りゅうちゃんミストラル

りゅうちゃんミストラル

2009.01.14
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カテゴリ: 読書





この話の主人公は三村幹生という中学2年生。
ある地方のニュータウンに住んでいる。
学校はモデル校となっている。
頬のニキビから彼は学校で「ジャガ」と呼ばれている。

この地域で事件は起きた。小学校3年の女児が行方不明に。
彼女は山で遺体となって発見された。
遺体は上半身裸で、乳首には噛んだ跡があった。
猟奇殺人だ。「夜の王子」の文字もあった。

事件は幹生と駆け出しの新聞記者山崎を交互に描くことで進行する。
そして犯人が捕まった。幹生の弟だった。
騒動は犯人の補導で終わらなかった。
この小説は、犯人探しがテーマではないからだ。

幹生を含め、両親は離婚。家族はバラバラになった。
それでも幹生は元のクラスに戻る。
学校で幹生はイジメられる。
PTAも悪影響を考えて、幹生を転校させようとする。

この小説では、被害者家族ではなく加害者家族の視点で描かれている。
終盤、被害者の母親が出てくるものの、被害者は脇役の扱いになっている。

この小説が、神戸で起きた酒鬼薔薇の事件に影響されたことは明らかだ。

神戸連続児童殺傷事件

触法少年の写真公開も現実に起きたこと。
そして少年法は少年を更正させるために存在している。
被害者家族や加害者家族のその後など考えていないかのように。

石田衣良と言えば「池袋ウェストゲートパーク」。
そして直木賞受賞作となった「4TEEN」。

夜、クスノキの下に集まる学級委員の長沢。
図書委員で変わった女の子のはるき。そして幹生。
彼らの友情が「4TEEN」へ繋がっている。

女装をカミングアウトする長沢。
びっくりするような発言を連発するはるき。
凄惨な事件を描いていても、石田衣良の世界は救いがある。
特に、はるきの発言には笑いが止まらなかった。
現実に、彼女のようなクラスメートがいたとしたら。
灰色の中学校生活も楽しいものになっただろう。

もし、自分がこの物語の世界にいたとしたら。
もし幹生のクラスメートだったとしたら。
どう行動しただろうか?
いろんな視点から事件を考えると、時間がいくらあっても足りない。

さらに、このテーマを別な作家が書いたとしたら。
どんな作品になったか。
宮部みゆきなら、東野圭吾なら、重松清だったら。
別な視点からまったく違う小説を書いていただろう。

ある作家は松浦君の視点から書くかもしれない。
又は加害者の父親の視点で。

三つだけ苦言を。

まず図書館について。
個人情報が利用者にわかってしまう図書館が学校にあること。
これは大きな問題だ。

かつてスタジオジブリのアニメ映画「耳をすませば」でも同じことがあった。
主人公の雫が図書カードからその本を借りた人物を知る。
これは「まともな」図書館ではありえない。

「図書館の自由に関する宣言」 でもそのことは明らかだ。
「図書館は、利用者の読書事実を外部に漏らさない」 と明記されている。
(上記リンクから抜粋)

もうひとつは「夜の王子」が過去の文集に出ていたこと。
遺体発見現場に「夜の王子」がメッセージとして残されていた。
ならば、警察はその意味を考えるだろう。
徹底的に捜査するに違いない。
加害者の兄であったとしても、警察が見つけられなかったその文集を見つける。
加えて事件の背景を中学生が突き止めて新聞記者と秘密にする。
そして事情を知った警察署長は息子を撃ち自殺。
これはリアリティーがない。

最後にリストカットについて。
女装する長沢君は心が女性なのかもしれない。
それでも、リストカットは男女で大きく違う。
これは私だけが主張していることではない。
薬物や青少年の非行に詳しい 水谷修 氏も講演会で言っている。
男子のリストカットは女子に比べてかなり重症。
この話のように、強い友情で結ばれた友人がいたとしても。
立ち直るには精神的なケアが必要になる。

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関連ページ

うつくしい子ども

↑「うつくしい子ども」に関するページ。
今回、こちらで記事を書くにあたり参考にさせていただいた。

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最終更新日  2009.01.23 14:16:32


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