勝手に最遊記

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Comouflage ―14―



「彗!目をそらせたら、殺られるぞ!アイツら妖怪だと思えっ!!」
そう彗に叫んで、自分のポケットに手を突っ込んだ。

「有り難く、受け取りなっ!!」白い包みを三人に向かって投げつけた。

「笑止!・・こんな物っ・・!」投げられた包みをはじき飛ばす――・・・が、バフウッ・・・包みの中から粉が舞い散る。

「!?・・かっ・・目がっ・・!!」
「い、痛いぃっ!!目が開けられんっ!」
「っ・・喉が・・呼吸がっ・・。」

のたうち回って苦しむ三人。

「・・・大桷・・コレは・・?」唖然として、彗が聞いた。
「あ?まー色々。山椒とか、塩とか、胡椒とか、七味とか・・・。」思い付くまま、入れたらしい。

「・・・貴様っ・・卑怯者っ!!」目を潰されながら、よろよろと立ち上がる陳捻。

「はんっ!妖怪相手に手段を選んでいられるかっての。
妖怪ってのはな、嗅覚や視覚が人間以上に鋭いんだ・・・有効な手段だぜ?」

そう、短い期間ではあるが、三蔵達に出逢う前は一人で旅をしていたのだ。
非力な桃花なりの、対抗手段であった。

「ぐっ・・・このっ・・!」涙を流しながら、桃花に掴みかかろうとする陳捻に、

【ゴキッ】と嫌な音をさせて股間を蹴り上げた。

「・・・・・かっ。」陳捻の顔が青ざめていく。

股間を抑え、頭を下げた所に

【ガゴッ】・・・左側頭部に回し蹴りを放った。

ドッッタアアァ・・・ン・・陳捻の巨体が、床に沈んだ。

「なっ?大きなヤツでも、脳みそを揺らせば脳震とう起こすんだってば!」
ニコニコ笑いながら彗に話し掛ける。



「・・・あの技は、男には出来ないよな・・。」痛そうに?悟浄が言った。
「桃花には、戦闘能力無いって思ってましたけど。」
「違う意味で強ぇ・・・。」
「安心するな。・・・未だこれからだ。」目を離さずに三蔵が言った。

彗の方へ、顔を向けていた桃花。
自分の後ろに忍び寄る影があった事に気付かなかった。

「死ねっ・・!!」

溢れる涙で眼を開けた頓丙が、背後から桃花の首を締め上げる。

「――――っ!!」息が出来ない。

必死に手を外そうとするが、首にかかった指がめり込んでいく。爪先が床から離れ、体が浮く。
顔色が土気色に変色していくのを、彗が呆然としてみている。


「桃花っ・・!!」
たまらず叫んで、飛び出そうとする悟浄の体を三蔵が制止する。「三蔵っ!?」


「彗・・・お前は何をしている?」

棍棒を抱え、呆然としたままの彗に三蔵が言った。

「アイツ・・死ぬぞ。」
「!!・・三蔵様っ!どうか、大桷をお助け下さいっ!!」

「・・・・・。」三蔵は悠々とマルボロを取り出した。
「私には・・出来ません。どうか三蔵様と、お供の方々で・・。」

「馬鹿か、てめぇ。」紫煙を吐きながら、「アイツが選んだのはお前だ。・・アイツが助けを求めてるのは誰だ?」
「――――!!」

桃花は必死に手を伸ばしている。
「・・っ・・・。」声にならない声で・・・自分を呼んでいる。

「うっ・・・うわああぁっ!!」棍棒を握り締め、頓丙に突っ込む。

ダアンッ!!床を蹴り、桃花を捕らえている頓丙の頭に棍棒を叩きつけた。

【ガキィンッ】・・・鈍い金属音と共に、頓丙の体がゆっくりと桃花の体から離れ、そのまま床に倒れた。


「っ・・かっ・・・ゴホッ・・。」背を丸め、苦しそうに息を付く桃花。

「大桷っ・・大丈夫ですか!?」彗が走り寄ってくる。

「だっ・・だいじょ・・ぶ・・。」息苦しさの余り涙が溢れてきたが、彗になんとか笑顔を見せる。

「すみません・・私が不甲斐ないばっかりに・・。」頭を垂れる彗に、
「・・へっ、気にすんなってば。・・・すげー強いじゃん?」軽口を叩いて見せたが、

「彗っ・・後ろだっ!!」

完徹が、棍棒を持って立っていた。




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