩的な世界を幽玄的に描いた名演。

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寒咲き花菜














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最終更新日  2008年01月20日 00時26分59秒
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ともさんありがとうございます  

ねこまめんたさん、ありがとうございます  
とも4768  さん
ねこまめんたさん
>ともさんありがとうございます。森の情景、大好きです。一曲目の森の入り口を弾くと深い森の中に入り込んだ気分になり、不思議な期待に胸が高鳴ります。幼い頃は身近だった森。一歩足を踏み入れると暗くて湿っていて不気味なのですが、小川が流れていて、木の実が落ちていて、花が咲いていて、沢蟹が棲んでいて、とても豊かです。そんな故郷にあった森の情景を思い浮かべながら童心に帰って弾いています。
>「懐かしい風景」は桜の木に囲まれた神社でカンけりをして遊んだ風景です。


私の住んでいるところも子供時代には多くの緑や田圃・畑があって、その近くには鬱蒼とした森が多くありました。 大人たちから「あの森には人をたぶらかす妖怪が棲んでいる」と聞くと近くを通るだけで足がすくんだものです。 今は宅地開発で何にも残されていません。 遠い昔の話になりました。

>それにしてもなんとも幻想的な菜の花ですね。
>ともさんの作品もまた夢の世界を浮遊させてくれます。


できるだけピントは一点だけにしてあとは全てぼかしてしまおうと狙いました。 絞りをもう少しなんとかならなかったかと悔んでいます。 液晶画面ではわからないところが多いですね。

>ピリス、アファナシエフ、絶対に聴きたと思います。紹介してくださりありがとうございます。
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この2つの盤はお薦めです。 機会があればお聴きください。
(2008年01月20日 14時06分56秒)

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