勝手に最遊記

勝手に最遊記

Blind Date ―5―



八戒と悟空で手分けして探しているのだが、桃花の姿は一向に見つからない。

「・・・仕方ありません。悟空は一旦、宿へ戻って下さい。桃花が帰ってるかも知れませんから。
帰ってなかったら、三蔵に訳を話して一緒に探してもらいましょう。
・・・僕はこの先の通りを探していますから。」

「・・・・三蔵に・・。」悟空は項垂れた。良くてハリセン。・・・・悪ければ発砲だ。
「悟空だけの責任じゃありませんからね。怒られるときは一緒ですよ?」
八戒になだめられつつ、悟空は宿へ向かった。

「こんな時にエロ河童は何してやがんだ~っ!」いき場のない怒りを、悟浄に向けて喚きながら。

「紅君!・・・ホラ、コレやってみて?」「輪投げ・・?」輪投げの屋台で、桃花と紅孩児は立ち止まっていた。

「ホラホラ!おじさ~ん、一回ねー!」
金を払い、紅孩児に輪っかを渡す。 「頑張れっ!!」「・・・・・。」

「あ~!惜しかったねー!次は・・・「オイ。」「ん?」
「こんな事をしていて良いのか?」紅孩児は不機嫌な顔で言った。


『静かだな・・・。』三蔵は新聞を置いた。
窓の外からは町の喧噪が小さく聞こえては来ているが、宿の使用人達も祭りに出払っていて、三蔵一人である。

『いつも犬みたいに、まとわり付いてくるからな。』もちろん、悟空と桃花である。
しかも、悟空に睨みは効くが、桃花にはソレが通用しない。結果、皮肉の言い合いになり騒いでしまう。

『・・・・少し、退屈だな。』三蔵がマルボロに火を付けた。
途端、「さあんぞおおぉ!!」悟空が飛び込んできた。

「なんなんだっ。」いきなり静寂を破られて、怒りマークをこめかみに出す三蔵。
「桃花は?桃花は帰ってないのか?」キョロキョロと室内を見回す悟空。
「・・・・帰ってないぃ~・・・。」項垂れる悟空に、「訳を説明しろ。」怒気を含んだ声で三蔵が言った。


「・・・?輪投げ、嫌いだった?」
「違うっ!・・・連れが見つからないのに、こんな風に遊んでいて良いのかと、俺は言ってるんだっ。」

桃花はジィ~ッと紅孩児の顔を見つめている。

「・・・何だ?」「・・・・エイッ。」ベェ~ッと紅孩児の目をタレ目にする。
「!?・・なっ、止めろっ!」不意を付かれて、狼狽える紅孩児。

「ウチの不機嫌な太陽と、似たような顔しないでよ・・。」「・・・太陽?」
はぁ~っとため息を付く桃花。そして、紅孩児の肩をポンッと叩き、

「今日はお祭りでしょ?楽しまないと損でしょ?紅君とこうして出会えたのも何かの縁でしょ?
・・・大丈夫。連れならきっと見つかるから。ねっ、楽しもう?」
「なぜ・・・大丈夫なんだ?」あっさり言ってしまう桃花に驚く。
「なぜ?・・・うーん。紅君の連れが紅君を見つけられないと思う?あたしは、あたしの連れが
あたしを見付けられないなんて思わないよ?」

           「だって、」『だって?』紅孩児は桃花の言葉を待つ。

           「信じてるもん。」


「そう・・・か。」肩の力が抜けていくのを紅孩児は感じた。


――――――――――――――――俺にも信頼できる“仲間”が居たんだった。

李厘・・・・八百鼡・・・・独角兕・・・・。

この場所に独角兕も来ているんだ。何も心配する事は無かったな。


「ねっ、紅君。」にっこり笑う桃花につられて、紅孩児も笑みを浮かべる。
「そうだな・・。」

歩き出す二人の後を、つけていく人影があった・・・。



© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: