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黒 歴 史
第6章 Lancer's Night.
第35話「謎」
翌日、午前4時頃。
薄暗い静岡峠は異様なほど静かだった。
聞こえるのは風に揺れる草木の音だけ。
この重い空気は何かが起こる前兆を物語っているのだろうか。
その時、異様な静かさを破るように機械の音が聞こえてきた。車の音だろうか。
甲高いスキール音と連続する爆発音も聞こえる。
空気そのものを震わすように闇の中に現れたヘッドライト。
黄色いランエボV、ザ・ナイトメアだ。
大地を揺るがさんばかりの爆音を撒き散らしながら闇を抜けていく。
しかし、先程の異様なまでの空気の原因はそれだけでは無かったらしい。
その後ろにもう一台の車が接近してきたのだ。
ナイトメアにも匹敵するほどの、尋常ではないオーラを放つ車が。
???「1台速いのが煽ってきやがる…いい度胸してるじゃねぇか。ここの下りでこの俺を煽ってくるとはな…」
低速シケインを抜け、橋のコーナーへ近づく2台。
???「いいだろう。貴様に見せてやる。真の悪夢をな…」
ナイトメアが荷重移動から四輪ドリフトで橋のコーナーを抜けていく。
素早く右へ切り返してシフトダウン、ここから低速セクションだ。
ここでナイトメアは後ろからドリフトしてくる車を窓越しに見た。
それはシルバーのエボVIII。C-WESTのフルエアロを装備し、四輪ドリフトしているエボVのサイドギリギリに接近している。
???「シルバーのエボ…?こんな奴居たか?」
次々と迫ってくる低速ターンをターンしていくナイトメア。
いくつかコーナーを抜けたところで、バックミラーを確認する。
???「馬鹿な…この俺とエボに食いついてきてるだと!?冗談じゃねぇ!」
エボVIIIはピッタリと食らいついている。
???「同じエボなら…俺の方が上なんだよ!」
エボVはエボVIIIを振り切るかのように加速する。
やがて2台は低速セクション終盤に差し掛かった。
右ヘアピンに飛び込むエボV。そのイン側にエボVIIIが飛び込んでくる!
???「ッ!」
2台が並んだままコーナーに飛び込むが、立ち上がりで先に加速したのはインのエボVIII。
2連続ヘアピンでエボVIIIは完全に前に出てストレートへ持ち込む。
???「俺の前を堂々と好きなように走りやがって…制裁を与えてやるか」
ジャンピングスポットを超えた後の右ヘアピン。
ドリフトするエボVIIIのリアフェンダーをプッシュするナイトメア!
しかし、多少アウトに膨らんだもののエボVIIIは立て直してヘアピンをクリアした!
???「何…!?」
直角コーナーを2つクリアしていく2台。コーナーでエボVが少し離された。
???「向こうも同じ四駆のエボだ…同じスピードで曲がれない訳がねぇ…奴と同じスピードで突っ込めば済む話だろうが!」
右ヘアピン。エボVIIIのブレーキランプが光る!
エボVもそれとほぼ同じポイントでブレーキング。
エボVIIIはそのままドリフトへ。ナイトメアのエボVもリアが流れる…が!
突然エボVが暴れだし、一気にアウトに膨らむ!
???「チッ―!」
そのままエボVはスピンし、制御不能になる!
リアバンパーを軽くガードレールに擦り、ランエボは停まった。
謎のドライバーが操る銀のエボVIIIはバックタービン音を響かせながら消えていった…
秘密裏に行われたこのバトル、このナイトメアの敗北を知るのは彼自身と銀のエボVIIIのみであった。
第36話へ続く。
第36話「Lancer」
2日後の晩。
静岡峠頂上に直人、優幸、川奈、風間が来ていた。
この日は風間が直人達の車の助手席に座り、その走りを確認していた。
4人は一旦頂上に戻り、車を降りる。
風間「いい感じだ。3人ともVICTORYに入った時より確実に進歩している」
優幸「ありがとうございます」
風間「もちろん、他のメンバーも上達しているがな。この分だと、ナイトメアと勝負するのも近いぞ」
川奈「何時頃になるんですか?」
風間「今9月の初めだ。本格的に冷える前、10月の初めから半ばぐらいには勝負したいと俺は考えている」
直人「結構近いですね…それで誰が走るんですか?」
風間「まだはっきりとは決めてないが、皆心構えは出来てる。それに、ナイトメアが最終目的では無いからな」
直人「となると…ナイトメアとの勝負が終わったらその後は何をするんですか?」
風間「他の峠への遠征を考えている。近いところから遠征するつもりだ。中部や南関東辺りから行こうという計画だ」
優幸「遠征ですか…」
風間「まぁ、自分達のホームコースで最速にならなきゃ遠征する意味も無い。ナイトメアを倒すことが先決だ。そこまで時間がある訳でもないし、確実にウデを磨かないとな」
すると、麓の方からエキゾースト音が聞こえてきた。
川奈「何か来る…」
直人「4Gっぽいな…ランエボか?」
音を聞く限り、1台だけではないらしい。更に二次エア供給システムの音やバックタービンの音まで聞こえてきた。
やがて彼等の前にそれは現れた。
1台はTRUTHのエアロを装備した赤いエボIII。もう1台はC-WESTエアロのシルバーのエボVIIIだった。
優幸「やたら速そうだな…あの2台」
直人「ああ」
風間(あのエボIII…間違いない、奴だ。とするとあの銀のエボは…)
2台のランエボからドライバーが降りてくる。
赤いエボIIIから降りてきたのは青木 空。
シルバーのエボVIIIから降りてきた男は手にグローブをはめて風間達を見ている。
川奈(あの赤いエボIIIの人…まさか青木先輩?)
空「空山さん、間違いなくこの4人がVICTORYだと思います」
???「なるほど。確かに凄いオーラを感じるな」
するとその男と空は風間の方に歩いてきた。
???「アンタ達、もしかしてVICTORYか?」
風間「そうだが」
???「俺は空山 伸次。アンタの事は弟子の空から聞いている」
風間「なるほどな。俺はVICTORYのリーダーの風間 迅だ。宜しく」
空山「さて、いきなりで悪いが要求がある」
風間「要求?」
空山の要求とは一体何なのか?
第37話へ続く。
第37話「走り」
空山「大村 直人という奴とバトルをさせてもらいたい」
直人「!?」
彼は驚きつつも、空山の方に歩いていった。
空山「お前が大村 直人か」
直人「はい。そうです」
空山「バトルというよりは走りを見せてもらう。前にナイトメアとバトルしたそうだからな。どうだ?」
直人「良いですよ」
空山「それじゃあルールだが、コースは下りで、お前は好きなタイミングで出ていい。俺は後ろから走りを見せてもらう。ある程度見せてもらった後で、隙があるようなら遠慮なく行かせてもらう。それで良いな?」
直人「はい。分かりました」
空山「早速始めよう」
彼は愛車のエボVIIIの方へ歩いていった。
直人は彼の後姿から感じていた。物凄いオーラを…
直人(よし…やるっきゃない!)
S15に乗り込み、スタートラインに止まった。
その横に空山のランエボが止まる。
空山がウインドー越しに直人に「行け」と合図を出す。
それを見た直人は深く息を吸い、落ち着いて走り出した。
その後ろから空山のエボVIIIも飛び出していった。
空(始まったか…)
優幸「どうなるんですかね…風間さん」
風間「さぁな。とにかく、相手が尋常じゃないほどのテクの持ち主ってのはよく分かった。直人がそれにどう立ち向かうのか…」
その時川奈は不意に空の隣に行くと、彼に話しかけた。
川奈「あの…」
空「何だ?」
川奈「あなたって青木先輩…ですよね?」
空「ああ…どっかで見た顔だと思ったら2年の川奈か」
川奈「よくここで走ってるんですか?」
空「まぁな。で、そっちのチームのS15、どうなんだ?」
川奈「速いですよ。私もバトルして負けちゃいましたし」
空「成る程な。まぁ空山さんも遅い人じゃねぇから。お前の想像以上に凄いと思うぜ」
その頃、2台は最初のヘアピンを2つクリアし、低速シケインに入ったところだ。
直人「凄いプレッシャーを感じる…この感じ、ナイトメアにそっくりだ…!」
空山「噂どおり、上手いな。切り返しが素早い」
2台はシケインを立ち上がり、橋のコーナーへ入っていった。
第38話へ続く。
第38話「欠点」
S15、エボVIIIの2台は橋のコーナーをクリアし、低速セクションへ飛び込んでいく。
空山「ここから先はドライバーのウデがハッキリ現れる区間だ。さあ見せてくれ、お前の秘めた実力を!」
次々と迫る低速ターンを素早いステア操作でクリアしていく直人。
バックミラーをちらりと見ると、まだエボVIIIのヘッドライトが真後ろで光っている。
直人「やっぱり振り切れない…だったら抜かせないように行くしかねぇ!」
インギリギリを詰めて曲がり、コース幅一杯に使いスピードを乗せて立ち上がっていく。
空山「いいラインだ。やはり並の走り屋ではない」
2台はやがて低速セクション終盤の2連続ヘアピンに差し掛かる。
ここで直人はインカット。土煙を巻き上げながら立ち上がる。
空山「これだけプッシュしてもほとんど姿勢を崩さない…凄い精神力だぜ」
右ヘアピンをクリアし、ストレート。
ジャンピングスポットの着地で若干姿勢が乱れる直人のS15。
何とか立て直して右コーナーへ持ち込む。
直人「押されてるからって焦ったらそこで負けだ!とにかく隙を見せないように走る…それしかない」
左コーナーを2つ抜け、ストレート。空山はピッタリ食いついてくる。
ストレートエンドのブレーキングで一気に荷重を前に持って行き、2台ともドリフトで右ヘアピンに持ち込む。
空山「向こうのタイヤ…タレてきたらしいな。動きが少しずつ危なくなってきた」
その先の左ヘアピンもクリア。2台の前に待ち構えるのは高速切り返し区間。
アクセルオフから向きを変えてスライドしながら飛び込むS15。
切り返して2つ目に入る。
空山「ようやく見えたぜ、お前の決定的な弱点。悪いが遠慮なく行かせて貰う」
3つ目の右コーナーでインに入り込む空山。
直人「!」
次の4つ目の左コーナーでランエボがアウトからスピードを乗せて並びかけてくる!
そして5つ目の右コーナー。インとアウトが入れ替わり、2台が完全に並ぶ。
その先には左ヘアピン。アウトが空山、インが直人。
直人「ここで行かせるわけには…!」
しかし、ブレーキング競争で空山が一歩前に出て、アウトから直人を抑え込む!
ヘアピンを立ち上がって前に出たのは空山のランエボ。
パワーの差で完全に前に出る。
空山「惜しかったが、お前の弱点を突かせてもらった。このまま逃げ切る」
直人「クソ…追いつけないのか…!」
高速セクションに入り、直人の視界から少しずつ遠ざかっていくシルバーのランエボ。
再びそのリアに張り付くことは出来なかった…
第39話へ続く。
第39話「勝負の予感」
静岡峠麓。勝負を終えた空山と直人はPAに入ってきた。
すると頂上から風間、優幸、川奈、空が下りてきた。
空山「流石にいい走りだった。俺が見た限り、お前の欠点はただ一つ、連続する高速切り返し区間だ」
直人「何が悪かったんでしょうか…」
空山「簡単に言えば、無駄が多いって事だ。例えば、最初のコーナーに突っ込む。そして切り返すが、それがワンテンポ遅れてラインが崩れている。そこでインを狙われてしまうんだ」
直人「そういう事だったんですか…良く分かりましたよ」
空山「あの区間さえしっかり出来れば、恐らくナイトメアにも勝てるだろう。お前の技術はそれほど凄いものだ」
直人「そんな…俺がナイトメアに?」
空山「そうだ。やるとすればとにかく自信を持て。もしアイツに勝てたら、またいつか勝負しよう。すぐでなくたっていい。こっちはいつでもいいから」
直人「はい…!」
空山「さて、それじゃ俺達は行く。機会があればまた会おう。行くぞ、空」
空「はい」
2人はそれぞれの車に乗り込み、走り去って行った。
風間達も解散し、それぞれの家に帰っていったが、直人はまだ峠に残ってしばらく走っていた。
直人(空山さんに指摘された事…今すぐ直さねーと!)
2週間後。大分弱点も改善でき、タイムも短縮した頃。
直人は峠を登っていった。
そして頂上に着いた時、思わずあっと声を上げる。
何故なら頂上のPAには黄色いエボV、ザ・ナイトメアが居たからである。
そのエボの前には黒いジャンパーを着て、黒いキャップを被ったサングラスの男が立ってこちらを見ている。
直人が車から降りると、その男は直人の方に歩いてきた。
???「おい、大村 直人ってのはお前か?」
直人「はい、そうです」
???「俺は武藤 零次だ。ザ・ナイトメアって呼ばれてるがな…」
直人「チームVICTORYの大村 直人です」
武藤「そういえばお前、少し前にS13で俺と勝負してクラッシュしたな…あれでお前は終わりだと俺はそう思っていたが、S15に乗り換えて暴れまわってるって噂を聞いた。なかなかのウデらしいし、そうと聞いちゃあ、静岡最速のこの俺も黙っているわけにはいかないんでね…」
直人はS13でクラッシュしたあの日のことを思い出し、心を傷めた。
武藤「とりあえず、俺がお前に言いたいのはただ一つ、俺とバトルをしろ」
直人「俺がですか?」
武藤「そうだ。俺の支配地で好きなように暴れられちゃ気分悪いからな。蹴落としてやるぜ。来週土曜の夜10時にここに来い。逃げやがったらどうなるか分かっているだろうな」
直人「分かりました。必ず行きます」
武藤「よし、それでいい…お前がここを走り回れるのも後僅か、それまでにせいぜい楽しんどけよ…俺とこのエボの恐ろしさ、お前に見せてやる」
彼はエボVに乗り込むと派手にPAを出て行き、乾いたエキゾースト音を響かせながら消えていった。
武藤自身から挑まれたバトル、避けては通れないバトルを受けることになった直人。
興奮と同時に不安がこみ上げてくるが、自信を持って挑まなければならない。
第40話へ続く。
第40話「決戦へ」
その後、風間宅。
部屋に置かれていた風間の携帯電話が鳴った。
風間「直人からか…」
彼は電話に出た。
直人『もしもし?風間さんですか?』
風間「そうだが、どうした直人」
直人『さっき1人で静岡峠に行ったんですが…そこでナイトメアと会って話しかけられたんです』
風間「何!そうか…それで?」
直人『名前は武藤 零次で…来週土曜の夜10時にまた来いって…バトル申し込まれました』
風間「分かった。他のメンバーに伝えておく」
直人『はい、お願いします』
風間は電話を切った。
それから1週間後の土曜日。遂に決戦の日が来た。
夜9時30分、ORSの前に優幸と川奈が来た。
川奈「いよいよね、直人」
直人「ああ…」
優幸「頼んだぞ…勝ってくれよ!」
直人「まぁ…正直勝てるかどうか分かんねーけどな。勝てないにしても全力でいくつもりだ」
川奈「それにしてもさ…さっきからそれっぽい車が峠登ってくよね。この勝負ってあたし等以外は知らないと思うんだけど」
優幸「あ…アイツに言っちまったのが悪かったかな…」
直人「アイツ?」
優幸「俺このバトルの事、太田と隠岐に教えちまってさ…」
川奈「ぁー…太田は口軽いからね。下手すりゃネットとかで流したとか」
直人「なるほど。別に俺はギャラリー出てもそんなに困んねーけどな」
するとそこに風間、下野、戌鷲、北山が到着した。
直人「こんばんは」
風間「ああ。これで全員揃ったな…まだ9時35分だが、早めに向こうに行ったほうがいいだろう」
下野「そうだな。それにしても今晩はギャラリーが多いぜ…」
北山「何せ静岡最速を決める勝負だからな。頼むぜ直人」
直人「はい、精一杯頑張りますよ」
風間「よし、それじゃあ行くか」
一同は車に乗り込み、頂上に向かった。
第41話へ続く。
第41話「Battle Start…」
静岡峠頂上。VICTORYの7人がPAに入ってきた。
ギャラリーA「おい、あれ…」
ギャラリーB「来たぞ!VICTORYだ!」
風間達は車から降りた。
北山「まだナイトメアは来てないのかな」
彼は辺りを見回しながら言った。
風間「みたいだな。まだ10時まで時間はあるし」
そう言って彼は腕時計を見た。
一方、こちらは低速セクション終盤の2連続ヘアピン。
桜田「どうなると思う?このバトル」
赤城「さぁな…だが単純に結果が出るようなバトルでは無いことは確かだろう。VICTORYもナイトメアも、地元じゃ一流ドライバーだからな」
桜田「とにかく、結果がどうあれ見て損はしないはずだ」
そこから更に下ったところにある、ジャンピングスポットを超えた先のヘアピン。
アキラ「もうすぐ始まるわね…静岡最速が決まるバトルが」
松原「ああ。静岡峠の走り屋の1人として、今回のバトルは絶対に見逃せないな」
アキラ「凄い勝負になるのは間違いないよね」
松原「そうだな。とにかく俺はVICTORYを信じている…勝ってくれ!」
直人が空山に抜かれた、高速切り返し区間。
空「それで…例のS15、ここで空山さんに抜かれたんですか?」
空山「そうだ。俺が見た限り、アイツの唯一の弱点と言っていいだろう。だが今日のバトルで、アイツは間違いなくこれを克服しているはずだ。しっかり見ておけよ」
空「はい」
コース終盤、トンネル後のコーナー。
太田「こりゃー、静岡峠の歴史上最も凄いバトルになるんじゃねーのか?」
隠岐「相変わらず大袈裟だな、お前も。まぁいずれにしろ、結果は直感で分かってるんだろ?あえて聞かないけどよ」
太田「そう言うお前も結果は予想できてるんじゃねぇのか?」
隠岐「さぁな」
静岡峠頂上。時刻は9時58分。
もう何時来てもおかしくない。その時だった。
麓の方から不意に乾いたエキゾースト音、二次エア供給システムの爆発音、甲高いスキール音が響いてきた。
途端に辺りが静まり返った。集まったギャラリー達が息をのむのが聞こえる。
やがて暗闇の中から、黄色いエボVが現われた。
その堂々たる姿を、ギャラリー達に見せ付けんとばかりに爆音を撒き散らしながらPAに入ってきた。
VICTORYの前に黄色いランエボは止まり、中からドライバーの武藤が降りてきた。
彼は直人を見ると言った。
武藤「よく来たな…まぁ逃げるような腰抜けじゃねぇ事は分かってたさ。お前を一目見たときからな…」
周りの者はその光景をじっと見ている。
武藤「お前は確かに進化しているかもしれないが…それは俺も同じだ。手加減するつもりは全く無い…お前に見せてやる、真の悪夢をな」
冷たい、張り詰めた空気が彼等を覆う。
武藤が直人の前に歩いてきた。
武藤「改めて自己紹介する。武藤 零次だ」
直人「大村 直人です。お願いします…」
そして武藤がちらりと腕時計を見た。時刻は丁度10時だ。
武藤「さて、丁度時間だ。早速始めるぞ。バトルは同時スタートで下り一本、先に麓に着いた方が勝ち…それでいいな?」
直人「はい」
武藤「カウントはそっちから適当に1人出しな」
直人と武藤はそれぞれの車に乗り、エンジンをかける。
エボVとS15、2台がスタートラインに並び、風間が中央に立つ。
風間「カウント行くぞ…5秒前!」
冷たい風が吹く。
風間「4!」
道路際の木の葉が風に揺れ、地面に落ちる。
風間「3!」
2台のエンジン音が重なる。
風間「2!」
タコメーターの針がレッドゾーン手前を指す。
風間「1!」
ステアリングを握り締め、前を見つめる。
風間「GO!」
2台が麓めがけてスタート地点を飛び出す!
静岡最速を決める勝負の火蓋は、今切って落とされた―!
第42話へ続く。
第42話「Extreme Battle」
スタートし、前に出たのは武藤のエボV。
だが直人もそれに食らい付き、1コーナーへ飛び込む。
四輪ドリフトを繰り出す武藤に対し、グリップで追う直人。
次のヘアピンは2台ともドリフトで突っ込む。
シケインをクリアし、橋のコーナーをドリフトしていくランエボ。それを追うS15はインベタのグリップ。
そして2台が低速セクションへ。ブレーキランプが同時に光り、2台が横を向く。
武藤「少しぐらいは楽しませろよ…わざわざ出てきてやってんだからな」
目の前で激しく鳴り響く爆発音。
だが直人はそれにも動じず、確実にベストラインに車を乗せてコーナーをクリアしていく。
直人「車が横を向いたら早めにカウンターステアは戻して鋭く立ち上がる…4つのタイヤ全てを使ってコントロールしねーとな…」
次々と迫ってくるヘアピンをハイスピードな四輪ドリフトでクリアしていく2台。
ギャラリーA「すげぇな…2台とも考えられないようなスピードで曲がってくぜ!」
ギャラリーB「やっぱりそれだけすげードライバーなんだよな…俺達には真似できねぇもんな」
いくつかヘアピンを抜けたところでバックミラーを見た武藤。
武藤「しっかり付いて来ているじゃねぇか。思った以上にやるようだが…所詮腰抜けに過ぎねぇ。俺の敵じゃねぇな」
直人のS15は前を走る武藤にピッタリ食らい付いたまま、ヘアピンをクリアしていく。
やがて低速セクション終盤に近づく。
2連続ヘアピンでギャラリーをしていた桜田と赤城。
桜田「そこまで来てる…どっちがアタマだ!?」
目の前の高速コーナーを立ち上がってきた2台。
先頭は武藤だが、直人もそのすぐ後方につけて立ち上がり、エボVのインサイドにフロントをねじ込む!
武藤「生意気な…行かせるかってんだよ!」
赤城「S15、まさか仕掛ける気か!?」
アウト側のエボVのテールランプが光り、そのすぐ後にS15のテールランプも赤い光を後ろへ飛ばす。
そしてブレーキランプが消え、2台のリアが流れ出す。
直人「ここで向こうより更にインを取る!」
イン側の草地にフロントタイヤを乗せてドリフトする直人。
武藤「ッ…」
直人はドリフト状態からリアタイヤのグリップ回復を待つ。
直人「今だっ!」
彼はそこでアクセルを踏み込んで、インをカットしつつ立ち上がる!
武藤「クソッ!」
立ち上がったところで直人が車体半分ほど前に出た!
桜田「オイオイ…なんて抜き方だ…」
赤城「俺があの状況でも、あんなすげぇやり方思いつかねぇ…流石としか言いようがないぜ、あのS15」
2台の前には右ヘアピン。今度は直人がアウトで武藤がイン。
直人「俺が半分前に出ている…ブレーキングで外からインに切り込んでラインを塞げば…!」
武藤「このまま逃がすと思うな…俺はお前に再び悪夢を見せるためにバトルしてるんだよ!」
S15のブレーキランプが光ったその瞬間、武藤はインから直人のリアフェンダーをプッシュ!
直人「!?」
突然、リアを押されてバランスを崩すS15。
飛び出したリアが、アウト側のガードレールめがけて流れ出す!
このまま彼はクラッシュしてしまうのか―!?
第43話へ続く。
第43話「Last chance」
フェンダーをプッシュされてバランスを崩し、アウトに膨らんだ直人のS15。
何とかステアリング操作とペダルワークで必死に立て直すが、リアをガードレールに擦る。
その隙に武藤がインを抜けて前に出た。
武藤「誰一人、この俺の前を走らせはしないぜ…お前に勝ちは無い」
直人「クソ…俺を事故らせる気か!許さねぇ…そんな走りは認めねぇ!」
ブチ切れた直人はアクセルを床まで踏みつけ、あざ笑うかのように前を走るランエボに食らいつく。
ジャンピングスポットを超え、右コーナーに迫る!
アキラ「来た!2台とも差は無いみたい…」
松原「アタマはランエボか…」
2人の前をスピードの乗った状態から、アグレッシブな四輪ドリフトで突き抜けていく2台。
松原「凄いドリフトだ…ラリードライバーの俺から見ても、あれは並の走り屋レベルじゃない」
アキラ「頑張って…VICTORY!」
その後のコーナーを抜けストレート。武藤のバックミラーにはS15のヘッドライトが輝いていた。
武藤「チッ…生意気だ…とっとと諦めて失せな!」
右ヘアピンでインカットしていく直人。
その先の連続切り返し区間。
空「来ますよ…空山さん!」
空山「ああ」
そして2人の前に黄色いエボVとシルバーのS15が現れた!
直人のS15は武藤を威嚇するように、ピッタリ食らいついて切り返していく。
空山「前より格段に上手くなっているな。直人は」
空「それでも…もうゴールも近いですし、相手に先行されてるとなると厳しいのでは…」
空山「かもしれないがな。とにかくまだ何が起こるか分からない。この勝負がどういう形で終わろうと、俺は満足だ」
やがて直人と武藤は高速セクションへ。
武藤「後ろでウロウロしやがって…邪魔くせぇ!いい加減にしやがれ!」
ピッタリ食いつく直人に腹を立てる武藤。
直人「向こうが動きを乱してきた…チャンスだ…」
そしてトンネル前のコーナー。立ち上がり重視のラインで一気に加速する直人。
直人「決めてやる…この手で勝ちを掴む!」
焦りを見せるランエボの左側にS15が並ぶ!
武藤「チッ…!」
トンネル後のコーナー。
太田「来た来た…どっちだアタマは?」
トンネルから飛び出し、目の前に現れたのは並んで突っ込んでくるS15とランエボ!
隠岐「並んできた…か。直人がアウトでランエボがイン…」
太田「よし行け!ブチ抜け直人!お前に不可能は無い!!」
2台のブレーキランプが真っ赤な光を放ち、コーナーへ飛び込んでいく!
武藤のランエボよりもタイヤに余力を残した直人のS15は、ブレーキングで少し前に出る。
そして武藤よりも早いポイントでブレーキペダルをリリースし、コーナーに飛び込む。
アウトラインをドリフトで通し、加速で車体半分ほど前に出た直人。
武藤「チッ!これで勝ったと思うな…最後で決めてやる!」
緩やかなS字を並んだまま抜け、最後の左コーナーへ。直人がイン、武藤はアウトだ。
直人「行ける…確信はある!今の俺とS15は誰にも負けねぇ!」
S15のブレーキランプが光る。だが、武藤は明らかに無謀とも取れるほどのレイトブレーキでアウトから並びかける!
しかし、やはり無理があった。S15はインサイドに綺麗に入っていったが、エボVはアンダーステアを出してフロントから膨らみだす。
武藤「ぐっ…曲がれ!!」
激しく消耗したフロントタイヤは言う事を聞かずに流れ、右フロントからコンクリート壁に激突した!
バンパーが変形し、ヘッドライトが砕け散り、フェンダーも歪む。
そのままスピンして停止。その瞬間、直人の勝利が確定した。
ギャラリー「ナイトメアが…クラッシュした!!」
直人はすぐ先で停止し、クラッシュしたランエボに駆け寄った。
直人「大丈夫ですか!?」
武藤は無事だった。が、彼はステアリングを握ったまま震えている。自分がクラッシュしたという事実からショックを受けたのだろう。
暫くすると、彼は何とか落ち着いたらしい。車を降りて直人に言った。
武藤「俺の負けだ…とにかくゴールに行こう。ここじゃ邪魔になっちまう」
バトル前までの感情剥き出しの彼とは、まるで別人のように静かに言った。
第44話へ続く。
第44話「The end…」
頂上。
ギャラリーC「おい!ナイトメアがクラッシュしたらしいぞ!」
ギャラリーD「マジかよ!?って事は…VICTORYの勝ちなのか?」
ギャラリーC「そうだろうな…まさかあのランエボがクラッシュするなんてよ…」
それを聞いていたVICTORY。
優幸「直人…勝ったのか!」
川奈「そうみたいね。凄いわ直人は…」
風間「この勝ちは大きいな。とにかく下へ行こう」
VICTORYのメンバーは麓へ向かった。
麓。
頂上からVICTORYのメンバーが下りてきた。
武藤「やられたぜ…こんなに速い奴がいたなんてな。お前に会えて良かった…おかげで目も覚めたしな」
直人「ありがとうございます」
武藤「悪かったな。つい感情的になって、お前を潰すことしか考えていなかった…速い奴が現れると、いつもそうだった…我を忘れて、自分の地位の為に相手を潰していた」
彼はため息をついて言った。
武藤「だが、自分がクラッシュして初めて分かった。自分がどれほど馬鹿だったのか…こんなのでよかったのか、と…」
武藤「それにしても、お前はマジで速いな。何というか、少し前に会ったシルバーのランエボを思い出すぜ…」
直人「シルバーのランエボって…まさか、C-WESTエアロを組んだCT9Aじゃないですか?」
武藤「知っているのか…恐らくソイツだ。お前とやる少し前にそいつに煽られて負けたよ」
直人「俺もその人とは勝負しましたが…やはり負けました」
武藤「さすがに、お前も負けたか…そいつについて、他に何か知らないか?」
直人「…ドライバーの名前は…“空山 伸次”だったと思います」
武藤「空山…!?…やはり…幻なんかじゃなかったのか…」
直人「幻…?」
武藤「実は俺が最速になってすぐに、ある噂を聞いた。空山 伸次とかいうとんでもなく速いのが現れたと。だが、俺は信じなかった。そんなのは走り屋達が生み出した妄想に過ぎないと、そう考えていたんだ」
武藤「だが、俺はあのランエボと勝負し…負け…そして思った。もしかしたらコイツは伝説の走り屋、俺が単なる幻でしかないと思っていた空山 伸次じゃないのかと…」
直人「そうなんですか…」
武藤「近いうちに、アイツにリベンジしたいと思っている。お前も同じだろ?」
直人「ええ…あの人とはまた会いたいと思っていますよ」
武藤「やはり、走り屋が考えることは同じか…」
直人「ぇ…?」
武藤「皆速い奴とバトルをしたがる。それは何故かというと自分の為だと俺は考えている。確かに、勝てば勝つほど知名度は上がる。だが、注目を集めることより重要なのが、自分の腕を証明することだ。それも自分にな。結果的にバトルってのは自分の為にする物なんだ。俺がここまで上がったのも自分の為、お前があのランエボの男に勝ちたいというのもおまえ自身の為…違うか?」
直人「そうですね…」
武藤「今日はお前から色々学んだ。また近いうちに会おう」
直人「俺も同じです。そして今度は…違う形で競争することになるかも知れませんね。あなたとは」
武藤「競争?」
直人「どっちが先に、あのランエボに勝てるか…そういう事です」
武藤「なるほどな。そう言う事なら受けて立つぜ…」
彼は一旦後ろを振り返り、再び直人の方を見て言った。
武藤「さて、俺はそろそろ行く。会えたらその時は宜しくな」
彼はランエボに乗り込み、走り去っていった。
乾いたエキゾースト音は街の闇の中へ溶けていった…
こうして1つの伝説が静岡峠に刻まれた。
しかしそれはまだ、長い道のりの序章に過ぎない。
これから長く険しい道が続くだろう。
そう、まさに峠のようにうねる道が。
だが、その先には必ず何かが待っている。
乗り越えれば、夢が叶えられる。
だからこそ戦うのだ。それぞれの頂点に辿り着くために…
これから待ち受ける何かに向かって、立ち向かわなければならない。
さあ、これから仲間達と共に新しい世界へと旅立っていこう。
第一部「序章」 完
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