しがないリーマンの徒然HobbyLife!

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ムラサメ戦記第三話

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ムラサメ戦記 第3話「嵐の予感」


――――突然の来訪者。それは・・・・
バズーカとミサイルの応酬だった!?
「ちょっ、これ一体どういうことですかっ!」
リョウスケは素早く戦闘機形態に変形させるとその場を離脱した。
発射された弾頭は、一直線にこちらに向かってくる。
同じように、皆危険を察し、離脱する。
―――そして着弾。
凄まじい爆発が次々に起こり、辺り構わず噴煙が立ち昇る。それと同時に被弾したMSの破片が尾を引いて、はじけ飛んでくる。
「お前なあ!俺たちを殺すきかっ!!」
俺は思わず叫んでしまった。
そこには、さも満足げに仁王立ちする紅蓮のM1アストレイとその部隊のMSが駆けつけていた。
「なははーっ、わりぃ、わりぃ。敵がいっぱい居たもんだから。ついな。」
相手は一向に悪びれている様子はない。
「お前らなあ?伊達に羽付けてんなら上の敵を叩き落としてくれよ。地上は俺たちに任せりゃいい。」
(・・・・・よりによってコイツが助っ人とは・・・)
モニターに映し出された人物を見て、俺はため息をついた。
「あーっ!?なんだそりゃ?そのリアクションは?」
トレードマークである黒いサングラス越しに表情が伺えた。
―――コイツは、ウェイン・ラッセル。俺と同期のMSパイロットで、今はM1アストレイ部隊の隊長をやっている。昔は腕を競い合ったものだ。ちょっとイカレてるのがたまにキズだ。腕はいいんだが・・・・・
そういえば訓練中にも弾薬を使いすぎて教官に大目玉を食らったこともあったな・・・・
と、そんなことを考えつつ俺は返答した。
「増・援・感謝する。つーか今頃何しに来た?お前はバズーカぶっ放したいだけだろうが!」
いつの間にか俺も砕けた口調になっている。
「かーっ、それが助っ人に対する言葉かあ?つれないねえ。まー、結果オーライでいいだろ。」
実際、辺りにいたMS軍の大半は腕や足を吹き飛ばされ、半ばスクラップと化していた。
「肩部ミサイルランチャーに脚部ミサイルポット、手持ちにバズーカですか・・・・いい仕事してますね・・・・」
キョウヘイは具にヤツの機体を観察中だ。
(これ以上反論しても仕方がないので、ご好意に応えるとしよう。)
「戦況は整いつつある。これより我が隊はこの場を離脱する。一旦補給に戻る、いいな。」
了解、という全員の返答を待たずして、俺はドックに向け機体を発進させた。

「さて、続きをしようかお前ら。行くぜっ!!」
ウェインは、逆立てた髪を振りながらM1アストレイ用にカスタマイズされたバズーカの照準を敵機に定めた。

× × × × × × × × × × × × × × × × × × × ×

――――地下格納庫内。無機質な金属感が寒々しいドックでは、照明のほのかな明かりだけが暖かさをかもし出している。
「で、空対地ミサイル装備は3機のみ、お前さんのとリョウスケにはミサイルランチャーだな?」
おやっさんが神妙な面持ちで告げた。
「ええ、ソイル達には敵艦をやってもらいます。俺は囮になろうかと。それがどうかしましたか?」
俺はダンの表情の変化が気になった。
「いやな、艦をやるっていっても、一筋縄にはいかんだろ?ムラサメは通常ボディだ。バルカンでも落ちるぞ。」
こうやって心配してくれる所がこの人の良さでもある。こんな具合で、ダンに対してはいつも敬語を使っている。(結構年上なので当然といえばそうだが・・)
「確かに。でもこの作戦は、上空からの一撃離脱で終わらせます。万一、艦載機が出てくれば多少のお付き合いはしますけどね・・・」
「もっとも・・・・」
俺は話を続けた。
「艦を落とせるかどうかは実際のところ問題ではないんです。今前線に出しているMSを自艦警護に戻させれば、本土の戦闘は幾分楽になるでしょう。ただし、時間稼ぎになることは必然ですが。」
「・・・・・・なるほど。お前さんも考えたね?」
ダンは腕組みしたまま頷いた。
「それで、作業の方は?」
俺は肝心なことが気になり、尋ねてみた。
「心配には及ばんよ。話してるうちに終わる。」
(いやはや、こういう所は流石職人だな。)
俺は素直に関心してしまった。

―――そんな時だった。
「おやっさん。俺の機体、キックペダルの踏み込みがちょっと硬いんだけど。」
キョウヘイがいつの間にか背後に現れていた。
「あほか、今調整する時間なんてないだろうがっ!」
ダンは、キョウヘイの頭の上から声を浴びせた。
(やれやれ・・・)
これがいつものやり取りなのだ。
キョウヘイはがっくりとうな垂れて自機の方へ戻って行った。

× × × × × × × × × × × × × × × × × × × ×


――――――帰還から十数分。俺たちは既に発進カタパルト手前でスタンバイしていた。
「いいか?ミッションは先ほど伝えた通りだ。本作戦には重要な意味がある。一発一発しっかり狙っていけよ。」
俺は、ブリーフィングの内容を再度各員に通達した。
「万一、MSが邪魔なようなら、俺とリョウスケが相手をする。その間に、ソイルをリーダーにジュウシロウ、キョウヘイが艦を狙え。いいな。」
「了解っス。任せてくださいよ、隊長。」
ソイルはリーダーに指名され、ご機嫌だ。
「了解しました。・・・・しかし、隊長。敵艦攻略にはご自身が適任ではないでしょうか?」
一方のジュウシロウは、若干不服があるようだ。
「まあ、それはそうだが・・・・。何分この機体カラーだと囮として相手の目を引き付け易いからな。それと、お前ならソイルのサポートが十分にこなせると思ったんだが・・・・」
俺は、さりげなくジュウシロウのフォローをしておいた。
「分かりました。無論、命令には従います。」
(・・・・・・確かに、お前に任せた方がいいのかもな。)
ただ、彼の性格では、おそらく厳格な戦術になるだろう。それでは、ソイルが付き合いきれなくなる。俺もいろいろ思案しているのだ。分かってもらいたい。

――――いざ、発進しようとした時。
コンコン、と外部からキャノピーをノックする者が居た。
俺は急いでハッチを開放し、その人物の方を見やった。
そこには、おやっさんこと、ダンの姿があった。
「悪いな、最後に一つだけ言っておきたい。分かってると思うが、命は無駄にするなよ。」
定かではないが、俺はダンの力強い瞳の奥には深い哀愁を讃えているように思えて仕方がなかった。
そういえば、俺は以前に、ダンがMSパイロットとして戦場に出ていたということを聞いたことがある。その時に何かがあったのだろうか?
俺は、無言だが強く、そしてゆっくりと頷いた。
「時間をとらせたな。後はお前達次第だ。しっかりやれよ!」
そう言い残し、ダンは去っていった。

俺は、キャノピーを閉じ、発進シークエンスを開始した。
戦闘機形態のムラサメは、誘導員の指示に従い、ランディングギアをゆっくりと回転させながらカタパルトに入ってゆく。
機体の直ぐ後方では、滑走路とドックがシャッターによって遮断される。
そして、機体の背部に集中した推進器の出力を徐々に上げていく。
眼前に広がる、外界へと続く長いレーン。開け放たれた発進ゲートから、光が徐々に差し込み、よく磨かれた装甲に反射する。
最後に、前方のランプが赤から緑へと点灯し発進が許可される。
(さて、今回の戦いはいつまでつづくのやら。)
ふと、そんな考えが頭をよぎった。
「ショウ・マツカゼ、ムラサメ出るっ!」
全快の噴射。滑り出す機体。
しかし、機体が浮き上がるまでには急激なGが押し寄せる。
「くっ・・・」
わずかに歯を食いしばり、その時が過ぎるのを待つ。グリップを握る指にも力がこもった。
その直後、浮き上がった機体は真っ直ぐに空へと駆けていった。

× × × × × × × × × × × × × × × × × × × ×

「みんな、遅れるなよ。」
編隊飛行を組んだムラサメの一団は、高高度を南南東の方角へ進路を向け、飛行していた。
どこまでも続く真っ青な空のキャンバスに、機体は白い軌跡を描いていた。
綿菓子のように複雑に絡み合った細かな雲の切れ目から、下界が窺えた。しかし、戦闘の状況までは確認できなかった。
俺は別のムラサメ部隊にも連絡を取り、ミッションを指示する。

―――しかし、事は悠長に運ばなかった。
「・・・・っ!?」
俺は、妙な殺気を感じ機体を90°寝かせ、進路をわずかに左に反らした。
と、同時にビームが雲を貫く。そして、一閃の光は雲の輪を作り、天へと注がれた。
こちらから多少の距離はあったが、間違いない。敵MSのものだろう。
レーダーには敵機の存在を示すアイコンが表示されており、急激に接近してくるのが分かった。
「ちっ、気付かれたか?」
俺は、やや速度を落とし敵の来襲に備えた。
案の定、紫色のMSが姿を現す。MA形態のバビだ。
相手は、こちらにひとしきり攻撃を加えたあとMS形態に変形した。
俺達は、フォーメーションを崩し、別々の方向へ散開した。
「まずいな・・・ ソイルっ!お前達は先に行け、ここは俺達がどうにかする!」
「落ちないでくださいよ、隊長。ワタシ、タイチョーイナイトナニモデキナイヨ。」
ソイルはこんな時でも冗談が言える。緊張感がないのかマイペースなのかは判別できない。
「御託はいい。早く行け。」
俺は努めて冷静に応えたが、多少の焦りはあった。想定の範囲内とはいえ、これほど早くに発見されるとは思わなかったのだ。
(それだけ、敵も深入りしてきているということか・・・)
命令を受けた3機は、大きく旋回し次々と雲の中へと消えていった。
(うまくやってくれよ・・・・)
俺は彼らの姿を見届けると、ミッション成功を願いつつトリガーを引いた。

 ――――To be continued



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