勝手に最遊記

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ACCIDENT ―6―



「潤ちゃん?・・潤ちゃん?もう、大丈夫だよ?」桃花に体を揺さぶられ、我に返る。
「あ・・ははは・・ふっ・・ふぇ~んっ・・。」緊張が解け、笑いながら泣き出す潤。

「大丈夫か?潤!ケガしてないかっ?」悟空が側によって伺う。
「・・ひっく・・うっ・・うん・・・。」――私、ちゃんと生きてる・・・。


散乱した部屋に泊まれない――――――潤達は、三蔵達の部屋へ移動した。


「・・・あっ!」潤の顔が輝いた。

「キューッ!」ジープが部屋の中に居たのである。変化を解かず、車のまま宿の外にいたのに。
「ジープ?・・妖怪達の気配を感じて心配して来たんですか?・・大丈夫ですよ。」
八戒が優しく微笑みながらジープを撫でる。

「八戒さん!私も・・私も触って良い?」にゅはーっv可愛い~ジープっ!!
「ええ、良いですよ。背中をそっと撫でてあげて下さい。」
言われた通りに背中を撫でると、ジープが気持ち良さそうに目を細めた。
『はぅv可愛すぎーっ!』幸せに浸っていると、

「・・・しかし。どうやって寝ましょうか・・・。」八戒が部屋を眺めた。
ココは4人部屋。もちろん、ベッドは4つ。しかし、6人居るわけで・・・。

「他の部屋は空いてなかったのか?」悟空が至極当然な質問をする。
「はい。もう、遅いですし・・。」思案顔の八戒。

「俺は潤と一緒に寝ても良いけどぉ?」悟浄の発言に、皆の視線が突き刺さる。
「悟浄?他人(ひと)のモノには手を出さないんですよね?」八戒が微笑む。

―――それに脅える風もなく、
「まっ。そうだけど?・・んじゃ、しょーがねーから桃花と寝る。」
「しょーがねーとは何よっ!!」グイグイと悟浄の首を絞める桃花。

「・・・では、悟浄にはソファで寝てもらって。空いたベッドを桃花と潤さんで使ってもらいましょうv」

爽やかな笑顔で八戒がまとめた。

「はっ、八戒!?」「・・・問題、無いですよね?悟浄。」・・・勝てるワケないって悟浄。

「でも。潤ちゃん細いから良いけど・・・あたしはぁ・・。」はふーっとため息を付く桃花。
「え。そんなこと・・」言いかけた潤を遮って、
「桃花ぁ。もうちょっと後ろに下がって?」悟浄が潤の隣にいた桃花を下がらせる。

「・・?コレでイイ?」「もうチョイ・・・んなもんかなー。よし!コレで同じに見えるゾ!」
「はっ?何が同じに・・・。」「大きさv」「・・遠近法かいっっ!!」制裁が始まった。

『・・・悟浄。命がけでからかわなくても・・・・。』潤は憐れみを込めた目で、悟浄を見つめた。


・・・・・結局、悟浄はまたもや“死にかけ”の状態で・・ソファに追いやられ。
電気を消し、皆が眠りにつく。

『・・眠れない。』目の前では、桃花が既に寝息を立てているのに。

神経が高ぶって――――耳に残った妖怪の断末魔の声が・・・『恐かった。』

あのまま、死んだら?二度と智嗣君には逢えない。『・・そんなのヤダ。』体が震える。

“大好きな人が居て 自分を好きでいてくれて 生きていてくれるだけで 幸せだよね”

桃花の言葉が思い出される。  その言葉の深さを、ようやく感じ始めていた。

「・・・おい。」暗闇からの声に、潤は飛び上がりそうになった。
「ひゃ!・・・さ、三蔵・・起きて・・たんですか?」小声で伺う。

「俺らはダテじゃねぇ。寝込んでいても。妖怪が来たらすぐ目が覚める。・・早く眠れ。」
「・・さん・・・。」気に掛けてくれてた?あの三蔵が?

クスッと笑みが零れた。『ホントだね。桃花ちゃん。三蔵って意外と・・優しいねv』
――――――安心しきった潤は、眠りへと落ちていった・・・・・・。


「・・・ん?」明るい光に誘われるように、潤は目を開けた。


見慣れた景色―――――目の前にはパソコンのデスク。椅子に座ったまま、バックを抱えている。

「ええっ!?・・桃花ちゃんっ・・悟空・・みんな・・!?」部屋を見回すが、いつもと変わらない部屋。

『・・・夢  かぁ。』そうだよね。そんなはずない・・。私、一晩パソコンの前で眠っちゃったんだ。
バックの中身を確認する。
「・・・アレ、無い??」思わず呟く。智嗣君と食べようと思っていた、新発売の“夏の想いで”ポテチ。
『なんでー?何で無いのーっ!?』絶対入れた。・・・そりゃ、悟空と桃花ちゃんにあげたけど?

バックの中を見ていると、微かに香った“ハイライト”の匂い・・・『!!?』すぐにかき消えてしまう。

マサカ・・・ね?更にバックの中を探っていると、携帯に着信がある。

メール?確認すると、「智嗣君っ!」彼からのメールが入っていた。

「旅行、ゴメンな。一日だけど休み取れたんだ。潤に逢いたい。」簡潔だけど、想いのこもったメール。

“生きてくれているだけで 幸せ”・・・そうだよね。想い合っていて、生きている。
未来へと続く道を、私は彼と歩いていく―――――――彼にとって私が。私にとって彼が。

               “大切な 宝物”だから。

指輪に刻まれた文字を噛みしめ、潤は部屋を飛び出した。

生きて、幸せを離さない為に―――――――――――――――・・・・・。



                     完


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