りゅうちゃんミストラル

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2010.10.07
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カテゴリ: 読書



マドンナ・ヴェルデ

マドンナ・ヴェルデ

価格:1,575円(税込、送料別)


この作品は、 「ジーン・ワルツ」 を別の角度から描いた作品。
代理母として娘の卵子を使った妊娠に挑戦する、55歳の女性みどりが主人公。
生まれてきた子は孫であると同時に息子、娘でもある。

この設定は決して小説だけのものではない。
実際に06年、日本で同様の代理出産は行われた。

その件については以下の記事で書いた。

50代女性が「孫」を代理出産

↑この記事でも触れたが、日本では出産した女性が母親。
卵子を提供した女性は母として認定されない。

この作品は多くの問題を提起している。
まずは結婚は何のためにするものかという問題。

もし結婚が子孫を残すために行われるというのであれば。
曾根崎理恵と伸一郎の夫婦は何のために結婚したのか説得力に欠ける。

「結婚は社会契約」という手紙を書いた伸一郎。
その主張は半分正しいが不足している。

結婚は法律婚と事実婚の両面がある。
伸一郎が法律婚という部分だけを見ているなら、それは誤りではないか。

私が古いタイプの人間なのかもしれない。
だとしても、こんな夫婦がいるのなら少子化が進むのは当然な気もする。

母親に帝王切開を説明せずに代理母を頼む娘。
離婚することすら母親に知らせない。

しかも、みどりが生む双子は清川の精子かもしれない。
最初はそれすらみどりに教えない。

こうなると理恵はただの狂った女でしかない。
後半部分は特に、私はみどりに感情移入した。

もし、理恵のような産婦人科医が実在したら。
女性は信用して身を任せることができるだろうか?

医学は合理主義だけで成り立っているわけではない。
それがために理恵は母親のみどりに負けた。

生まれてくる子の親権について手紙でやり取りするみどりと伸一郎。
往復書簡で有名な小説といえば宮本輝の「錦繍」。

伸一郎の合理主義は趣というものがまったく欠如している。
理恵と結婚したのではなく、伸一郎は合理主義と結婚したのか?

「医学のたまご」 になると、手紙がメールになってさらに無味乾燥となる。
便利さというものは何かを失うということ。それにしても・・・

こうした人間関係に寒さを感じたのは私だけなのだろうか?
合理的な理恵に反発しながら読んだ。

少なくとも私は、代理母に対して反対しているわけではない。
私でさえ反発するのだから、保守的な人は代理母辞退を拒否するだろう。

次に産婦人科の危うい状況。

妊娠は病気ではない。
そのため胎児や妊婦が死亡すると問題になりやすい。

この作品でマリアクリニックの院長、三枝茉莉亜の息子である久広。
彼は極北市民病院の勤務医だったが医療事故で逮捕される。

この事件も実際にあった以下の件がモデルになっている。

福島県立大野病院産科医逮捕事件(Wikipedia)

大野病院の件は医師の無罪が確定し、元の病院に復帰した。
海堂もそのうちにこの件を描いた作品を出すかもしれない。

それにしても、双子だから理恵と伸一郎で一人ずつという解決法。
私には安易なアイデアに思えて仕方ない。

私は有名なドイツの児童文学である「ふたりのロッテ」を思い出した。
エーリッヒ・ケストナーは家族が一緒にいる重要性を皮肉を込めて訴えた。

そんな価値観はすでに日本でも失われているのだろうか。
それがロッテのいた1949年と2010年の違いなのか。

もし薫が成長したら、「シッターの山咲さん」は事実を話すのか。
「実は私があなたの祖母であり、母である」ということを。

この作品の終盤、みどりはそのことを否定している。
代理母であることは祖母を失うということになったわけだ。

それにしてもこのシリーズ、長く続く。
スターウォーズみたいに「医学のたまご」の後で本作品が出ている。

すでに多くの読者が結果を知っている。
そのことを考えれば、本作品は結果ではなく経過が勝負。

著者の海堂はやりにくかったのではないか。
「どう描くか」ということになると作家としての手腕が試される。

「ジーン・ワルツ」で描き切れなかった医学以外の部分を描きたかった。
私はそう理解している。

この作品で誕生した双子は 「医学のたまご」 に中学生として登場する。
伸一郎も薫を助けるべくアメリカにいながら活躍。
双子のしのぶは今後、別の作品に出るのか?

「ジーン・ワルツ」は11年に映画が公開される。
曾根崎理恵を演じるのは菅野美穂。清川吾郎は田辺誠一が演じる。

次に読むのは「アリアドネの弾丸」になるのか。

アリアドネの弾丸

アリアドネの弾丸

価格:1,500円(税込、送料別)


※楽天特有の字数制限のため、これ以上書けない。
この記事は以下に続く。

「マドンナ・ヴェルデ」その2

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関連記事

海堂尊の「マドンナ・ヴェルデ」は、海堂尊の「ジーン・ワルツ」と同じ時間軸の話だった。

海堂尊 マドンナ・ヴェルデ (6/2010)☆☆☆1/2

【マドンナ・ヴェルデ】ジーン・ワルツの裏側

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最終更新日  2010.10.08 11:38:28


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