勝手に最遊記

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Darling ―18―



「・・・千の妖怪の血を凝縮して、科学の力で合成した薬が・・・成功率70%ってとこかなぁ。」
呟きながら、用紙に書き込んでいる。
「強力な妖怪を造れるって思ったんだけど・・・精神力が問題かな?」一人頷いてため息を付いた。

それにしても・・・「あのコ達、随分と大事にしてるんだねぇ。」クスクスと嗤う。

你博士が、クシャクシャになった煙草を、白衣のポケットから取り出した。
慣れた手つきで火を付け、おもむろに吸い出す。

「・・・その大事にしているモノが・・・汚れた玩具だとしたら。・・キミはどうするのかな?紅流クン。」

朝焼けに、你博士が吐き出した紫煙がたゆとう―――・・・面白い。  面白いよね。

                  「お楽しみは コレからだよ。」


―――――その晩・・・・。

疲れ切った三蔵達は、この町にもう一泊することになった。

八戒が風呂から上がると、悟浄がベッドに寝そべりながら、ボ~ッとテレビを見ている。

「悟浄。いくらなんでも上半身裸のままじゃ、湯冷めしますよ?」
「・・お~・・。かったるくってさぁ。」緩慢な動きで、起き上がった。

八戒は風呂上がりにと、麦酒を出し、ついでに悟浄の分も手渡してやる。
「・・さんきゅ~。気が利くよなぁ。」プシッと缶を開け、一気に飲み干す。
「貴方の世話は、慣れてますからね。」八戒も、麦酒を飲む。


「・・・桃花ってさぁ。“癒し系”じゃねーよなぁ?どう見ても。どー考えてもっ。」
桃花が聞いたら、怒りだしそうな事を言い出す悟浄。

「そうですね。“癒し系”というより、“冷やし系”なんじゃないですか?」
「あん?ナニ、“冷やし系”って。」
八戒はにっこり微笑んで、
「桃花の行動を見ていると、良く肝が冷えるんですよね、僕。」サラッとのたまう。
「くくっ・・確かになぁ。ゾッとするようなコト、ヤッてくれちゃうよな。」悟浄が可笑しそうに笑った。

「そんな呑気な顔をしていて良いんですか、悟浄?」八戒が意味ありげな視線を送る。
「ん?ナニ、それ?」ポカンと間抜けな顔をした。

八戒がわざとらしくため息を付いて、
「貴方の入浴中に桃花が訪ねて来まして。シャツがボロボロになったんだけど、
悟浄君買ってくれるかな?って聞かれたので“もちろん”って答えたんです。」

「・・ま・・まぁ、俺の所為なんだし?そのぐらい余裕っショ。」悟浄が煙草に手を伸ばす。
八戒がますます笑みを深くする。
「・・・・ですよねぇ?だから桃花が、三蔵や八戒ちゃんの服まで
ボロボロになっちゃったのは、買ってくれるのかな?・・・って聞かれましたので――――。」

嫌な汗が背中を伝う。
「も。もしかして・・・・・・。」なかなか火を付けられない悟浄の手元。
「“もちろんですよ。”そう言っておきましたv」

八戒の言葉に悟浄が青ざめた――――――・・・『そっそうだっ!』悟浄の頭の中に希望の光が射す。
その顔を見て、八戒がすかさず、
「悟浄?賭場は駄目ですよ?・・また余計なトラブルを招きかねませんからね。」
爽やかに釘を差す。

「いいっ!?んな殺生なっ!賭場無しで、俺にどうやって稼げって言うんだよ!?」また青ざめる悟浄。
「良ければ僕がお貸ししても良いですけど・・。」八戒が楽しそうに囁く。
「マジでっ!!?」
「利息は“トイチ”ですけどね。」

――“トイチ”・・・ソレは、借りたお金の利息が10日で一割取られると言う、高利貸しの金利。

「・・・・・・・八戒ぃ。」悟浄が見た八戒の笑顔は、後々まで悪夢として悟浄を苦しめたという。


――――翌日――――

「安い物じゃ、悟浄君に失礼だもんねっv」

嬉々として買い物をする桃花は許せるとして――――――

「いやぁ、気を使わせて悪いですねぇ。」言葉とは裏腹に悪びれない八戒と、
「悟浄!アレとソレとコレと・・・。」エンドレスに買い物しまくる悟空と、
「・・・しょうがねぇ。買わせてやるか。」皮肉一杯の顔で遠慮のない三蔵に、




         『こんな奴ら、ぜっってぇ愛しいなんて思わねええ!!』


・・・・悟浄が心の中で  絶叫した。




                第13話  完


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