柿の種

柿の種

インセクター

インテリア標本≪Papilio Karna≫
壮麗な貴金属がちりばめられた部屋。
着飾った老若紳士淑女。
たくさん眼がらんらんと輝く。あちこちでためいきと安堵の声が入り混じる。
「800ポンド」
「850ポンド」
「ムスカ・ドメスティカ・リンネのトイレで捕獲されました。さあオークションどうぞ」
乾いた木槌の音が部屋に木霊し、一つまた一つと新たな昆虫たちが運ばれてくる。
「では次に移ります、ルチオーラ・メタンガス・ランプス、ミスター醍醐が世界で3番目に採集」
「2000ポンド」、、

みなさんは取った虫を交換したことがおありだろう。
またデパートへ行けば昆虫は高い値段で売られている、、。
ここロンドンでは、珍しい昆虫のオークションが年1回開かれるのだ。
そこでは世界中から昆虫の収集家や販売業者が集まって貴重な昆虫を交換したり、
何十万かで売り買いされているのだ。
もちろんまだ世界で数えるほどしか取られていない虫は最高値で売られる。

カウンターに座った男の後ろでは新たな昆虫が右から左へと売買されていく。
「500ポンド」

そういう昆虫を世界をまたにかけてつかまえ、毎年オークションのためにロンドンへやってくる一人の日本人がいる。

彼は自分で買うことはなかった。
ただひたする





原作:手塚治「インセクター」より



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