あんのうんワールド

あんのうんワールド

小説



「オッハ陽!」
康二が陽の背中を叩いた。
「イッテー!馬鹿ヤロー!俺は怪我人だぞ!」
あの事件の次の日ニュースではモンスターの出現ばかり取り上げられていた。モンスターが出現したのは陽の通う、中学だけではなかった。
池袋や新宿など東京付近全てに出現したらしい。何とか全滅させたらしいが、皆ランポスかその亜種、ゲネポスかイーオスだったらしい。
「悪い悪い!まあ綺麗な姫ちゃんに看病してもらったんだから!それにアンナ露出度の高い服で…」
「ばーか…何考えてるんだ。」
そして学校に着いた。
「オイ!聞いたか?東京付近でモンスター大量発生だって!しかも皆ランポス系だってよ!飛竜じゃないだけマシだよな!」
そんな話で学校はいっぱいだった。
「姫は?まだ?」
陽は昨日仲の良かった女子に聞いた。
「まだじゃない?それより、ランポス殺ったの陽なの?スッゴイ噂されてるよ!」
「ま、まあ…」
そう言って陽は話から逃げた。
その日姫は風邪のため学校を休むと連絡があったが陽は嘘だと直ぐにわかった。陽は学校が終わると直ぐに担任の元へ行った。
「先生!大空さんの家ってどこですか?」
「大空さんね…えー、あのビルの近くの大きな赤い家だけど…まあ直ぐにわかるよ。」
「ありがとうございます!」
陽は姫の家に向かって走った。
「はぁ…はぁ…こ、ここか…」
赤い派手な家が恐ろしく巨大な敷地の中にあった。家と言うより屋敷だった。
「無茶苦茶なほど入りズラいな…ま、いっか!」

ピィーンポォーン…
「居ないのか?」
ピィーンポォーン…
「…はい大空です…」
姫の声だった。
「あっ姫?陽だけど…」
「…ごめんなさい…もう貴方とは…」
「おっ邪魔っしまーす!」
陽は大きな門を登って敷地に入った。
「陽!ちょっと待て!勝手に入らないでよ!」
陽は小走りで屋敷に近付いた。
少しずつスピーカーからの音が聞こえなくなる。
屋敷の前に立つとより大きい事に気付いた。
「でっけー…名前が姫って言うだけあるな。ま、入るか。お邪魔~!…ありゃ?」
中は広い玄関で進むと大きな空間に3つの巨大階段、左右の階段は半螺旋状になっている。しかし、そこに音一つなかった。
「ったく…広いと不便だよな…ひーめー!」
陽は迷わず真ん中の階段を登った。階段を上がるとH型の廊下に広がっていた。
陽は片っ端から開けて行った。
「姫~!ここか?」
陽がドアを開けるとそこは脱衣所になって居た。しかしそこらの銭湯よ
り大きい。
その奥からシャー…っと水が流れる音がした。
「あっ…居たけどヤベーな…」
陽は近くの掃除用具入れに飛び込んだ。
{うわー…ピンチって言えばピンチだけど…}
「ふーぅ…全く、陽は…ってもう入って来てたら…ここに来るじゃない!急がなきゃ!」
{居るんですけどー…なんて言えないよな…って!ここ、掃除用具入れじゃ無くて…衣服入れ箪笥だった~!ヤバイヤバイヤバイ…殺される!}
陽はさり気なく箪笥の溝から姫を見た。白い肌が湯気と混じっている。濡れた髪を上で纏めている姫はなぜかより綺麗に見えた。
{アイツ…顔は幼く見えるのに体は立派だな~…ってこんなやばい状況で何考えてるんだ~!}
「!!…あー!なんでこんな所に居るの?!もしかして私を見に来たな~!」
姫は下着で衣服入れに近付いた。
{ば、バレた…終わりだ…}
「ニャー!」
{へ?ね、猫?}
頭の方から猫の声がした。
「もー!ミーちゃんのエッチ!」
{グハァ!こんな所に居たら悩殺される…この小説の趣旨変わってないかオイ!こんな純粋な少年をこんな場所に入れやがって!}
「ミーちゃん!今日は初めての友達が家に来るんだよ!もう来てるかな…どんな服着て会えば良いか分からなくってね。私すっごくドキドキしてるの!ミーちゃんも一緒に選んでね!」
{も、もうだめだ~!}

ガチャ…

「こ、こんにちは…」
「?!キャーーーーーーー!!!!!」

パン!パン!

大きな音を出して陽の頬にビンタが走った。
「陽の変態ー!」
「ご、ごめーん!」

それから10分後…

「ま、まだ怒ってるの?」
「ふんっ!」
「本っ当にごめん!」
陽は土下座して謝った。
「…てたんでしょ私の事…聞いてたんでしょ!?私の事!貴方が初めての友達だとか…」
姫の顔が寂しさに変わった。今までは怒ってるとはいえ照れていただけだった。しかし今の姫の瞳は暗く光がなかった。
「MHって私のパパが作ったんだ…」
「ま、マジで?!」
「でね…仕事が忙しくなって、家になんか帰らなくて、ママは離婚しちゃったし…この家は私と私の世話役のメリーだけ。でね、私、学校行くのも初めてで…幼稚園は行ったよ。でも私…人となかなか馴染めなくて…中学になって少しだけど友達が出来たの!…でも…最初の友達を私は傷つけてしまった…私…友達をつくるのが怖い…」
「別に姫が傷つけたわけじゃないだろ?!」

「違うの!…あのあのランポスは創られたモンスターなの!パパの会社で開発してるMHテーマパークに人工モンスターを繁殖させようとしてるの!」
「そ…それってジュラシックパークのパクり?!」
姫はコクりと頷いた。
「だから私はそれを止める!これ以上犠牲を出したくないから!」
「ふーん。でもさ、何でモンスターがウロついてるんだ?」
「多分…制御出来ないんだと思う。」
「ったく、モンスター現実世界に創る暇あったら早く次回作出せっての!」

ガッシャーン!

一階で思い切りドアが開く音がした。
「パパ!陽少し隠れてて…」
陽はまた衣服入れに入った。
ドシドシと姫の父が来た。
「姫!見ろこのランポスを!ついに完成したのだよ!」
父の隣で肉食モンスターのランポスがキョロョロしていた。
父は背が高かったがそれ以上にランポスは大きかった。昨日のより明らかに大きい。
「キャ!」
姫は尻餅を付いた。
「怖くなんか無いぞ!しっかりコントロールしている!犬と同じ脳だからな。」
{姫…本当に怖いんだ。}
「次はリオレウスを創るぞ!この調子なら直ぐにテーマパークが出来るぞ!」
父はそう言って家を去った。
「陽!どうしよう!このままじゃ!」
衣服入れから出て来た陽に言った。
「止めに行こう!…って言いたいけど、そんなにMHの会社に入れないか…」
陽は下を向いた。
「…!あるよ!入れる場所!私が小さい頃使ってた道!」
「よっしゃ!そうと決まれば話しは早い!行くぞ!」
陽は玄関に向かった。
「待って!今日は会社の本会議で人が多いから明日じゃなきゃ…」
「そっか!じゃあ明日学校が終わって直ぐに行くか!」
「…うん…でも私…」
「まだ昨日の事気にしてんのかよ~!そんなに心配なら俺が朝迎えに来てやるよ!」
「ありがとう!ごめん…迷惑かけて。」
陽は屋敷から離れて自分の家に向かって走った。


「姫~!」
ドアの前で叫ぶと、直ぐにドアが開いた。目の前にはバッハのような髪形の男性が立っていた。
「姫様に何か御用ですか?」
体が震える程の威圧感が陽を押した。
「あ…あの…」
陽は混乱した。
「陽!おはよう…メリー?どうしたの?」
姫は階段から下りて来た。
「ひ、姫!」
陽は救われた気持ちになった。
「この方は姫様の友ですか?」
「そうよ!それ以外に何があるの?!メリーったら!」
{あれ?威圧感が無くなった…姫が来た途端に。}
そして陽は姫を連れて学校に向かった。

「えー…X=2(XY)から…公式3を使い~」
姫は何の問題もなく友達の輪の中に入りった。陽と姫は、一緒に登校したり家に行っていた事が噂で、カップル扱いされない以外は…
そして2時間目、数学の授業が始まっていた。
「ちょっと!こんな所に連れて来てどーするのよ」
中三の女子、高岸真希子が三年男子二人に体育倉庫に連れ込まれた。
「こんな所来たら何するか位わかるだろ?」
体格の良いイケメンが言って肩に手を置いた。
「ちょっと!何考えてるの!?キャ!」
もう一人が高岸の胸に触れた。
「!!!」
高岸は瞼を思い切り開いた。
「助けなんか来ないぜ。なんせ布施の体育の時間だからな!」
高岸の瞳から大量の涙が零れた。
「…嫌っイヤーー!!!」

「終わったー…数学つまんねー!」
陽は伸びた。
「陽はいつも寝てるから変わらないじゃん!」
姫が隣からいった。
「寝てネーよ!それより次体育だから…」
陽は話しから逃げて更衣室に走った。

「やったー!今日バレーだって!姫始めの体育だね!バレー上手い?」
仲の良い同じクラスの佐藤久実とネットを張るために体育倉庫へ向かった。
佐藤は体育委員で授業の前に準備をしなければならない。
そして慣れた手つきでカギのかかった倉庫を開けた。

ガラガラガラ…

「!!…うっうぇ!」
姫達は目に映った光景のせいで吐き気が襲った。
「ひ…酷い…」
グチャグチャに引き裂かれた2人の人間の体があった。
「キャー!!!!」
佐藤は走って逃げた。吐きそうになって口を押さえながら廊下を駆け抜けた。
回りの生徒でも吐き出す者が居た。
「姫!どうしたんだ?!」
陽は姫の元へ駆け寄った。
「ぅうっ…あれ…ぅえ…」
姫の喉に焼け付く痛みが走った。
「まさか…また?!」
陽は姫の背中を撫でた。
バラバラの死体からは切り裂かれたような跡があった。それに壁には無数の傷があった。
「またランポス…」
陽は呟いた。
「ギィヤー!!!」
近くで叫び声が響いた。

グシィヤァー!

血が壁にかかった。
そして腕が足が、辺りに飛び散った。
見えないものの、肉をえぐり取る生々しい音が聞こえる。
「くそ!逃げるぞ!」
陽は吐きそうな姫を立たせた。
突如、恐怖が体に走った。
ランポスの声では無い…

「ドス…ランポス…」

全身を刺す鋭い殺気が陽を襲った。
ダッダッダッ!っと足音が近づいて来た。
「っ!!」
ドスランポスの目が確実に陽達を見た。
黄色く輝く目の中に縦に長い瞳が睨み付けた。
「落ち着け…落ち着け…」
陽は呟いた。
昨日、ゲームを進めて、ドスランポスにあと一歩の所で仕留める所まで追いやったのだ。
逃げる事は出来ると思っていた。
「攻撃までは時間が空く、その後直ぐに逆に走れば…よし!」
陽は姫を抱いた。
「軽っ!俺でも楽に持てるじゃん!」
姫にはあまりない聞こえてなかった。
ドスランポスは陽達に体を向けた。ギシッと床が鳴ると陽は走り出した。
跳び蹴りは難無く交わした。そのまま廊下を突っ切った。
階段を下りて2階から1階へ行き、3年の教室に入った。
「ハァー…ハァー…」
陽は完全に息切れで姫を降ろし倒れた。
「陽!陽!」
姫は体を揺すった。
「姫…疲れただけだから…少し休もう!ハァー…」
陽はガラガラ声で言った。
「うん!」
しかし休みの時間一瞬だった。
再び足音が聞こえた。
「やべー…」
陽は立ち上がった。
「あのロッカーに!」
姫は陽の体を支えてロッカーに入った。
「…ちょっと狭すぎたね…」
2人はほぼ完全密着していた。
「あっちー…」
ロッカーの中は40度を越えていた。

ドーン…

「何!ドスランポスじゃない?!」
陽は小声で叫んだ。ドスランポスはランポスの群れを統べるモンスターで仲間が居てもおかしくない。
「きゃっ!ちょっと苦しい!」
「ごめん!お願いだから静かに~!」
陽はじっと時が過ぎるのを待った。やがてランポスは教室を出て行った…
「ふぅー…暑っちー」
体育着を汗で湿らせた二人が一緒に出て来た。
「何でこんな暑いの~!」
姫は体育着をパタつかせた。
「緊急事態発生!緊急事態発生!皆さん非難室に非難して下さい!」
聞き慣れた国語科の吉井先生の声が流れた。
非難室はココの隣の階段の下だ。
「近い!よし!行こう!」
今度は陽が姫の手を取り辺りを見回した。
「よし!いない。」
陽達は右の階段に向かった。そして曲がり角を曲がったその時!

ギロっと殺気に満ちた瞳が目の前に現れた。

「うわっ!」「きゃー!」
二人とも尻餅を付いた。
ランポスの鋭い牙が陽の
体を狙って来た。
「陽ー!」
姫が叫んだ。
{俺、死ぬのか…}
陽は諦めて目を閉じた。

ズシャー!

肉が裂けた音が響き、大量の血が床に飛び散った。

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