あんのうんワールド

あんのうんワールド

小説




「着いた…ここに、姫が…」
富士山の頂上を見上げ気合いを入れ直した。
「アンちゃん無理しなさんな!その細い足、肉切れそうやで!」
近藤は陽の足を叩いた。
「ぃっ…ばっ馬鹿ヤロ!肉なんてそんな切れねーよ!」
ロープウェイに乗り、2人は席についた。
「わかってるっちゅーねん!その足見してみ!」
陽はゆっくり足を伸ばした。
「ワイはこれでも健康管理係やで!任しとき!」
手際良く脚をマッサージしてみるみる疲れが取れた。
「このマッサージは一時的にしか疲れは取れへんからあんまり長引かせんように気付けなはれ!」
「わかった。」

ロープウェイから降りると一気に頂上に走った。
「姫ー!」
陽は巨大な翼を羽ばたかせる火竜リオレウスを睨んだ。その脚にはぐったりとしている姫が掴まれていた。
「来たか…待ちくたびれたぞ武蔵…」
姫の父親がリオレウスの頭に乗り、言った。
「すんまへんなー!でも、しっかり連れてきましたで!相沢陽はんを!」
「お、おい…何だよそれ…連れてきましたって…」
「馬鹿め!姫の最後を見せるためだ!」
「なっ…最後?!」
「ゲームの世界とのゲートを開くんは姫ちゃんの強力な力が必要なんよ。力使ったら姫ちゃん死んじゃうんけどな!」
「嘘だろ…近藤、お前騙してたのかよ…」
「アンちゃん気付くの遅すぎやで!さ、作業に入りまっか!ほな蓮寺はんはリオレウスで陽はんを頼みますわ!この作業はゲートに強い衝撃が加わると止まってしまいまっせ!」
「ふん!リオレウスの前でこんな餓鬼に何が出来る!行くぞ!吠えろリオレウス!」
凄まじい咆哮が響きリオレウスは姫を放して陽に向かって襲い掛かった。
近藤は姫を抱えると地面に優しく寝かせた。
「姫は、俺が助ける!」
鱗を握り陽は襲い来るリオレウスの爪を回避した。
「死ね!」リオレウスは体を捻り、長い尻尾を振った。
「いっくぞ!」

ガキィイイン…

鱗は大剣になり、大きな尻尾を防いだ。
「きゃああああ!!!」
姫の体は浮き上がり服が裂けた胸元から黒い煙が上がり、それは姫の正面にある小さな穴に向かって進んでいった。
「姫!!」
「苦しぃ…暗い…恐い…陽…助けて…」
姫の閉じた目から涙が零れた。

{瑠璃の戦士よ…姫を守るんだ!}

ドックン!!

「うわぁああああ!!!」
全身に痛みを感じ、陽は遠ざかる意識を一所懸命に保った。
「死ね死ね死ね!!」
蓮寺はリオレウスの頭を軽く叩いた。リオレウスは首を反らした。
口から漏れる炎がその威力を表していた。

ズッドォオオン!ドォオオン!ドォオオン!

3つの火炎弾が空気をも焼いて飛んで来た。

ジュッバァアアン!!

地面は熱で焼かれ、黒くなった。
「奴はどこだ?」
「蓮寺はん後ろや!」
近藤が叫んだ。
「うあああ!!」
瑠璃に輝く大剣は輝きを増していた。
薙ぎ払った大剣はリオレウスの脚を叩き斬った。
「何?!えぇい!踏み潰せ!!」
リオレウスは足を上げ陽を踏み潰した。
「ぐっ!こんのっ!」
大剣を横にし、大きな足を防ぐ。
「ぅおおお!!」
前転し、再びリオレウスの後へ回った。背中に大剣を担ぐ。
リオレウスは陽の方を向き直した。
「覚悟しろよ!姫を傷付けた奴は許さねー!!」
大剣を一気に地面に振り下ろし陽は浮上がる。
勢いで剣を抜きもう一度回転した。リオレウスの顔が目の前に来た。
「うりゃああ!!」

ザジュッ!!

大剣はリオレウスの鱗が最も薄い頭を叩き斬った。
鱗が飛び散り、血が噴き出た。
「まだだ!!うぉおおりゃっ!!!」
体を思い切り捻り、大剣を引いた。
そして全身を使って思い空中で切り薙ぎ払った。

キィイイイイン!!

鱗と当たる瞬間、瑠璃の光りが全ての視界を奪った。
次の瞬間、リオレウスは有り得ない力でゲートへ吹き飛ばされた。
「な、何ぃー?!」

バジジジジジ!!!バァアアンン!!

ゲートは姫の父、蓮寺とリオレウスを飲み込み、煙を上げた。
そして姫から出ていた黒い煙は止まった。
「うっ俺…ひ、姫!!」
「陽はんよーやりましたわ!どうやった?ワイの演技!敵を騙すならマズ味方からってな!あっははは!!」
「ははっ…笑えねーよ!…!?」
陽はふらつく足を倒れる姫の所まで運んだ。
「姫!姫!!」
近藤もゆっくり姫に近づいた。そして破れた胸元に指を置いた。
「あのさ…こんな場面で言うの難だけど…わざと胸元で脈測ってない?フツー首筋とか手首だよね?」
陽は拳を奮いながら尋ねた。
「生きてるで!」
「思い切り息してるだろ!!」

ゴン!!!


それから姫は目を覚ました。

「む、武蔵ニーちゃん!何でココに?…けほっ!」
「武蔵ニーちゃん?」
「ワイはただの体調管理係やて!心配なさらんで!」
近藤は陽を叩いた。
「べ、別に心配なんてしてねーよ!」
「そんな事ないやろ?!姫のその破れた胸元、気にしてるんやろ~!」
近藤が指差した。
「え?きゃー!!」
姫は咄嗟に腕で隠した。
「いや、ち、違う!見てなんかいな…」
「変たーい!!」

パン!!パン!!
「姫ちゃん厳しくなったなー!前は一緒にお風呂にだって~」

パン!!

「武蔵ニーサイテー!ふんっ…」
姫はそっぽを向いた。
「なんか違う意味で泣けてくるよ…」
「そんな事言うてる暇なさそうやで!あれ見てみ!」
武蔵が指差した。

遠くに見えるさっきまで居たビルが半分崩れていた。
「あのオッサン創っていたモンスター全部放ちおった!」
「何だって!?」
「やばいのはそこや無い!どうしてあっちの世界からモンスターが来るかや!実はあのモンスターが狙ってたのは姫ちゃんとワイ等の創った人工モンスターなんや。」
「どうしてなの?」
姫が言った。
「人工モンスターは要するにコピー。自分のコピーが創られて本物が怒っとるんや!」
「姫を狙う理由は?」
「それはまだ言えへんな。時が来たら教えたる!それより!今はこの穴から来るモンスターどうにかせんと!」
「?!」
「さっきより広がってる?!」
「向こうでモンスターが広げとるんや!こっち来て山から出たら厄介やで!その前に人工ブッ潰すか来るやつ皆狩らなあかん!!どうする?」
「陽…」
「俺は…」
「陽!私と一緒に人工モンスター壊すの手伝ってくれる?」
「姫…」
「確かに陽はんの姫ちゃんを戦わせたくない気持ちは分かるで!でも体動かさないと成長が~ぐふっ!」
「変態!!」
姫の肘が武蔵の腹に食い込んだ。
「陽!私のに言ったでしょ?この力は大切な仲間や友達を守る為に使えって!」
「姫…わかった!行こう!」
「そーと決まれば!アンタ等まさか素手で勝とうって言うんかい?MHのメモリー携帯あるやろ?貸してみ!」
武蔵は2人から携帯を取った。
「武蔵兄ーどうするの?」
「まあ見てなはれ!姫ちゃんクックシリーズにバトルリーヴね!武器は、お!ワイ特製のチャクラム!優しーね姫ちゃんは!」
「武蔵兄ーがその武器だけ少し強く創ったからでしょ!使いやすいし…」
「おいおい!チャクラムって何だよ!聞いたこと無いぞ!」
「姫ちゃんの武器はワイが特別に創った武器で、移動性と攻撃範囲に優れた武器なんや!さ、お二人さん瞬きしないように目を開けてるんやで!来い!姫ちゃんの装備~!」
武蔵は黒い穴に向かって携帯を差し延べた。

ジジジジジジ…ギューン!

目の前にクックシリーズの防具やチャクラムと言われる中心に穴の開いたドーナッツ型の武器が飛び出した。
「すごい!私の装備が…」
姫は武器や防具を触ってはしゃいだ。
「そやろ!次は陽はんの~!」
同じように陽の装備が飛び出した。ハンターシリーズの防具に武器はアギトだった。
昨日、姫の事で寝れずにMHをやった所、見事ドスランポスを倒したのだ。そしてガレオスの出てくるクエストをやったのだ。
残念ながらキモが採れずにクエストは失敗したが、魚竜の顎を手に入れてアギトを造る事が出来た。
始めて見る実物の自分の装備に二人は興奮した。
「ほな着替えてみなはれ!」
武蔵は茂美に二人を押し入れた。
「さーてワイは姫ちゃんの着替えを調査しに行きますねん!」
姫の着替える茂美にこっそり回り込んだ。
「これ、どうやって着るの?やっぱり上脱がなきゃ暑いよね…」

{そうだ~!脱ぐんねん!早く~!} (近藤武蔵の願い)

「武蔵兄ー見てそう…」
キョロキョロと姫は辺りを見回した。

{見てないでー!だからはよう着替えてー!}

「…気のせいだよね!よいしょっと…」
姫は服を脱いだ。

{キターー(・∀・)ーー!!}

「何やってんだよ…」
後に陽が怒りを満たして立っていた。

{こっちもキターー(´Д`)ーー!!}

武蔵は口をパクパクさせてウンコ座りしていた。
口の前で指を起てて合図している。
そして茂美の中を指差した。
「中に何か居るのかよ…」
陽はガサガサと中を覗いた。
「あっ…ヤベ…」
「へ?…き、きゃーー!!!」
近くにあった石が陽の顔面に食い込んだ。
「陽の馬鹿!変態!阿保ー!」
姫は脱いだ服で体を隠して叫んだ。
「陽はん、ある意味不幸でんな!」
「お前のせいだー!!馬鹿やろー!!」
二人は装備を付けて横に並んだ。陽の装備は一般的で、材料も比較的手に入りやすい。
武器は骨を利用した大剣で、刃に鋭い牙が付いている。
姫の装備はイャンクックと言われる飛竜の鱗などを使った防具で、多くのハンターが一度は装備する防具だ。
「お二人さん似合ってますぜ!さ、とっとと下りてブッ壊さんと、この穴から飛竜出て来ますで!」
武蔵は二人を急な坂へ押した。

「きゃっ!」「おわっ!」

二人はバランスを崩して坂に落ちた。
「モンスターは全部で13体、明日まではワイが杭止めますねん!それまでに戻って来てくだはれ!」
武蔵はニコニコしながら手を振って二人が落ちるのを見ていた。

「きゃっ!きゃっ!」「こっのっヤロっ!」

背中の大剣を地面に刺した。
「姫!!」
片手で大剣を地面に突き立て、片手で姫を掴んだ。
「ちょっと!足掴まないで!」
「今それ所じゃ!」
「恥ずかしいじゃない!!」
「動くな!下崖!!」

ズズズ…

「とまった…」
「そ、それよりこの態勢どうにかしてよ!中釣りだから頭に血が上る。」
「ったく!ゆっくり手に掴まれ!」
姫は陽の腕にしがみついた。
「あそこまで移動しよう!坂が緩くなってる!」
「陽…良いけど私、高い所ダメ…」
姫は泣きそうな声で言った。
「分かったよ、ほら目を閉じて!」
「変な事しないでよ!?」
「しねーよ!ったく…足踏み外すなよ!」
陽はゆっくり横に進んだ。
「ゴメン…足手まといで…」
「姫?」
「戦うときは頑張って役に立つから!」
「役に立つって…姫…俺はさ…何か胡散臭いんだけど、俺は…姫を守りたくて強くなれる気がするんだ!…だから姫には危険な事はして欲しくないし、足手まといなんて言うなよ!」
「うん…」
二人は緩やかな斜面に出た。
「走るか!」
陽はニッコりと笑い姫と共に走り始めた。


「はぁ…はぁ…姫…少し休まないか?」
陽は膝に手をつき、息を整えた。
「え?もう?」
「鎧とか大剣とか…重い…」
「そっか…私はチャクラムの効果で体力減りにくいんだ!」
「くっそー!まだ全然先なのにー!」

ゴトゴト…

「??…きゃ!」「わっ!」
二人は何かに強制的に乗せられた。
「あ!あなた達は!?」


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