勝手に最遊記

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Making ―7―



「っ・・・・痛いって・・・。」
桃花は腹に落下(?)してきた悟空の足を除けて、布団から起き上がった。

「フェ~ッ・・・。」思わず変なため息を付いてしまう。
ベットもない雑魚寝状態の狭い部屋・・。

行燈が置いてあるので、部屋の様子は見て取れる。

悟空と一緒に部屋に泊まる事は今までもあったが、個々のベットで寝ていた為、
悟空の寝相の悪さに被害を被ったことはない。

雑魚寝の並び方は、一番向こうに悟浄、三蔵、悟空、桃花・・になっている。

「エロ河童は一番向こうで寝ろっ!」悟空が言い張り、
「・・・朝起きて妊娠されてたら困る。」三蔵が呟き、

「ヒッデー!俺ってそんなに信用無いわけ!?
悟空の隣なんて、寝相が悪くて寝れたもんじゃねーよ?」
悟浄の言い分を笑い飛ばしたのであるが・・・。

「これじゃー悟浄君の隣の方がマシかも。」
隣で幸せそうな悟空の寝顔が恨めしい・・と、思っていたら、

「・・・~にく・・・まん・・。」寝言まで食い物かいっ!
思わずツッコミを入れたくなるのを我慢する。

「キャッ?」【ゴンッ】
悟空が派手に寝返りを打ち、危うく下敷きになりかけて壁に頭をぶつける。

ダメだ・・耐えきれない。
そっと桃花が立ち上がる。悟空を起こさないように。
『三蔵と悟空ちゃんの間じゃ、結局変わんないよね。
となると・・悟浄君と三蔵の間か・・。』

うーん・・と考え込むが、このままでは眠れないのは明らかだ。
悟浄も三蔵も寝入っているようだから構わないだろうと心に決め、
薄暗い中、枕を抱えて移動する。

悟空の体を踏みつけないように、そっと越え、三蔵の足下から移動しようとした時

「てめぇ、夜這いか?」

「!!?」
思いもかけない声に、桃花はバランスを崩して布団の上に転がった。


「さっ・・三蔵、起きてたのっ?」
桃花は慌てて布団から起き上がる。

「起きてたかじゃねぇよ。ドタバタドタバタと・・。」
三蔵は行燈を背にしている為、表情は影になっていて見づらいが
声の調子から言って、不機嫌極まりない顔だろうと桃花は思った。

「あー・・起こしちゃってゴメン。悟空ちゃんの寝相が余りにも
凄くて眠れないから・・。」

「で、悟浄に夜這いか?」意地悪そうな三蔵の言葉に、

「ちっ違うって!夜這いなんてする訳無いでしょっ!!」
薄暗い中でも判るぐらい赤面する桃花の顔を見て、三蔵は心の中で苦笑する。

『いちいち本気にしてどうするんだ?面白いヤツだな・・・。』


「ナニ~。桃花チャンってば、俺に夜這いしに来てくれたワケ?」
桃花の背後からニュッと腕を伸ばして抱き締める。

「ごごごご悟浄君!?起きて・・・。」
ジタバタしても悟浄の腕は振り解けない。
「ん~起きちゃった♪もちろん、下半身もっ・・・【ガンッ】

「痛っっってぇ~!」悟浄が鼻を押さえて倒れる。
桃花が頭突きを喰らわせたのだ。三蔵はその光景を笑いを堪えながら見ている。

「・・・桃花~・・この俺サマのスバラシイ鼻の形が変わったら、
どうしてくれるっつーの?・・・女にも妖怪にも強いこの俺がさぁ~・・」

「ああっ!!そっっかああ!!」桃花の大声に、三蔵と悟浄が引っくり返る。

「てめっ・・・。」三蔵がハリセンを握り締める。

「いーこと、思い付いたっ!あたし鈴麗サンの所に行ってくる!!」

シャツ姿のまま、部屋を飛び出す桃花。

「“いーこと”ってナニ?」不安げな悟浄。

「“ろくでもない”の間違いなんじゃねぇか?」不機嫌な三蔵。

「~~~・・しゅう・・まい・・。」一人平和な悟空。


マダ夜は長い―――――。


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