勝手に最遊記

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Curse ―5―


「そうですっ!・・とにかくっ・・昨日の場所まで・・戻りますっ!!」八戒も大声で応える。

アクセルを踏み切ったまま、ジープを爆走させている。下手すると舌でも噛み切ってしまいそうだ。
――――――――そこまで急がないと・・・老化の一途を辿る桃花の命が危ない。

「三蔵!悟浄!振り落とされないで下さいね!!」舗装などされていない悪路。激しくジープが揺れる。
「当たり前だっての!」
「誰に向かって言ってるんだ。」平然と言い放つ二人。急ぐ想いは皆、同じで。

『ジープ・・頑張って下さい。』ぎゅっとハンドルを握った。



―――――穏やかな日差しが差し込む午後。

普段なら、温かい日差しに誘われて・・・昼寝の一つでもしようかという陽気に。

「・・・・寒い。」ベッドの上で、毛布にくるまる桃花。

顔色は悪く、悪寒に体が震えている。
まるで、体温と共に若さが奪われていくようだ。


「桃花・・・。毛布、借りてこようか?」悟空が心配げに桃花を伺う。
「・・・ん。大丈夫・・・。」軽く頭を振る。『多分、無駄だから・・。』その考えは自分の胸にしまう。

悟空の大きな手が、額に触れる。
「熱はない・・って、当たり前だよな。風邪じゃないんだから。」困った様子の悟空に苦笑し、
「ね、悟空ちゃん。温かい物が食べたいんだけど?」
「温かい物だな!?よしっ!!まかせとけっ!!」待ってましたとばかりに悟空が部屋から飛び出す。

『悟空ちゃん・・・優しいから。』側に居て、何もできない自分に苛立つ。・・その気持ちが良く判るから。

ふぅっと息を吐いて天井を見つめる。  そこへ。

影が。自分の顔に影が落ちたのに気付く。


「・・・・あなたは・・・・。」桃花の眼が、大きく見開いた。




風が吹き抜け抜け―――――――連立する岩山。 
昨日、刺客に襲われ・・・奇怪な液体をかけられた場所へと、三蔵達はやって来た。

「クソッ・・だだっ広い場所ってのは厄介だぜ。」苛立ちを隠さず、悟浄が辺りを見回す。
「同感です。昨日も完全に気配を消していましたからね。」八戒がジープを肩に留まらせた。
「煩せぇぞ、貴様ら。・・・黙ってろ。」紫暗を閉じ、印を組む。神経を集中させ・・気配を読むために。

ビョオッッッッッ・・・一際強い風が吹き付ける。

三蔵の白い法衣がはためく。

悟浄が煩そうに髪をかきあげ、八戒がジープを庇うように胸に抱く。

『・・・・何処だ・・・・何処に居やがる・・・・。』


三蔵の脳裏に、うっすらと映像が掠める――――――不自然な気が、周りの空間を歪めている場所。


『あの女の居場所じゃねぇ・・・が。何だ?此処は・・・・。』紫暗を開いた。

「三蔵?」
「あの女の居場所が判ったのかよ!?三蔵!」

「・・・・ハッキリとは判らねぇ。」そう言いながら、歩き出す三蔵。
悟浄と八戒は顔を見合わせ―――――――後を追いかける。


砂塵が、三人の姿をかき消すかのように・・・吹き荒れた。




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