勝手に最遊記

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Family ―17―


桃花の部屋の前で、八戒が三蔵に言った。手には薬を持っている。

「・・・。」三蔵は黙ってマルボロを吸っている。

「ってゆーか、何でオレ達、ココに居るだよ。」
ハイライトを吸いながら座り込んでいる悟浄がぼやいた。

「悟空が桃花と二人きりで話したそうでしたから。」
「小猿ちゃんも色気づいたってワケ?」
「悟浄が言うのはどうかと・・。」八戒が苦笑したその時、

「うわ~っ!悟空ちゃん・・・ダメッ・・!」桃花の悲鳴が廊下にまで響いた。

「な、マジでっ!?」悟浄が立ち上がる。三蔵と八戒が部屋のドアを開けると、

ベッドの上で、悟空に押し倒されている桃花の姿があった。

・・・八戒は目が点。三蔵は懐から銃を取り出す。その後ろから悟浄が、
「バカ猿・・・イキナシ襲ってンじゃねーよ!!」と言ったのだが

「悟浄君!に、逃げた方が・・。」「アン??」

見ると悟空が悟浄を睨んでいる。
「ご~じょ~ぅぅう。桃花に何したんだぁ?」手には如意棒を握っている。

「はっ?俺、なんもしてないっての!!」悟空の雰囲気に押されて、悟浄が後ずさりをする。

「・・・なんで、桃花の体から悟浄の匂いがするんだよ!?ハイライトの匂い!!」
「・・・・あ。そりゃ添い寝したから・・昨日。」

桃花のお願い事は、『悟空ちゃんを抱っこしたい♪』と言うこと。
子供扱いされているようで、納得出来なかったのだが仕方なく“ハグ”したら
桃花の体から強いハイライトの匂い・・・。
昨夜、風呂に入ることの出来なかったせいで、悟浄の移り香が残っていたらしい。

「なんでテメーが添い寝なんかしてんだよっ!!」
悟空がベッドを蹴って、悟浄に如意棒を振り下ろす。

「うわぁ~っ!!?」悟浄がスタコラと逃げ出したのを悟空が追いかけていく。

宿に悟浄の悲鳴と悟空の怒声が鳴り響いた。

「八戒ちゃん・・・助けてあげてね?」
「大丈夫ですよ、ゴキブリ並の生命力がありますから♪」
「はは・・。」『笑顔が怖いんですけど・・・。』

「それより、桃花。」「はいっ?」
「昨日、僕の言いつけを守りませんでしたね?」さらに笑顔の八戒。
「あ・・っはは。でも、結果オーライだったでしょ?」引きつる笑顔の桃花。

「ソレは結果論でしょう?危険な事だと分かってたはずですよね?
治りかけた風邪まで悪化させて・・・。」
八戒は腕を組んで、沈痛な顔を作り、首を左右に振ってみせる。

「あっ・・あたし、心配させるつもりはなくて・・。ごめん・・ごめんね、八戒ちゃん!!」

八戒は後ろを向く。肩が揺れてるのは・・・泣いてるの?桃花が困り果ててると

「・・・ホント、性格悪くなってんぞ。」三蔵の一言で八戒が振り向いた。

「くっくっくっくっ・・・ダメですよ、三蔵。バラしちゃ・・。」
笑いが堪えきれないといった顔をしていた。

「あああーーっ!ひっヒドイ~!!」たちまちふてくされる桃花。

「ま、これがお仕置きって事で♪薬、ちゃんと飲むんですよ?」
さっさと八戒が出て行くのを見て、
「・・あなどれない。」桃花がつぶやいた。

「アホらし・・。」三蔵が出て行こうとして、また法衣が引っ張られる。

「・・何だ?」また面倒くさいことを・・という顔である。

「三蔵。“すげぇ幸せ”だよ?一緒に旅が出来て。」笑顔で桃花が言う。
「うぜぇんだよ。・・・とっとと治せ。」パシッと軽くハリセンで頭を叩いた。

それだけ言って、三蔵は部屋を出た。

廊下に八戒が立っている。

「アレじゃあ、置いて行けませんね?」
「・・チッ。本人が止めたいって言うまで、しょがねぇだろ。」

三蔵が部屋へと戻っていくのを見送って、八戒は微笑んだ。


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