QBスニーク

梅毒血清反応

『正常値』

○梅毒血清反応:陰性(-)


【梅毒血清反応】

 梅毒とは,トレポネーマ・パリーズムと呼ばれる病原体によって起こる性病で,性行為により感染する.まれに胎盤を通じて母親より胎児に感染する場合がある(先天性梅毒).
 現在行なわれている梅毒血清反応の検査法には,次の二種類がある.
 (1)牛の心臓からとりだされた脂質(カルジオリピン)を抗原として用いる方法.ガラス板法,緒方法,梅毒凝集法,RPR法の四通りがあり,STS(serologic test for syphilis)と通称されている.
 (2)病原体トレポネーマ・パリーズムを抗原として用いる方法.TPHAテスト,FTA-ABSテストがある.
 通常は,STSの2~3通りと,TPHAテストによって検査が実施されている.

【梅毒血清反応の結果】

 ①STS陽性,TPHA陽性の場合
 梅毒の感染を意味する.抗体価は梅毒の病態とよく並行する.イ)高抗体価を示す場合,治療を要する梅毒である.ペニシリンなどの抗生物質の服用(2~8週間)が必要である.ロ)低抗体価の場合,すでに治癒(自然治癒)した梅毒と考えられる.念のために数ヵ月後の再検査が望ましい.陳旧性のものは抗体価の変動はない.
 ②STS陽性,TPHA陰性の場合
 大部分は,生物学的偽陽性(Biological false positive; BFP)である.梅毒でない疾患において,STSに用いられている脂質(カルジオリピン)に対する抗体を産生することがある.偽陰性(BFP)の出現しやすい疾患としては,膠原病(SLE,慢性関節リウマチ),異型肺炎,麻疹,水痘,肝疾患などがある.
 ごく例外的に,感染初期の梅毒の可能性がある.その場合は,FTA-ABSテストによる確認,または一定期間後(数週間後)に再検査が必要である.
 ③STS陰性,TPHA陽性の場合
 陳旧性の,治療した梅毒である.治療の必要はない.
 ④STS陰性,TPHA陰性の場合
 梅毒トレポネーマに感染すると,約三週間後に,第Ⅰ期の症状として,初期硬結(硬性下疳という)があらわれる.初期硬結とは,陰部から大腿つけ根(そけい部という)の部分に硬いしこり(リンパ腫の腫大)がみられることをいう.Ⅰ期では,陽性率はSTSで70%,TPHAで60%にすぎない.Ⅱ期(前身に発疹が出現する)になると,STS,TPHAとも100%陽性となる.したがって,感染初期(1ヵ月以内)では,STS,TPHAとも陰性ということがあり得るので,数週間後に再検査が必要である.
[2003.3.1更新]
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