ねこと歩こう

ねこと歩こう

ファイル その3


『ハンバーグの香り事件』


小鉄がうちに来て間もない頃の事・・・。


休みの日になると、私はねこち達の気分転換やカルシウム摂取のために
よくベランダに出して日向ぼっこをさせてあげます。
私はマンションの二階に住んでいてベランダが南向きなので、
とても日当たりがよく他の住居より少し出っぱった構造になっているし、
おまけに前も後ろも田んぼで障害物がないので、
お日様は朝昇って、夕方沈むまでの間、いつでも『日向ぼっこ』を
可能にしてくれています。

プロフィールの画像にもあるように目隠しのコンクリートがないし、
ねこち達の見晴らしも結構いいものです。
マンションの前には河川の堤防へ抜ける真っ直ぐな一本道があって
その通りから、うちのベランダは少し目立って見えるため、道行く人達は
うちの3にゃんを見上げながら通過していかれます。

その通りを隔てて、やや斜め右の角度に某冷凍食品会社の工場があります。
そちらの工場では、から揚げやハンバーグを作られていて工場が稼動し始めると
風向きにもよりますが、何とも言えない美味しそうな香りが漂ってきます。

その美味しそうな香りが漂う中、小鉄を初めてベランダに出した日です。

サノやビビは、気分良さ気に景色を眺めていましたが
小鉄だけは何やら様子が違っていました。
ちょうど、『あかべこ』の頭をコンと叩いたような状態で、
首を小刻みに上下に振りながら左から右へ、そして右から左へと動かしていて、
何とも可笑しげな光景だなぁ~と思いながら私は部屋の方で
床のモップ掛けをしていました。

・・・しばらくすると、小鉄の「あっう~」という声が聞こえてきました。
やつの声は低い上によくとおり、しかもかなり特徴があるので物珍しいのです。
最初は何を訴えているのか解らなくて首をかしげていると、その小鉄の鳴き声が
次第に激しくなり始めました。
私は何度か鳴かすまいと小鉄に注意を促したのですが
「あうあう~、あうあう~!」という小鉄の声は、そこら中に響き渡り
私はたまらなくなって、小鉄を家の中に入れようとしてベランダに出ました。

道行く人は、うちのベランダで鳴叫ぶ小鉄を見て・・・・・・
「あらあら、ねこの鳴き声だったの。」とか、
「何が鳴いてるんかと思った」とか言って
通り過ぎていかれます。私は背中に冷たいものが流れるのを感じながら
さっと小鉄を抱きあげて家に入れました。

とにかく天気も気候も良い時だったので
網戸越しに外の空気だけでも・・・と小鉄をサッシ際に置いてやりましたが
またもや、そこで「あうあう~あうわお~」とさらに大声をあげるので
とうとう私はビビもサノも家の中に入れサッシを締め切りました。

何をそんなに鳴くのかって、ハンバーグの匂いです。小鉄は、食品工場に向かって
「食べさせてくれ~~~~~!」と訴えていたのです。
うかつに日向ぼっこもさせられないのか?と私は失意してしまいました。

今では―、もう鳴かなくなったので時々ベランダに出しています。
結局、鳴いても絶対に『貰えない』って事が解ったようではありますが、
それでもやっぱり「あかべこ」のように首を動かして
匂いをクンクン嗅いでいる小鉄君です。

コテリへ
 せめて、ねこって解る鳴き方を・・・。
 いやいや、無理なお願いはできないんだけどね?



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