勝手に最遊記

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Darling ―6―



悟浄と連れだって入った武器屋は、かなりの種類の武器を揃えていた。
店主の話では、妖怪の襲撃に備えて飛ぶように武器が売れているらしい。

「・・やっぱ、ひと思いに死ねるような・・・。」桃花が言った言葉に、悟浄が顔色を変えた。

「―――――今、何つった?桃花。」
「えっ?・・あ、ホラッ!妖怪がいつまでも死ななかったら、後味悪いでしょ?」
だから一撃で仕留めるような~と、桃花が説明するが、それに騙されるような悟浄ではない。

「でもさ?緊急的な場合だろ?んじゃ殺傷能力が高い危険な武器を、持つ必要はねーじゃん?」
「・・そう、かなぁ?」困り顔の桃花を尻目に、
「桃花が危険な武器を持つと、俺達が危ないだろ?俺が選んでやるからサッ!」
悟浄が品定めを始める。

しょうがなく、桃花は悟浄の後ろで視線を漂わせる。
『・・・まいったなぁ~・・ナイフとか剣とか選んでくれないかな?』

そんな桃花の様子を盗み見しつつ、
『・・・ったく~。危ねーコト、考えんなっつーの。』悟浄がコッソリつっこっむ。

「おっ!これいいジャン!これにしとけよ、桃花。」
「コレ・・?これって、メリケンサックじゃん・・・・。」ガックリ項垂れる桃花。
『コレじゃ~死にたい時に死ねない・・・。』自分で自分の頭を殴っても、たんこぶが関の山だ。

「あ、あのさ、もうちょっと・・「おじさーん!このメリケンサック頂戴ねー。」
桃花に構わず、さっさと会計を済ませる悟浄。

「んじゃー行こうぜ。桃花。」桃花の肩を抱き、店から押しやる。
「ね、ね、ね・・他の武器が良かったんだけど?」無理矢理足を止め、悟浄を見上げる。

「悪いんだけど、また別の・・・「――――桃花。」いつもと違う真剣口調に、言葉を止めた。
「・・俺らがさぁ、お前一人ぐらい守れないって思ってんの?」
「守られるだけなんて、イヤだから。」桃花も真剣に答えた。

死ぬ覚悟は、とうに出来ている・・・でも、できれば。できれば、皆の迷惑にならないように。

生きて、死んでいきたい――――――それだけが、  望み。

そんな桃花の表情(かお)を悟浄が見つめていたが、
「・・でもぉ?メリケンサックだって立派に役に立つっショ?
カマキリ女にパンチ喰らわせてたジャン。コレ付けたら無敵ヨ、桃花チャンってば。」
「―――判りましたぁ!買ってもらうのに、贅沢は言いませんですぅ~!」
半ば、自暴気味に桃花が言った。『・・・今度、自分で買おう。』そう、決心しつつ。

「そーそー。女の子は素直が一番っv」悟浄が桃花の頭をガシガシ撫でる。
「ちょっ・・止め!も~髪が絡まる~っ!!」ギャアギャアと悟浄の胸で、桃花が暴れる。
悟浄が笑いながら――――――・・考えを巡らせた。
『・・もちっと、幸せになるコトを考えてもイイんでないの?』            


            “桃花には、人生を諦めているような所がありますから。”
八戒の言葉が甦る。

「・・ヒトの幸せとかには、懸命になるくせに・・何処か、自分を大事にしていないような気がします。」
だから、過保護になっちゃうんですよね、僕。――――――そう言って苦笑した八戒。

薄々、感じていた事・・・『年頃の娘って・・カンジじゃねーよなぁ。』
桃花を見ていると、まるで恋愛に無頓着―――というより、自分には関係ないと思っているようだ。
仮にも男四人と旅しているのに、まるでそんな気配がない。(あっても困るが)

「甘いモンでも食いに行かねぇ?桃花。」
「エッ!マジでっ?行く行く~っv」満面の笑顔で桃花が答えた。

『・・・八戒が過保護になるのも判るよなぁ。』        コッソリ苦笑した。


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