勝手に最遊記

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SCHOOL!―4



学園のセキュリティーは固い。 
夜にもなれば、常駐しているガードマンさん達が目を光らせている。例え生徒でも、授業時間外に学園に入る場合、
必ず自分のIDカードと生徒手帳(もちろん写真付き)を提示し、その理由をノートに書き込まなくてはならない・・んだけど。


「居ない・・?」窓から身を乗り出して室内を見回す。「おーい。誰かぁ・・居ませんかぁ??」再三の呼びかけにも答えない。

学園の裏門に有る、ガードマンさん達の宿直室。
夜だからここでチェックを受けて裏口から入らなきゃダメなんだけど、肝心のガードマンさんが一人も居ない。

校内を見回りに行っていても、必ず一人は居るはずなのに・・・・「しょうがないなぁ。」取り合えず、ノートに名前と用件を書き込む。
「アタシの所為じゃ無いからね・・・。」教室に入って捕まったとしても、こうやって名前を書いておけば言い訳が出来る。

「んじゃ、さっさと取って来よ~。」薄暗い裏口へと足を踏み入れたアタシ。  






・・・宿直室の奥の部屋では・・・ガードマンさん達が気絶させられて、縛り上げられている何て――――――――思いもしなかったのだ。




「・・恐い・・・恐いよおおぉっ!!」懐中電灯も持っていない。外はどしゃ降りの雨。廊下を薄暗く照らすのは、非常灯の灯りのみ・・・
昼間は見慣れているはずの教室が、無性に・・・「恐いよおおおんっ!!」

必死の思いで教室に辿り着いたアタシ。ガサガサと自分の机を漁ってノートを掴んだ時・・・ん?『・・今、なんか音した・・・?』


耳を澄ます――――『・・なぁんだ・・気のせいかぁ。』ふうっと安堵の息を吐いた途端、【ガタッ】・・『ひいぃっ!!』


ノートを握り締めたまま、固まること数分―――――――・・・・音は・・・・聞こえて来ない・・・・・。
思いっ切り悩んだんだけど、『・・走って帰ろう!!』そう決意した。

時刻は11時を回っていて、もうすぐ真夜中だ。ココでウロウロして危険な目に遭うよりも、俊足を生かして寮に逃げ帰る方がイイ!!
だああああっっと声にならない気合いを入れて、教室から飛び出した。


もの凄い勢いで階段を駆け下り、裏口に向かってダッシュ(ゴォゴォ!)――――のハズが。 
暗い所為か、闇の中で方向感覚が狂い、出口がドコか分からなくなった!『ヤバイよ・・どうしよう・・。』

耳を澄ませば―――――――――・・・校舎に反響して、低い男のような声(しかも複数!)と、微かな物音や気配が感じられる・・

こうなったら、しょうがない!手探りで、近くの教室のスイッチを探し当て・・『えいっ!』押した・・ケド。
『つっ、点かないっ!?』パチンパチンッと何度スイッチを押しても電気が点かない!!

はぁっと息を吐き出し、落ち着かせようと心臓に手をあてた。『バクバクいってるよ・・・。』廊下に出て、目を凝らす。
ボァッと光が点いている非常ベル・・・・・『この状況って非常よね!?』そう自分に言い聞かせながら移動した。

多くの人がそうであるように・・アタシも【非常ベル】何て言う物は、押したコトがない。
カプセルのような、透明のカバーを押し破って・・と言う行為は・・『一度してみたかったv』一つでも有るんだけど。
そんな呑気なコトを考えているような状況じゃ無い。なんせ、間違いだったら大目玉喰らうこと必死なのだ!


ゴクリ、と唾を飲み込んで・・・・「えいっ!」【バリンッ】と。期待した程の抵抗感もなく、非常ベルを押した・・のに。
「れ・・あれ!?あれれっ!!?」何度も何度も。繰り返しベルを押してもウンともスンとも言わない・・・。


――――――ゾオオオッ・・と悪寒が爪先から背中へと走り抜けた。
『・・・ホントに・・・異常だ・・・・。』暑くもないのに、額から汗が噴き出す。

常駐しているはずのガードマンが居ない。 教室の電気が点かない。 そして、非常ベルさえ・・・・鳴らない。


霊的オカルト現象か。 それとも人為的な策略か・・・・・どっちにしろ。
アタシは、とんでもない状況に立たされているコトを――――――――――――自覚した。


なるべく、自分の足音を殺し・・・そっと息を詰めて歩く。必死に目を凝らしながら進んでいると、緑色の非常口の灯りが見えて来た。
『コレが非常口・・と言うコトは・・・。』頭の中で希望の光が射す――――そっか!裏口は・・・クルリ、と。振り返った・・


【ドンッ――――「あっ・・!!?」振り返った途端、誰かに突き飛ばされて倒れた。


「な・・誰っ!?」見上げた目の前には―――――黒い覆面、黒いニット帽、黒い服に手袋をした・・全身黒づくめの男が・・・
「・・この学園の生徒・・か?」低く、唸るような声の男・・・『・・泥棒っ!?』壁に背中を預けたまま、動けない・・・

男の手が、銀色に光るナイフを握り、真っ直ぐ自分に向かってくるのを―――・・・ただ、見ていた・・・「天空ちゃんっ!!」
聞き慣れた声と共に  【ゲシッ】 ・・・男が、アタシの目の前で倒れた。


「もっ・・桃花・・先生・・・。」見上げれば、男の背中に 立って居る 桃花先生の姿が・・「どぉ、して・・?」
唖然としているアタシに、「ああ、危なかったね~。」ニコニコと、男を 踏みつけ ながら「階段飛び降りちゃったv」・・何ですと?

階段の踊り場から飛び降りて・・・男の背中に着地?そ、そう言うコト・・はは。この泥棒がチョッピリ哀れに見えた。


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