小さな不動産会社のBOSS日記

小さな不動産会社のBOSS日記

波の花

どの辺りまで来ただろう
ちっぽけな連絡船は 微かな鼓動を繰り返しながら
霧深い帳に包まれて進む

先の桟橋では殆どの乗客が下りた
それからずっと 甲板の手摺にもたれている僕は
潮風に濡れて闇の彼方に彼(か)の記憶を辿る

夜長
時折飛沫となって頬を濡らす海水
船窓の明るみに照らし出される波の花
ああ今 再びあなたに逢おうと旅に出た僕に
この麗しき冷気は、体内の奥底までも侵入して切ない


二十歳の青春:尾道~因島~小さな連絡船上にて


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