勝手に最遊記

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Stay ―7―



「・・・ふぁ・・。お早うごじゃいま・・す。」
なかなか目が開かない桃花を見て、晴掩が苦笑した。

「シャキッとしろ!今日は大変な事になるんだからよ。朝メシ食って、準備を整えるんだ。」

フラフラしながら桃花が朝食の席に着くと、三蔵が既に食事を終えていた。
「・・お前、ホントにやるのか?」
「フェッ?・・あ、うん!もちろんじゃない!」
やっと目が冴えてきたらしい桃花が朝食にかぶりつく。

「・・・お前、よく起き抜けで食えるな・・。」ウンザリと桃花を見る。
「あたし、朝からカツ丼でも大丈夫な人だから!」
呆れ顔の三蔵を尻目に、桃花はアッという間に朝食を平らげた。

桃花が、身支度を整えに部屋へ行ったのを見計らって、
「あんなヤツが儀式をやり遂げられると思うのか?」三蔵が晴掩を見据えて言った。

「そうだな・・。何より大事なのは“心の強さ”だ。この儀式には“心の強さ”と、“正直さ”が必要だ。
少なくても、あの嬢ちゃんは“正直”だとオレは思ってるんだがな。」

「ああ、間違いなくバカ!!正直だがな。」
「誰がバカ!ですってぇー!!」バンッと扉を思いっきり開けて桃花が入ってくる。

長い髪をポニーテールにまとめ、やる気十分なオーラを出している。

「おう、気合い入ってるじゃないか。」晴掩が嬉しそうに言う。そして、
「オレからの餞別だ。」晴掩が箱を差し出す。

「・・何ですか、コレは?」桃花が箱を受け取った。かなり重い・・。

「うわっ!こんなに沢山・・。」箱の中には色々な武器が入っていた。
小剣やナイフ、鎌に斧・・。ごついナックルまで。

「気に入った獲物を持って行け。妖怪に襲われるかもしれんからな。」
桃花はジッと武器を見ていたが、
「・・・あの、あたし武器は要らないです・・。」

「何だって!お前、武器もなしに・・。」驚く晴掩を見て、
「使い方も分からないあたしが持ってると、自分でケガしちゃいそうなんで。」

「それは言えてるな。」アッサリと三蔵が言った。

「だが何も武器を持たずに・・。」

三蔵は晴掩を遮り、懐から何かを出した。
「コレを持って行け。」「コレって・・。」三蔵愛用のS&W型の昇霊銃だった。

「軽くてコンパクト。しかも扱いも楽だ。」
「そりゃそうだけど・・。」安全装置をはずし、引き金を引くだけ。

「暴発したら・・。」
「それはお前が悪いんだっ!・・とにかく、そいつを持って行け。」
「う、うん。・・・ありがと。」
桃花が三蔵を見ると、プイッとそっぽを向く。

『もしかして一応、心配してくれているのかな?』
優しいトコあるかも・・・そう、思った瞬間、

「いいか?返さなきゃ地獄行きだぞ、このバカ女!判ったかっ!」その鬼のような顔を見て、

「やーっぱちーっとも優しくない!フンッ!!
晴掩さん、この村から南に出てスグの岩山でしたね?早く行きましょ!」桃花が家を飛び出す。
ソレを見ながら

「まーったく素直じゃねぇんだな。“無事に帰ってこい”って言えばいいのに。」

「俺は、自分の銃を無事に取り戻したいだけだ。」
三蔵の言葉に、晴掩が大げさにため息を付く。

「判ったよ・・。じゃ、連れて行ってくるから。
お前さんはあのボウヤ達の所にでも、顔を出せばいい。それじゃな。」

歩き出す晴掩の背中に向かって
「あいつに・・。」
「あ?何だ?」緩慢に晴掩が振り返る。

「あいつに何かあったら、他の三人が黙っちゃいねぇ。」

晴掩の顔を見ずに、言った三蔵を見て、
「判ったって・・・お前さんを抜いて、だろ?」

晴掩が頭を掻きながら出て行くのを見送って、三蔵は息を付いた。


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