勝手に最遊記

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HAPPY BIRTHDAY!―5



「うわあぁv美味そうっ・・・vv」涎を出さんばかりに(チョット出てる)、悟空がボウルに釘付けになる。
「ダメだよ、悟空ちゃん。やっとホイップしたんだから・・・。」指を入れようとした悟空を制し、ボウルを抱え上げたのだが
「・・っわ、甘めぇっ。」ヒョイッと指を突っ込み、捲簾がクリームを口に入れた。

「ちょっ・・・!」「ああっ!?ケン兄ちゃんズリィ~ッ!!」桃花が捲簾に気を取られている隙に、悟空がボウルへと飛びつく。
「俺も味見~っ!」「きゃっ!ダメだってばっ・・わっ!!落ちちゃ・・。」体勢を崩した桃花の手から、ボウルが床へと落下・・

「「「あああああ~っ!!!」」」―――【ハシッ・・見事なスライディングを決めたのは天蓬。シッカリとボウルを掴んでいる。

「おおっ!流石だぜ、天蓬!!俺の副官だけはあるな!」「天ちゃんスゲー!カッコイイっv」
脱力した桃花を余所に、盛り上がる捲廉と悟空。天蓬はそれに答えず、ゆっくりと立ち上がった。


「・・・・・真面目に、作りましょうね?」黒いオーラーを漂わせ、眼鏡が逆光になっていて表情が見えない天蓬。
「「っ・・はいっ・・。」」その迫力に捲廉と悟空は顔に縦線を引きながら、何度も頷きを繰り返した。

「フン。アホ共が。」そう言って、クリームを器用にクルクルとデコレートしてるのは金蝉。
「わっ。金蝉って器用なんだね~。」桃花は感心しきり。
―――――観世音菩薩の甥、金蝉童子が三角巾姿で、生クリームをデコレートしている姿は(カナリ)凄い事なのだが。

「あたしもヤロっと・・・ぁ。」握った絞り口からクリームが飛び出し、【ベチョ】・・・金蝉の顔に、引っかかった。
「てっ・・てめぇ・・!!」「わ、わざとじゃ無いってば!!」眼の据わった金蝉に後退する桃花。「きゃああっ・・!」


―――――――――――――――・・・・・ケーキが無事に出来上がったのは、3時間後の事であった。


「・・って、合計、8時間かよっ!!」

桃花が現れたのは、天界での朝。 それが今はすっかり、夜の闇に包まれている。


金蝉の部屋でパーティをする、と言うことで。天蓬が女官に言って、用意させているのだ。
「遅い・・・。」きゅ~ぐるぐるぐるぅ・・・腹の虫が大合唱している。
天蓬の部屋で本に埋もれながら、金蝉も捲簾も悟空も・・・・半死状態であった。

「みんな~っ!!準備が出来たよ~っ!!」お待たせ~っとニコヤカに桃花が扉を開けた。
「やったああぁっ!!」ピョンッと飛び起きて、部屋を飛び出して行く。「ん?何、捲ちゃん?」桃花の顔を眺めていた捲簾が、

「・・桃花。ココにクリームが付いてんぞ?」「ええっ!?ドコにっ!?」パッと顔に手をあてた桃花・・「はっ!!」
「やあっぱ、つまみ食いしてたなぁ!?」ガチコンっと首に腕を回され、締め上げられる。
「くく・・苦しいって・・。」ギブギブと藻掻く桃花に、更に技を掛けようとする捲簾。

「・・出入り口で、騒いでんじゃねぇよ。」金蝉が二人まとめて蹴り飛ばした。
「「痛えぇっ!!」」床に転がった二人を後目に、「さっさとしろ。」冷たい一言を投げつけて、金蝉が歩いて行った。

「~~~~~~のっ、金蝉っ!!」ガバアッと立ち上がって捲簾が金蝉を追いかけて行く。
それを見送って、『金蝉・・・三蔵と反応が似すぎ。』コッソリと苦笑した。


「お誕生日、おめでとうっ!!」桃花の音頭で、「「「「乾杯~っ!」」」」皆が乾杯を交わす。

「しっかし・・良く、こんだけ用意出来たな?」モグモグと唐揚げを頬張りながら、捲簾が部屋を見回す。
普段、殺風景な金蝉と悟空の部屋が―――――――――キレイに飾り付けられている。

「料理は女官の方々に。飾り付けは桃花がしてくれたんですよ。」微笑みながら、天蓬もグラスに酒を注ぐ。
「イイ迷惑だがな。」金蝉がジロッと桃花を睨む。部屋中、花で飾り付けられるとは・・思わなかったらしい。

「まっイイじゃねーかっ!」捲簾がくつくつと笑い、隣で目一杯、食べ物を口に詰め込んでいる悟空の頭を撫ぜながら、
「今日、ぐらいは・・なぁ?」片目を瞑って問いかければ「・・・勝手にほざけ。」ぶすっと金蝉がソッポを向いた。




その姿に笑いながら――――――・・・呑んで、 食べて、 笑って、 ・・・・




【カシャーンッ・・・グラスが砕け散った。   「桃花っ?」食事も終え、一服していた天蓬と捲簾が立ち上がった。

「・・ぁ、ごめん・・。」後ろ向きで、しゃがみ込んでいた桃花が「グラス、割っちゃった。」てへvっと舌を出して振り返った。
「・・全く、お前という女は・・。」仏頂面の金蝉が、さっさと箒(ほうき)で片づける。

「桃花姉ちゃん・・・?どうしたんだ?」悟空が桃花を見上げる。「顔色悪いぞ?」心配そうな悟空に
「大丈夫だよ。 ほら、ケーキも食べようね?」優しく、微笑んだ。


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