勝手に最遊記

勝手に最遊記

Making


久しく人も行き交っていないのか、道がドンドン狭くなり
とうとうジープから降りなくてはならなかった。

目の前を木々が立ち並び、鬱蒼とした草々が行く手を阻むかのようである。


「この山道を歩けっての?」悟浄がウンザリした顔で言う。

「しょーがねぇじゃん!道がないんだからよぉ。
早くこの山越さねぇと、今日も野宿になっちまうだろ!?」
半ばやけ気味に悟空が言う。

「・・・八戒。この道でいいのか?」
懐からマルボロを出しながら、三蔵が聞いた。

「その筈なんですが・・・この地図では、ちゃんと道があるんですよね。」
八戒が、地図と場所を確認しながら首を捻る。

「もしかして、地図古いとか?」
後部座席から桃花が地図を覗き込む。

「そんな事は・・。」

「チッ。どうでもイイ。道が間違ってないのなら、とっとと先へ進むぞ。」
三蔵がさっさと歩き出す。

「判りました。・・・ジープ、変化を解いて下さい。」

キューーー・・・ジープが白竜の姿へと戻る。


「そいじゃま、行きますか。」悟浄が荷物を持つ。

「はー・・・しんどそう・・・。」
この山道を延々登って行くのかと思うと、桃花は気が重い。

「桃花、俺が桃花の荷物を持ってやろうか?」
心配げに桃花を見る悟空。

「いいよ、大丈夫!・・・アリガト、悟空ちゃん。」

「じゃ、悟空。俺の荷物を持ってくれよ。」
「なんで赤ゴキブリ河童の荷物を持たなきゃならねーんだよ!?」
「んだとぉ!?テメーみたいな馬鹿力猿は、こんな事にしか
役に立たねーんだから、黙って荷物持ちしてりゃいーんだよっ!」
「ダレが馬鹿力猿だってぇ!?」
「ほーおっ!耳まで悪くなってきたか?お前のこと言ってんだよっ!」
「あーもーっ!二人ともいい加減にしなさいっっっ!!」

「・・・三蔵。後ろが賑やかなんですけど。」
「・・・知るか。」



―――――――――――――――――――三蔵達は奥へ奥へと足を踏み入れていく。

山の中は昼間だというのに、生い茂る木々で日光が遮られ薄暗い。
辺りを見回しても生き物の気配が感じられず、静寂が覆い被さるようだ。

「少し・・・雰囲気が良くないですね。」
足を進めながら、八戒は周りを見回す。

「・・・フン。何か居やがるな。」三蔵が足を止めた瞬間、

ザアァァンンッッ!!頭上から一気に網が被さる。
咄嗟のことで反応が遅れた三蔵達は、網に絡め取られる。

「―――チィッ!!」三蔵が銃を取り出す。
勿論、悟空や悟浄もおのが武器を構える。

「抵抗しない方がいいわよ。」
少しハスキーな女の声がした。

「!?」

目の前に女が立っている。
褐色の肌に、大きな茶色の瞳。くるくると顔を取り巻く髪は、茶色と白が混ざり込んでいる。
尖った耳と、紋様状の痣が腕と足に見られることから、妖怪である事が
見て取れた。どうやら尻尾もついている。
そしてその手には、ジープが縄に繋がれている。

「ジープ!!」八戒が叫んだ。

「ジープって言うんだ。この子。・・・可愛いから殺したくないけど、
お兄さん達が抵抗すれば・・判ってるよね?」

「・・・貴女は何者なんですか?」

「・・・まぁ、姐御のトコに行けば説明するから。」

「“姐御”・・・?」三蔵達の困惑をよそに、

「やったねー!成功したじゃん!!」「早く連れて行こっ!」
あちこちから雰囲気のよく似た女の子達が出てくる。

皆、尻尾が付いている。年齢的には悟空と似たり寄ったりであろう。

「じゃ、アンタ達、立ち上がって頂戴。」

三蔵達はシブシブ歩き始めた。


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