アラミス









     アラミス

  人ごみの中を歩いて
  ふと立ち止まってしまう事が
  しばしばあった

  あの人と同じ香りが
  ふと 漂って来たから

  その人の香りが好きだった頃
  いつも鼻を犬のように
  クンクンさせていた

  深呼吸をして
  思い切りその香りを吸い込む私に
  「銀座のサラリーマンの匂いだよ」
  と笑いながら言うその人
  「貴方の匂いよ」
  と顔を押し付ける私

  あの中にず~といたら
  今はどんな私がいたのだろう
  そして 今
  あの香りの中にどんな人がいるのだろう

  それぞれの道を
  それぞれが幸せに
  それぞれの思いを
  それぞれが思い出に
  かつての日の私を
  かつての日の香りが
  ふと包み込む人ごみの中







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