りゅうちゃんミストラル

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2010.05.11
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カテゴリ: 読書


それを大学教授である著者ピエトラ・リボリが追った。



フロリダで買った5ドル99セントのTシャツ。
素材である綿はテキサス州で生産された。
アメリカでの綿の生産については、奴隷制も深くかかわっていた。
大規模な機械による綿の生産は、アメリカの綿農家を生き残らせた。

テキサス工科大学も害虫駆除の面で農家に協力した。
インドのアンドラ・プラデシュ州では害虫による被害によって多くの農家が自殺。

アメリカなら、雹による被害が出ても農家は保護される。
同じ綿を生産する農家でも、国によってこれほどまでに違いがある。

材料としての綿は、そこから長い旅に出る。
西海岸へ運ばれ、船で中国へ。
糸となり、布となった綿は中国国内で縫われ、白いTシャツになる。
鮮やかなプリントされるのはマイアミ。

中国で著者が見たのは低賃金で働く労働者たち。
なぜ遠い中国に綿は運ばれなければならないのか?
その秘密は中国での人件費の安さにある。
中国ということで政治も大きく絡んでいる。

ここで「搾取はいかん」とか、「グローバル化は悪い」という結論だったら。
この本の魅力は何と乏しいものになっただろう。

アメリカ国内に戻ってきたTシャツは、その後古着として売られる。
行き先はアフリカだ。
保護政策でガチガチの状態だったTシャツ。
ここでやっと競争原理の下、取引が行われるようになる。

グローバル化は悪いことなのか?
日本との間においても貿易摩擦を引き起こしたアメリカ。
自由の国では保護貿易が行われてきた。
詳しい内容については、この本をじっくりと読んでほしい。

この本で思い出したことがある。
本書でも紹介されたように、一部のスポーツメーカーは批判された。
「搾取工場で低賃金の労働者が犠牲になっている」という理由からだ。

同じことを以前、「CBSドキュメント」で見たことがある。
TBSで夜中放送された番組だ。

番組ではサッカーボールの生産について報告されていた。
サッカーボールは安いものがパキスタン製が多い。
(私も安いパキスタン製のボールを使っていたことがある)

その生産国パキスタンでは、子どもたちがボールを手縫いする。
子どもによる労働と低賃金の世界がそこにはあった。

CBSの番組により、子どもたちはサッカーボールの生産ができなくなった。
このドキュメンタリー番組では現地のその後を追った。

子どもたちに聞いてみると、「以前のほうがよかった」と言う。
なぜなら、ボールの生産で少しは賃金がもらえたからだ。
学校に行けないで働かされている子どもたちばかりではないらしい。

アメリカ3大ネットワークのCBSによって、何が変わったのか。
それは「先進国の自己満足」で終わったのではないか。
番組自身が疑問を投げかけていた。

この本で著者が言っているように、グローバル化が何でも悪いわけではない。
保護貿易 は予期しない形ではあるが有益なものを残すことがある。

ひとつの視点だけで物事を理解したつもりになっていること。
その危険をこの本は教えてくれる。

繊維だけでグローバル化全体を語ることは無理がある。
鉱石には鉱石の。
食料には食料の事情があるに違いない。

食品の輸入とフードマイレージについては以下の本で書いた。

「コンビニ弁当16万キロの旅」

石油についてグローバル化の視点から語ったら。
さぞかし興味深い本になるだろう。

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関連記事

「あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実」ピエトラ リボリ

あなたのTシャツはどこから来たのか?/ピエトラ・リボリ

「あなたのTシャツはどこから来たのか?」ピエトラ・リボリ著

007『あなたのTシャツはどこから来たのか?』 ピエトラ・リボリ 第一版2007年

【書評】『あなたのTシャツはどこから来たのか?』

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最終更新日  2010.05.11 18:55:50


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