４５０円
【４５０円】家族の戸籍謄本を貰うため本籍のある故郷の市役所に行った。
かわいいお姉さんが俺の名を呼び「４５０円です」と言った。
え？住民票と同じ２００円じゃなかったのか。
ヤベぇ、手持ちのお金がそんなにないかも・・・。
そもそも俺はお金を持って出歩くことはない。
支払いはいつも小切手だからである、なんてことはないが
買い物そのものをしないし、また欲しい物がないからである。
お金を持って出掛けるのはせいぜいハイキングに行く時ぐらいだ。
行く途中のコンビニでおにぎりや飲み物を買う程度なので
財布の中にはおのずとお釣りで貰う小銭ばかりが貯まってしまうのだ。
さて、久し振りに持った小銭入れ（全財産入り）を逆さまにして
１円５円１０円などの小銭を市民課のカウンターにブチまけた。
４３５円、４４０円、４４１円、４４２円、４４３円・・・、
市民課のお姉さんも固唾を呑んで見守っている。
おお！あった！４５０円ドンピシャだ！
１円５円の小銭を並べて行く俺の人差し指を見ていた彼女と
「おお！」と小さな歓喜の声を上げた俺は顔を見合わせて微笑み合った。
「小銭ばっかでこんなんなっちゃってすいません」と謝ったが
彼女はクスクスと笑って「はい、確かに」と何だか嬉しそうである。
もし１円足りなかったら「１時間かけて岡崎市の自宅まで行って
部屋で１円探してからまた１時間かけて払いに来ます」とか、
「その辺の自販機の下に潜り込んで１円探してきます」と言えば
彼女はこっそり自分の財布から１円を床に転がして
「あ、そこに落ちてる１円、あなたのじゃないですか？」と
さりげない優しさ（同情ともいう）をしてくれたかも知れない。
それは俺の自尊心を傷つけない最大限の優しさである。
或いは「１円足りなくてもダメじゃ！取りに行って来いや！」と
お役所らしい言葉を投げかけられたかもしれんなあ。（笑）
実は高校の同級生だったタッちゃんがその市役所で働いているが、
ドカジャンを着た髪ボサボサの俺が彼を呼び出して
「やい、タッちゃん、１円くれ」なんて言ったら非常にカッコ悪い。
５千円とか１万円貸してくれの方が現実味があってまだマシである。
１円恵んでくれなんて言ったら「どんだけカネに困っとんじゃ」と失笑され、
間違いなく浮浪者として故郷に舞い戻って来たな、と思われる。（笑）
ドンピシャで４５０円の手持ちがあったのはまさに奇跡、
神様仏様のご慈悲があったとしか思えないぜ！
１円のあるかなしかは天国と地獄の差、皆さんも所持金には注意してくれ。
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