勝手に最遊記

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Promise ―19―


八戒はニッコリと微笑み、
「良かった。気が付いたんですね、桃花。心配しましたよ?」
八戒は、未だ悟浄に乗っている桃花をそっと抱き起こした。そして、

「悟浄?僕は貴方にタオルを濡らしに行っている間、桃花を見てくれって言っただけ何ですけど。」
明らかに桃花へ向ける微笑みとは異質の笑みを、悟浄に向けた。

「だから・・俺は何も・・・。」怯える悟浄を無視し、

「ドコか具合の悪い所はありませんか?」桃花の様子を窺う。
「えっと・・ちょっと頭が痛いんだけど、ソレ以外は別に。」
そうですか、と、八戒が安堵の息を吐いた。

「三蔵ー!桃花は大丈夫ですよ~!」八戒の言葉に、桃花が振り返った。

少し離れた岩陰に、三蔵が立っていた。いつものように、不機嫌な顔で。

「・・・三蔵っ。」思わず桃花は走りだした。

「さんぞーっ!」桃花は三蔵に向かって飛び付いたが・・スッッパアアアァァンッッ
・・・・・「カウンター・・ですかっ。」思いっきり、ハリセンを喰らった。

「・・三蔵!桃花は起き上がったばかりなんですよ?」八戒が非難する。
「――フンッ。目覚ましには丁度いいだろう。」言い捨てて、ソッポを向く。
ヤレヤレと首を振りつつ、
「本当に、大丈夫ですか?」再度、八戒が桃花の顔を覗き込む。
「う、うん。今のがカナリきいてるけど・・それより、何があったの?」

良く判らない――――けど、とても懐かしい気持ちがする。

「・・・妖怪に襲われましたよね?あの時、時空鬼と言う、妖怪が最後に札を投げて・・。」
「うん。覚えてるよ?・・それから・・。」どうしたんだっけ?

「あの時、桃花が札を踏んじまっただろ?途端、すっごい光が辺りを包んで・・覚えてっか?」
悟浄の説明に頷く。・・あたしは・・何処かに・・行ってたんだよね?

「次の瞬間、桃花の姿が消えたっ・・て、思ったら、すぐに現れたんだよ、なぁ?」
悟浄の言葉に八戒が、
「でもその後・・桃花が目を覚まさなくて。かれこれ3時間ほど経つんですよ。」
「さん・・3時間?」
そんな?そんなはずがない。もっと長い間・・何処かに行っていた様な気がする。

「・・夢でも見てたんじゃねぇのか。」無愛想に三蔵が言った。
「夢?・・ゆめ、かぁ。」
呟く。何だか色んな事が有ったような気がするのに・・どれ一つ、ハッキリとしない。

「桃花ぁっ!!」悟空の大声が響いた。
「悟空ちゃんっ!」悟空が手に、色んな木の実やら山菜やら持って立っている。

桃花は悟空に飛び付いた。
「良かった・・こんなに大きくなって!」桃花の言葉に悟空が目を剥いた。

「何言ってンだよ!俺を子供扱いすんなって、いっつも言ってるだろ!?」
憤慨した悟空をみて、悟浄が笑い転げる。
「大きく!つったってなぁ?この短時間に成長したのか?さすがは成長期のガキだなっ!」
「なんだと!?エロ河童なんか、縮んでいくばっかりなんだろ?」
「バーカ!俺様の素晴らしいプロポーションは未来永劫、変わんねーんだよっ!」

大騒ぎを始めた悟空と悟浄。それに構わず、

「遅くなった・・さっさと行くぞ!」三蔵が歩き出す。

「えぇ~っ!?せっかく、食料を取ってきたのに・・。」悟空が争いを止め、呻く。

「まだ、腹へらねーだろ?荷物に入れとけっての。」

「じゃ、悟空。この袋に・・桃花?どうしました?」

「なんか・・ほっぺたが痛いんだけど・・。」
さっきは気付かなかったが、ヒリヒリと頬が痛む。少し、腫れているようなのだが。
「あ・・ソレは・・・三蔵が原因なんですけど・・。」
「三蔵が?なんで??」
「あの三蔵サマが慌てちゃったのよ」悟浄が笑いを堪えつつ言った。


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