りゅうちゃんミストラル

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2010.07.02
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カテゴリ: 読書


裏庭

裏庭

価格:620円(税込、送料別)


私はこうした作品が苦手。
だがこの本に限っては「最後まで読む」ことができた。
1日20ページしか読めないこともあった。

主人公は13歳の照美という女の子。
双子の弟がいたが、6年前肺炎で亡くしている。

照美の両親はレストランを経営していて忙しい。
弟を亡くしたことも親子の間には冷たい空気となっている。

照美が幼い頃遊び場にしていたバーンズ屋敷。
そこには英国人一家が住んでいて、裏庭があった。

大鏡を通して裏庭に入った照美。
そこで「テルミィ」の冒険が始まる。

作者は呼び名にこだわっている。
照美の父親はパパだけど徹夫。
その徹夫である自分を日常では忘れている。

母親のさっちゃんもそうだ。
自分の母親(つまり照美の祖母)から愛されていないと感じていた。
娘に対しても放任というか冷たい一面を見せる。
名前によって「自分が自分であること」という考え。
まるでスタジオジブリのアニメ「千と千尋の神隠し」みたいだ。

自分は何もしないでも自分のまま。
だがあることをして「自分を取り戻す」「自分が自分になる」ということ。

現実の世界と裏庭の中の世界。
その二つが最後にはつながる。
二つの世界が交互になっていれば村上春樹の世界だ。
春樹は「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を書いた。

梨木と春樹が似ているのは世界に入るということ。
作家が独特の空間を作り、読み手はそこに入る。
いかに空間を作るかが作家の力量となる。

英国人一家も姉妹の一人が帰国後に亡くなっている。
照美一家と同じく欠損家族。

欠損家族といえば宮部みゆき。
彼女は失われた人が作品にどんな影響を与えるか。
それをよく知っている。

人はどこかで欠けたものを取り戻すように行動する。
死んだ人は生き返らない。
だが、「もう失わないようにする」ことはできる。
作者の梨木香歩もそれを願ったのではないか。
この作品を読んでいて私はそう考えた。

私がこの作家の作品を読むのは2作目。
最初の作品は「西の魔女が死んだ」だった。

「西の魔女が死んだ」に学ぶ

「裏庭」と「西の魔女が死んだ」。
この両作品を読むと、作者の描きたかった世界が少しは理解できたかと思う。

私は基本的に再読をしない。
その時間があれば、読んだことのない作品を読みたいから。
だがこの作品は再読が必要なのかもしれない。

環境や年代によってこの作品に対する感じ方はまったく違う。
小学生でも読めるから、広いストライクゾーンがあるのだろう。

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「裏庭」梨木香歩

「裏庭」梨木香歩

↑この作者の作品を読むと「夏の庭」を連想する。
それは私だけではなかったらしい。

「裏庭」梨木香歩

裏庭 -- 梨木香歩 --

『裏庭』梨木香歩

「裏庭」

裏庭

裏庭 梨木香歩

裏庭 / 梨木香歩

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最終更新日  2010.07.02 20:44:38


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