あんのうんワールド

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小説



「陽!陽!目を開けて!」
{?俺死んだんだよな…}
ゆっくりと目を開けていった。
「姫!お前も死んだのか?!」
「よかった…」
姫の瞳から涙が軽く流れた。その涙は膝の上の陽の顔に零れた。
「あれ?でも俺どこも痛くねーし。」
「…それは…」
「姫っ!」
ランポスが姫を目掛けて飛びかかって来た。
「見てて…これが私に友達を作れない理由…」
姫は胸元に右手を翳した。

キィイイイイーンン!

「風の声…」
姫はそう呟くと、ランポスの体は鎌鼬にあったかの様に切り刻まれた。空中からドサっとランポスが落ちて白目になっていた。
「化け物よね…私…」
姫は膝の力が抜け、倒れそうになった。
「姫っ!」
陽は姫を支えてギュッと抱きしめながら叫んだ。
「姫っ!化け物なんかじゃない!その力で守れば良いじゃないか!大切な友達を!仲間を!」
姫はニッコリと笑って意識を失った。
「んっ…ぅんっ…」
姫はゆっくりと体を起こした。地下倉庫のような所に布団が敷いてあり、そのうえに乗っていた。
奥の方から陽や聞き慣れた先生や友達の声がした。
「姫の力を使えば…」
一人が言った。
「それはダメだ!姫にこれ以上辛い思いはさせたくない!」
陽は言った。
「何とか素手で倒せないのかよ!」
「…」
一同が黙った。
「皆でさぁ…協力すれば勝てるんじゃないの?」
担任の渡部先生が口を開いた。
「私…える…」
「姫!」
陽が立ち上がって姫の元へ来た。
「私戦える!…うんん、戦いたい!私の力で皆を守る!」
姫も立ち上がった。
「そうとなれば勝機も充分じゃん!」
同じクラスの小林が言った。彼は戦略性が良く、MHのプレイヤーだ。今は片手剣だが将来的には双剣を使いたいらしい。
「誰か地図持ってないの?」
辺りを見回した。
「あ、俺ある~!やぁ~べ!俺準備良ー!」
2組の山崎がポケットから地図を出した。
「で、作戦は…」
「行こ!陽!」
姫は陽の手を取って軽く走った。
「姫…無理するなよ。」
「大丈夫!私マイナス思考だったよね…これからは明るく生きていくよ!この力は神様が私に与えてくれた護る力!大切にしなきゃね!それに私達の役割はしっかりやらなきゃ!」
「…だな!」
陽達は廊下を走った。既にほとんどの生徒や先生は逃げて、ドスランポス討伐の仲間以外は居ないため、静かだった。
「!!ドスランポス!!」
姫と陽は二人同時に顔を合わせた。陽達は今は2階、1階から確実に階段を登ってくる足の爪の音がする。
「早く報告しなきゃ!」
姫が携帯を開けた。

「お!メール来た!行くぞ今河!」
3組の荒雄が準備運動を終えて軽くジャンプした。彼は背が高く体格も良い。MHプレイヤーで大剣を使う。学校の中で2番目に進んでる。
「待ってました!」
2組の今河も軽く跳ねた。
「陸上部の意地だ!」
二人は強く地面を蹴り駆け出した。
「西階段に居るから…俺らは反対から行こう!」
小林は渡部先生と理科室に走った。
「俺らは職員室の鍵だー!小野!気合い入れて行くぞぉ!小野ぉ!」
パン!と山崎が小野の背中を叩いた。
「俺やダョー…恐えーもん!」
小野光、水泳部であり皆のいじられ屋が言った。
「何言ってんだよ!そんな人形に萌えてないで早く来いよ!」
山崎は小野から小さなドール人形を取り上げた。
「あぁ!!!!!俺の命よりも大切な麗華ちゃん人形、夏だけ限定バージョンの足の裏に麗華ちゃんのサイン入りが!!!」
「命より大切なら俺が持っててやるからお前は俺を麗華だと思って守るんだな!」
「ぬわんだぁとぉ?良いだろう!麗華ちゃんのためなら、例え火の中水の中だ!行くぞ山崎~!」
「なるべくココから離れないように逃げなきゃ!」
「ったく!囮になるのは未だしも、見つけた場所から動かすなだ?…ったく人を何だと思っているんだ!」
「グゥジュルルルル…」
ドスランポスの喉が餌を前にして鳴った。
「おーい!陽ォォ!」
今河の声が先程ドスランポスが現れた階段を駆け上がって来た。
「囮、交代!頑張ってぇ!陸上部のお二人さん!」
姫は手を振り、陽と走って逃げた。
「お前の餌はこっちだ!」
串刺しにされて居るかのような鋭い殺気で恐怖に包まれたが、荒雄は石をドスランポスに投げ付けた。床をドスランポスの鋭い爪がエグれていった。
「次の仕事は…屋上に機具を運ぶ事だ!なんかモンハンの運搬クエストみたいだな…」
「だね、速く理科室に運ぶ品を取ってこなきゃ!」
「オラァオラァオラァ!!!ランポスどしたぁ?この秋葉系最強の麗華ちゃん人形ファンがぶっ殺してやる!」
小野は山崎を勢い良く引っ張り走った。そして曲がり角を曲がった。

ドン!

「通行の邪魔だ!この青いデカブツぅって…あは、あはははは…すいません!」
目の前に2匹のランポスが現れた。
「小野のブワァッカヤロォー!」
山崎は麗華の人形をランポスに向かって投げた。
「Noぉぉおおおお~!」
小野は膝を付いて馬になった。
「逃げろ小野ぉ~!」
山崎が走り出した。
「麗華ちゅぅわぁーん!君は僕がこの命に代えても守ってみせっ…」

パク!

「喰われた…」(山崎)
ムシャムシャと人形がランポスの鋭い口に飲み込まれた。
「…ぉぃ…オイ!お前等…ゆるさねーぞ!」
小野はランポスに突っ込んだ。
そしてタックルをした。
ランポスは少しよろめいたが、直ぐに体勢を戻し、黄色い口バシを小野の目の前で大きく開いた。
「小野ぉ!」山崎は近くの下駄箱から靴を出してランポスに投げ付けた。
少しランポスの気が逸れた。
「!!…小野すぐ来るから少し待ってろ!」
山崎は駆け出して、廊下を曲がった。
「お前なんか必要ねぇー!こいつ等は俺が喰う!ィヤッハー!!」
小野がランポスの爪をくぐり抜け、図書室に逃げ込んだ。
「来いやぁ!」
図書室の椅子を持って、ドアから覗き込んだランポスの頭を強打した。ランポスはよろめいたがお構い無しに小野は殴り続けた。
「馬っ鹿ゃろー!麗華ちゃん返せこのデカブツ!」
そして1体目を狩った。
「ぅぎゃっ!!」
椅子で防いだものの、後ろから飛び掛かるランポスの爪は鉄の面を貫いた。
小野は今の攻撃で意識が正常に戻った。
「あわっ、わわわわわ!…ぎゃーぁあああ!」
自分がどれだけ無謀な事をしていたのかを意識し、小野は涙を流した。じりじりと間合いを詰められ、ついに小野の背中は本棚に触れた。
「ま、ママァー!!!」
小野は叫んだ。

ドカ!

「ママ、参上!」
そこには広辞苑を片手にランポスの後頭部を強打した、山崎がいた。
「あ、あー…助かった~!」
小野はへたへたと座り込んだ。
「俺カッコイー!凄くね!ランポスやったよ!うわ、サイコー!」
山崎は広辞苑に頬を擦り付けた。

「皆大丈夫かな…山崎達が心配なんだよな…」
陽は廊下を走り、姫に言った。
「ランポスに会ってないと良いけど…」
「生きてたら会ってないだろうな。」
2人は理科室の前に来た。

ガラガラ…

「陽君!準備出来てるよ!後は鍵さえ来れば!」
小林が渡辺先生と機械をいじりながら言った。

ガラガラ…

「山崎、小野!ただ今参りましたー!」
「よーし!鍵も揃ったし!反撃の始まりだ!」
陽はぐっと拳に力を入れた。


「重いなー…これ…」
陽が両手で機械を抱え込んで静かな廊下を歩いた。
「あと少しだよ!頑張って!」
姫が隣で歩き、小林と渡辺先生は後ろを、山崎、小野は前の見張りだった。目的地のプールは屋外にあり、普段しまっていて鍵が必要だった。
「前方にランポス一体!」
山崎が言った。
「これに火着けて使って!」
小林がマグネシウムリボンとライターを投げた。
「オッケ!任せろ!」
山崎は火を着けて、ランポスの目に投げ付けた。
「皆早く走って!」
渡辺先生が言った。
「くっそ!走れねー!これ重いんだよ!」
「ちょっと待って。」
姫は胸に手を当てた。体が光り音が響いた。
「…風の羽」
姫の手が陽の足に向けられた。
「か、軽い!よっしゃ!走るぞ!」
陽は少し跳ねた。
「うん!頑張れ!」
ニコっと笑って姫は陽の背中を軽く叩いた。
「着いたー…サンキュー、姫!」
「どういたしまして!さ、山ちゃん早く開けて!ランポス来ちゃうよ!」
ガチャガチャ鍵を開ける山崎に姫が声をかけた。
「…やば、開かないんだけど!間違えた?」
「はぁ!何だよそれ!俺等の鍵を取りに行っていた苦労はどうなるんだよ!」
小野が叫んだ。
「貸してみろ!俺が開ける!」
鍵を取り、力で開けようと小野が頑張った。
「私がやる!」
「…風の声」

カキィン!

鍵が壊れ、ドアが開いた。
「ナイス!姫!」
陽達は急いで中に入った。
「先生!小林!準備まだ?!」
山崎が叫んだ。小野と共にランポスの押してくるドアを塞いでいた。
「私も行かせて!」
「駄目だ!それ以上力を使ったら、いざというときに使えないだろ!…姫はココで、アレの準備が終わり次第、荒ちゃんと今ちゃんにメールしてから俺にメールしてくれ!」
「…うん。でも!絶対に無事に帰って来てね!」
「おうよ!」
陽は走ってもう一つの扉の鍵を開けて外に出た。
「くっそ!コイツどんだけ体力あるんだよ!…俺そろそろキツイ!」
今河が反復運動でドスランポスの飛び蹴りを交わした。
「教室に逃げるぞ!」
荒雄が攻撃を回避した今河に叫び、合図した。
「わかった!」
今河は荒雄に続いて教室に入った。逃げる今河を狙いドアに向かってドスランポスが跳んだ。
「オラ!」
荒雄がドスランポスが入ってくる瞬間に思い切りドアを閉めた。

ガッシャーン!

「やったか?」
ドアに挟まれ、ぐったりと倒れるドスランポスを荒雄が覗き込んだ。

ギャアァア!グギャアァア!

「わっ!」
ドスランポスが急に立ち上がり黄色く鋭い口バシを大きく広げ、咆哮した。
恐ろしく鋭い殺気に全てを奪われそうだった。
体に力が入らず、焦りが生まれた。さっきまでは、ドスランポスが遊んでいるだけだと思っていたからで、攻撃を受けて、殺意が生まれたのだ。
「た、助け、助けて…」
荒雄の声にも力が入らず声は既に声で亡くなっていた。ドスランポスが口を広
げ、座り込む荒雄の首に噛み付こうとした。
「うわぁあああ!!」
今河が椅子を振り上げドスランポスにたたき付けた。ドスランポスは叫び体を反らしたが、再び体勢を立て直し今河の方に向きを変えた。
殺気は今河をも包み込んだ。
「今河!荒雄!大丈夫か!!」
陽が200メートル程先で廊下を走っていた。
「よ、陽!」
今河が口を開いた。

ギャアァア!

ドスランポスは今河に噛み付いた。
「うわぁ!」
右手で迫る口を防いだ。
牙が腕の肉に食い込み鈍い音を起てた。血が飛び散り、今河の顔が一気に歪んだ。
「今河ぁ!」
荒雄が気合いを入れてドスランポスの足を蹴った。
少し効いたのか足を一度踏み変えて、荒雄に強靭な足が迫った。
「うぐぁ!」
爪は何とか回避したものの、風を切り裂く鋭い爪は皮膚はもちろん、肉をも切り裂
いた。
勢い良くロッカーにたたき付けられ、荒雄は体を反らしぐったりと倒れた。
「こっちだドスランポス!」
陽は爆竹を床に投げ、パン!と音を起てた。
ドスランポスは向きを廊下に変えて、ギロリと睨み付けた。
ジリジリと殺気が陽を襲った。
「荒雄、今河…くそっ!」
全身を貫く殺気は体の自由を奪った。
恐怖の中、飛び付くドスランポスを交わし、陽は左に避けた。
「この!」
爆竹を青い鱗に当てて逃げた。
モンスターにとっては、攻撃にすらならないが…陽は教室に駆け込み、
「いくぞ!今河と荒雄の仇!」
陽は覚悟を決めて掃除用具入れから箒を取り出した。
以前倒したランポスと桁が違う事くらいは百も承知だった。ドスランポスはいつもより大きな咆哮をし、大勢を下げた。
「やばそうな予感…」
全身が震えた。
廊下から響く足音。
そして殺気を伝えるいくつかの咆哮…
ランポスだ。
「マジ…かよ…」
声が出なかった。瀕死の二人を守りながら戦うのは不可能だった。
「くっそー…」
唇を強く噛み、口の中に血の味が広がった。
「ゴメン…」
陽は呟き、ドスランポスに向かって走った。
「こっのヤロォー!」
箒を振ったがドスランポスは低い体勢から一気に飛び上がり空中で足を伸ばし、陽を蹴り飛ばした。
「ぐふっ…」
箒でガードしたが爪により皮膚が切れた。壁に強くたたき付けられ、陽は背中に強い痛みを感じた。
「く…そ…」
箒を使い立ち上がると、周りにはランポスが5体居た。
陽はもう動けなかった。背骨を強く打ち、箒でやっと立てる位だった。
「誰も守れなかった…くそ…」
涙を流し、陽は膝を着いた。
「オラオラオラ~!」
聞き慣れた声がいくつも聞こえた。
「康二、山崎、小野、神戸、姫…」
「いきなり約束破らないでよね!」
姫が叫んだ。
「親友ってのは助け合うもんだよな!」
康二が言った。
「ったく~…世話焼かせんなよ~!」
「麗華ちゃん人形喰った奴の仲間は皆殺しだぜ!いぇい!」
山崎、小野がいった。
「よう!俺たまたま遅刻したんだ!まさかこんな状況だとはね…」
神戸は始めて目にするモンスターに怯えなかった。
普通は殺気に押され、動けなくなるのに…
「皆、行くゾォオー!!うらぁああ!」
康二が持っていた椅子を振り回しランポスを薙ぎ倒した。
強打された部分外し鱗もろとも凹み、ランポスは泡を吐いた。
「たぁあああ!」
山崎は持ち出した高跳びの棒でランポスを付いた。
「麗華ちゃんの仇~!!!」
小野は窓ガラスを外し、ランポスに襲いかかった。
額縁の中心にランポスの頭が通り、割れたガラスがランポスの硬い鱗を切った。
「こぉんのヤロっ!」
神戸は恵まれた素晴らしく良い体格で、砲丸投げの選手だった。
普段使っている砲丸を持ち神戸は投げるフォームでランポスを思い切り殴った。
ランポスは爪で防いだが爪は砕け、砲丸はランポスの黄色い口バシをも砕いた。
「二人とも!大丈夫?ねえ!返事して!」
姫が二人の傷口に持って来たタオルを巻き、止血した。
「…私も…戦わなきゃ…守られてばっかりじゃダメ…」
姫は傷付いた二人の元を離れ、皆が戦う少し広めの廊下に出た。
恐怖で足が震え、力が入らない。
「うわっ!」
ドスランポスが駆け出し、廊下を素早く走り抜けた。
「姫!危ない!!」
康二が椅子を虫の息のランポスにたたき付け、ドスランポスを追った。
「きゃあ!」
鋭い爪が姫の肌を切り裂き、真っ赤な血が切れた皮膚の間から流れた。
しかしドスランポスは途中で跳ね返され、攻撃は完全には届かなかった。
「陽!」

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