りゅうちゃんミストラル

りゅうちゃんミストラル

2010.01.14
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カテゴリ: 読書





男の側から見た不倫とはこんな感じ。
「夜明けの街で」はまさにそんな小説だ。

40を前にした妻帯者が不倫に溺れる。
しかも妻には不倫がバレていないと勝手に想像する。
この世にはこんな状況の男がたくさんにいるのだろう。

文章自体はすいすいと読める。
しかし200ページくらいまで私はこの作品を読むのが遅かった。

なぜなら作品に救いが感じられなかったから。
私は小説に救いを求める。
家庭がある中年男が会社にいる派遣社員と不倫する。
そこに救いはないし、結末に救いがあるとも思えない。
そうなると私がこの作品を読む理由がなくなる。
同じ理由から、今まで私は似た作品を最後まで読めなかった経験がある。

この作品をミステリーと解釈すれば。
基本的な設定である不倫の部分が長すぎる。
しかも主人公渡部は謎解きのためのメンバーではない。

東野圭吾は多方面に挑戦する作家。
何かで読んだが、「自分の不得意な分野」に挑戦する。
それが東野の姿勢だ。
だからこそ彼の作品にはいろいろな分野が存在していて面白い。

だがそれが不倫であったなら。
彼の持ち味は生かされるのか?
私はこの問いに否定的になる。

誰が誰と不倫していたか。
それが結末に出てくる。
時効を前にした15年前の事件はその謎の解明とともに解決する。
「衝撃のラストシーン」という触れ込みはこの部分なのだろう。

しかしその結末は薄っぺらいもの。
私はそう評価した。
核心の部分が現実にはありそうもない話だったからだ。

「新境地にして最高傑作」という広告もあった。
不必要で大げさな文句はかえって読者の不信感を増すだけだぞ。

男も女も時に不倫する。
それは雷に打たれたようなもの。
たとえ、そうだとしても渡部には共感できない。
共感できない主人公の話を高く評価することもできない。
多くの女性はこの作品を読んで、こう思うのだろう。

「男ってバカ」



「女房は不倫を見抜いていない」なんてわけないだろう。

しかも奥さんの怒りを卵で表現する意味がわからない。
あわてて付け足したような深みのない部分だ。
そうした表現方法が東野にとっての文学なのか。

東野は優れた作家ではあったがスーパーマンではなかった。
それをこの作品は証明した。
ほっとする一方で失望した。

「おまけ」の部分も必要だったのか。


この作品は試金石としての意味がある。
それは、「東野作品なら何でもいい」読者とそうでない読者。
この作品の感想で両者を見分けることができる。
この視点で多くの書評をネットで読むととても興味深い。

次に東野作品を読むとしたら「新参者」だろうか。
「このミステリーがすごい2010年」第1位の作品だ。
東野作品のレギュラー、加賀恭一郎が出てくる。
図書館で読むには長い待ち時間が必要だろう。

追記 

この作品の書評をネットで探していた時のこと。
あるブログ記事の下に浮気調査の広告が出ていた。


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最終更新日  2010.04.24 20:27:24


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